2017/02/20(月)01:39
底(ss)
削られるもの、憎まれるもの、捨てられるもので造られた秘密基地は、僕たちの弱さを赦してくれた。
裏山が開拓されることになったから、秘密基地のかけらを寄せ集めて、人形にした。
皆の提案で、一番部屋の広い僕の部屋にそいつを隠しておいたけれど、暫くして邪魔になった。だから皆で貰い合いになり、じきに押し付け合いになった。
仕事をして帰ってきた時に癒してくれるそれは幸せの象徴でもあったけど、そいつが居ると前に進む足が鈍る事もまた確かだったのだ。
だから僕達はそいつを捨てる事にした。
「夢島、さようなら」
タイムカプセルの気分で、うちの庭に埋め込んだ。
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俺は汚い国で暮らしていた。そこしか居場所がなかった。生きてさえいられればそれでよかった。
社会から切り捨てられた者、恨みを沢山買った者、行き場のない者たちで造られたその国は、新たにやってくる身分も名前も定かでない彼らをも受け入れた。
戦争が始まる事になった時、彼らは指導者として亡命を手伝ってくれた。亡命する為には周囲の目をごまかす手段が必要だとかで、俺含め何人かは彼らの提案ー体の兵器への改造手術を受け入れた。どうにか全員逃がし切って、故郷を守り切った時、俺達はそれぞれの戦地から帰れなくなっていた。たまに体を見せたり弄りまわさせることを条件に、戦地の人々は俺達を見逃してくれたが、いい加減限界だ。帰らせてほしい。
そう思っていたら、好機が来た。故郷に帰れるそうだ。ついでに、亡命していた皆を呼び戻す事も手伝って欲しいとか。
よかった。俺達の犠牲は無駄じゃなかったんだ。
帰路で一緒になったかつての幼馴染と笑い合う。故郷を守り切った俺達の間には共通の夢があった。兵器として使われるまでは何の役にも立てなかった俺達が、今度は平和の為に、汚いけれどどこか安らげる国を再建するんだ。守り切るんだ。
「…ん?到着したみたいだな」
「…あ、ああ……?」
「なあ、おかしくないか」
「ここってーーーーーーーーーーーー」
俺達の夢はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
そのまま、永い眠りについた。