大晦日 年も押し迫って
慌しく年越しの支度をする私の後ろで
父が地元の言葉で 妹に電話をかける
おぉ お前か
年越し蕎麦は何時頃に食いに来るとや
あぁ そうや 今日は帰らんとか
チビもそっちに泊まりか
おぉ わかった
そっちのお義母さんにもよろしゅう言うといて
電話を切って小さなため息ひとつ
首をすくませて小さく振りながら
眉を少し上げて
やれやれ しょうがないな
そんな表情を作る
嫁ぎ先の年末年始の集まりにいってしまった
自分の娘と
年末の締めに会えなかった
小さな孫の顔に残念がる
好々爺(こうこうや)の顔
昔はこの人を好きになれなくて
反発してたっけ
この人の娘に生まれたことが
憎らしくて辛くて泣いた日もあった
家にも寄り付かず
家族なんてなくても生きていける
そう思った頃もあった
けれど何度と歳を重ねて
流れた時間が
少しづつ固くもつれた紐の瘤を
すこしずつほぐして
いろんな命が去り
そして生まれながら
赦しという櫛で梳いて整えてゆく
時の流れは時に険しいけれど
やさしく麗かな日もある
角の削れた心を
緩やかな流れが揃えて整えながら
波風はあっても
落ち着くところへ落ち着いて
それぞれが
ならではの個性の
家族の形になってゆく
妹もまた
新しい家庭を
新しい形で作っていくのだろう
毎日を大切に
ひとつずつ重ねながら
やがて数時間後には年が明け
年始の挨拶にはたくさんの顔が来る
見慣れた懐かしい顔
はじめて見る新しい顔
同じように
さまざまな経路を通って
歳を重ねた家族たち
いわゆる 「親族」
みなそれぞれ時間を経て
新しい時を過ごし
新しい家族や命に
いとおしく目を細めながら
無事を喜び合う年の初め
また新しい
それぞれの年が明ける
2010.新年
ネット詩誌 MY DEAR
新作紹介掲載作品
主催者・島様に感謝