Laub🍃

2016/12/07(水)17:31

殺人鬼が逆行して罪を犯す前に戻った話(胸糞注意)

.1次メモ(404)

 俺は数多くの人の命を屠ってきた。  軍に所属しているとか、金がないとか、復讐とか、その他やむにやまれぬ事情ではない。  単純に殺すことが楽しいのだ。  殺人衝動はもはや趣味の域。特に幸せそうな奴、人生これからだろっていう奴を殺すのがとても楽しい。けれど俺は不思議と20年間捕まったことがなかった。悪魔でも俺の味方についていてくれるのかもしれない。  殺す時は常に気を付けていた、夜闇にまぎれるように、そして住んでいる場所を特定されぬように。日中は可もなく不可もなく目立ち過ぎず目立たな過ぎず、少しおとぼけな、どこにでもいる人間として過ごしてきた。 「見付けた」  だが、そんな折。 「……兄さんの、仇……っ」  俺は殺された。  ……やるなぁ。俺、これでも気を付けてきたつもりだったんだけど。目の前の女は30代くらいで、俺の事を地獄までおいかけてきてやるっていう顔をしていた。  嫌だ、まだ死にたくない。もがくも、女はそんな動作さえ嘲笑うようにして俺を滅多刺しにしていった。滅多刺しとはまた芸のない。どうせ死ぬんならもっと俺が殺してきた体たちのように美しく…… 「あんたにはこの末路がお似合い」  意識が薄れていく。最後に何か言ってやろうとしたが、血の泡が口を塞いでうまく発音できない。視界の端で女が自分自身に刃を突き立てるのが見えた。 *  目を覚ますと、そこは見知らぬ小学生の部屋だった。……いや、違う。ここは、11歳の時の俺の部屋だ。俺が、弟と両親を殺す前の。ぺちぺちと叩く音。俺の頬を、いつのまにか部屋に入りベッドに上り込んできていた弟が叩いている。軽く払いのけながら起きる。 「あ~~~うっ」 「うるせえ」  カレンダーを見ると、ちょうど俺が初めて殺人をおかした日。  そう、この日弟があまりにうざったかったので殺したのだ。親にばれたらまずいと思った俺は事故死に見せかけ、そうしてこの日俺は殺人の快感を知ってしまった。 「……お前は、まだ、殺さないよ」  あの女は、若作りしているのでなければ今まだ小学生くらいだろう。もしかすると俺と同じ年くらいかもしれない。  俺が生涯安定した殺人鬼ライフを過ごす為には、今のうちにあいつを殺しておかなければならない。 *  ついに突き止めた。今、俺の目の前にあるのはあの女の家だ。暗くてよく見えなかったが大体の顔立ちと、兄が居ると言う情報、自分の記憶を辿って、13の時に殺した先輩の妹だということが分かった。  探すために多くの時間を使い、結局時間が巻き戻ってから今まで人を殺せていない。  あの女さえ殺せば一気に解禁できるのだから、楽しみは後にとっておくことにするか。そろそろ我慢の限界だ、ああ楽しみだ。  今の時間、ちょうど兄と妹が別々の塾に行くところだ。今は実際に殺した時の1年前だが、生活ライフはほとんど変わっていないようだ。  避けられないよう、スタンガンと光らないよう加工した刃物を取り出す。  狙うは、妹だけ。 「……いってきまーす」  今だ。 「…………今度は、記憶があるみたいね」 「え?」  突き出したスタンガンは腕ごと地面に押さえつけられ、ナイフは蹴り出されて近所の民家の塀の中に落ちた。 「ちょ…」 「……」 「っ……!!!」  痛い。  痛い痛い痛い痛い  逆にスタンガンを押し当てられたのだと理解したのは数秒後。  スタンガンをめぼしい所に全て押し当てられ、身動きがとれなくなってからだった。 「……一応忠告しておくけど、私を殺した瞬間、世界は巻き戻るよ。そういう風に、私は契約したの。私は記憶をずっと持ち越せる。あんたは私に勝てない。私がそうさせない。何度も何度もあんたを追いかけた、やっと捕まえたんだ。今の世界じゃあんたはまだ人を殺してないみたいだけど、いずれ殺す。殺したら、その瞬間お前を苦しみぬかせて殺してやる」  ……巻き戻る?そんな夢物語みたいなこと、あるのか?でも今の現状はそうでないと説明がつかない。そんな契約してくれる奴いるのか?もし俺が先に契約していたら俺は繰り返して何度も捕まらず殺し放題じゃないか、いいなあ…でもこいつが持ってるんじゃなあ…あーこいつ殺して…今度はこいつと出会わないように気をつけなくちゃ……俺も記憶引き継げるならきっと……いや、こいつに殺されるまで少しでも多くの奴を殺した方が楽しく過ごせるか…?そう思っていると、女がとんでもないことを言い出す。 「だから、私は死なない。お前も、出来る限り死なせない。一生お前が人を殺さないように見張っていてやる」 「……え」  俺の地獄の人生二週目が始まった。 ***** 元殺人鬼・刹木塵と復讐者・真樹本凛の奇妙な追いかけっこは、刹木が無事老衰で死ぬまで、ありとあらゆる手段によって続けられる。 続きはwebでにほんブログ村

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