第二話 襲来モニターが幾つも存在する部屋。そこには、1人の科学者が立っていた。『・・・バジュラは、無事全機ターゲットへ。これより制圧を開始します』 「いや、制圧はしなくていい。ちょっと脅かすだけだ」 科学者ジェイル・スカリエッティは、通信してきたリボンズ・アルマークにそう告げた。 『了解致しました。ドクター・スカリエッティ。ではいつも通り、バジュラの性能実験でよろしいでしょうか?』 「ああ、構わない。適当に襲って、適当に引き上げてくれればいい」 『わかりました。それでは後ほど』 通信が切れる。スカリエッティはバジュラのいる町をモニターに映し出した。 「ふふふ・・・頑張ってくれたまえ、僕の玩具たち。そして・・・早乙女アルト。私たちの願いは君に委ねられているのだから。」 第二話 襲来 新暦0071年。時空世界『ミッドチルダ』は、未だかつてない恐怖の色に染まっていた。 町は火で覆われた。幾つもの建物が倒壊する。 「おいアルト!!逃げるぞ!!」 「いや、管理局の人間も統合軍の人間も居ない今、誰かが避難の手助けをしなくちゃいけない」 「でもアルト、お前がやられちまうかもしれないんだぞ!」 「大丈夫だ、そんなヘマはしない。それに、管理局か統合軍が来たら逃げてくる。だから大丈夫だ」 「・・・解った。死ぬなよ!アルト!!」 そういって早乙女アルトのクラスメイト達はその場を後にした。 「・・・行くか」 アルトはバリアジャケットを展開させた。見た目は一昔前の西洋の騎士の様な鎧。 指先から肘下までを覆う篭手。 腰鎧は胴鎧に繋がって腰の両脇。脚鎧は爪先から膝まで。黒い外套が覆い隠している。 背中には愛剣「バスターソード」を携えている。 アルトは『跳んだ』。跳躍距離は約100m。 一気に赤い虫に肉薄する。そしてそのまま剣を抜き、赤い虫目掛けて横に薙ぐ。 「くたばれっ!!!」 虫が綺麗に二つに切られる。次々にアルトは虫を斬る。 ・・・何体倒したかすら解らない。だが、幾つも出てくる。キリが無い。 その時、後ろから何かが来るのが気配でわかった。 「・・・!!」 避けられない。死を覚悟した、刹那。緑色の光が虫を貫いた。 「・・・あれは・・・何だ?」 光が飛んできた方向を見る。そこには、背中から緑色の粒子を放出させ、アーマードを装備する魔導師。 (・・・GNドライヴ?完成して正式採用になったのか?) GNドライヴ。それは、身体の内から生成される『魔力』と『気』の反応融合を起こし、魔導エネルギーを増幅させる装置だ。その時に緑色の粒子が放出される。 アルトはそれを本で見たのを憶えていた。 「貴様!!何やってる!!死にたくなければ下がってろ素人が!!」 男の声。20代位だろうか。男はアルトを怒鳴りつけた。 「何だよ!!こっちだって好きでこんな事やってるんじゃない!!それに、俺は素人じゃない!!武器だって」 「じゃあさっきの襲撃の対応はどうなんだ?」 「ぐっ・・・」 反論出来なかった。確かに、この男が助けてくれない限りアルトは死んでいただろう。 「・・・言い訳はしない。でも、このまま黙って街が壊されるのは見てられない。だから、戦わせてくれ」 アルトは必死だった。このままだと学校が、住むところが、仲間との憩いの場が無くなってしまうのだ。 ―――市街地 GNドライヴとアーマードパックを纏う男、遠坂錬は悩んだ。 確かに、自分の居場所を自分で守れない。 それは辛い。 あの少年の様に実力があるなら尚更。 だが、今の様な状況は死に至る。 偶々錬がいなければ、アルトは死んでいただろう。 ・・・決め難い。 自分の居場所を護る。 その心意気は買う。 だが、今の様な失敗はいずれ死を招く。 迷った末に出した答えは、こうだった。 ◇ 「・・・いいだろう。但し、死なないと約束しろ。絶対、何があってもだ」 「・・・了解」 「俺は遠坂錬。お前は?」 「俺は早乙女アルトだ」 「そうか、行くぞ早乙女アルト!!」 2人は虫の群れに飛び込んだ。 錬の戦い方はこうだ。 GNドライヴで増幅させた魔力を腕に込め、虫を殴り倒す。 デバイス手甲。接近戦が得意なのだろう。 魔法は補助だけで、力の増幅に全てを注いでいる。 アルトは呟いた。 こんな魔法の使い方があるのか、と。 やがて、全ての虫を倒し切った時には、錬の姿は何処にも無かった。 アルトは、真紅から徐々に灰色になる街と、蒼い大空をみていた。 To Be Continued... |