Laub🍃

2016/11/06(日)21:59

くらっくびーだま

.1次メモ(404)

「てめえら、どこから…きたぁ………っあ、」 「じごくの、そこから。」 あたし達は昔、軍に置いてけぼりにされた。 ずむと重い感触。 ふっと気が緩んだ瞬間、目の前に刃。 「あ、」 死んだ? 「油断は禁物ですよ」 もう一つの刃。それは敵の刃を滑らせその勢いで敵の頭に音もなく沈み込んでいく。 「あぅっ、ぁ」 「……!ありがとぉございます」 「いえいえ」 たった今、刀で敵の頭を割った眼帯の優しい隊長は、巳。青い髪が月夜に映える。 「ガハハ!こっちは終わったよー、そっち行こうかー!?」 黒く長い髪を月夜にたなびかせ、踊るように戦っているのは、エースの亥。 「いいえ、お気遣いなく」 紅色の髪を存在感主張する胸に乗せているのは、皆に母のように慕われる酉。気弱な彼女は、その分効率の良い敵の倒し方を知っている。 「がっつくなよ、汚ぇな」 隊長の親戚らしいけど、全然隊長と似てない生意気な未は出刃包丁を二振り振り回す。 「向こうの天気はいい天気かなー?うふふ、あはははは、あたしの彼を殺したのはどいつかなーぁ?」 金髪でない片耳を隠した寅は、 「…………にく…」 灰色の髪でいつも顔を隠している、足の不自由な彼は、丑。 「いま、あげるよぉ」 そして彼を抱え走っているのが、あたしー辰。 「お……ま、え、ら……ただですむとおも……」 目の前のよろよろしたおっさんどもの鎧を割り、丑が食べやすいようにしてあげる。 一直線にまだまだ元気で新鮮なお肉たちのもとへ。目の前以外の死角は皆が守ってくれてるから、大丈夫。 「……にく…たくさん……ある」 「たくさんたべてねぇ」 月夜を飛ぶように駆け、あたしたちは屍肉を喰らう。 世界に殺されたあたしたちは、同じように世界を殺してやろう。 世界に忘れられたあたし達の空洞を埋めるのは、喰らった世界だけだ。 「お前ら、何なんだ……!?どこの兵だよ……っ俺達は、どこにも喧嘩売ってねえよ、何だ、何が目的だ!?」 「あたしたちは、あんたらみんなのてきだよ」 巳隊長は、綺麗な世界を見たことがあるという。 あたし以外はみんな見たことがあるんだって。 あたしだけ、それを知らない。 あたしは生まれた時から何も見られないまま、「実験施設」で育てられていた。 軍が退却する時に瀕死でおいてかれたあたしを拾ってくれたのが、今の仲間だ。 綺麗な世界を一緒に憎もうと言われた。 綺麗な世界とやらは知らないものだったけど、いつか見てみたいものだったけれど、 それでも逃げ損ねた軍の研究員たちの返り血を浴びた、その人たちの方がよほど美しいと思った。 びいだまは壊れかけが一番綺麗。 きっとだから、綺麗な世界を壊しているあたしたちは、世界をもっともっと綺麗にしているんだ。 「せかいって、きれいだねぇ」 「……おまえの、そのえみもきれいだよ。……こわしたくなるくらい」 「あははっ」 では、世界が全て壊れたら、あたしも一緒に壊してもらおうか。

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