2015/04/28(火)21:49
お歳暮ラッシュ /少プリ家族パロss
※少々オーバーな表現があります
お歳暮ラッシュ
「実家から梨が届いた」
そうサムライが言ったのはお盆の初めの日のことだった。
「うめぇ!!!」
当然真っ先に食べたが、おいしさの余り叫んじまった。
一緒に食べているサムライと言えば、満足そうな顔で
「ああ、うまいな」
としゃくしゃくと食べている。
3箱ある梨は、食べても食べても終わらない。
俺は一足先に天国に来ちまったのか?
けど口の中に広がる爽やかな味は紛れもなく現実のもんで、
一かけらまた一かけらと手を伸ばす。
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「え、梨?いいなー」
「まだあるぞ」
ちょうど帰ってきたレイジ、ヨンイルも同じように梨を食べていく。
食った瞬間の顔が全然顔立ち違うのにそっくりだった。うまいもんの威力は凄い。
どうでもいいがサムライとレイジが切った切り口がやたら綺麗だった。
レイジがストレンジフルーツを歌いだしたので止めた。
甘酸っぱくて瑞々しい梨。
よく冷えてるそれは夏の暑苦しさと相乗効果で俺達を幸せにしてくれる。
幸福感に浸っている所で、ヨンイルが「あ、そや」と思い出したように荷物の所へすっ飛んで行く。
「俺もじっちゃんとこで西瓜貰って来たんや」
「まじかよ!!」
戻ってきたニカッと笑うヨンイルの両手にぶら下げられたそれは間違いなく西瓜だった。
それも大きな大きなやつ。
なんてこった、こんなにいいことが立て続けに起こっていいのか。
その後両方を胸に抱いたヨンイルが「巨乳」とか言ってレイジが爆笑してたが
俺とサムライは見なかったフリをした。
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冷たい梨を食べた後は、同じように冷たいが触感や味がもう少し柔らかい西瓜を食べる。
「うまいなぁ」
「ああ」
自然と無言になる。
一切れまた一切れと手を伸ばす。
しゃくしゃくという音とじんわりとした暑さ、虫のミンミンと遠い声、高い空と隣の体温。
それだけが世界のすべてであるかのような錯覚。
ここにずっと居るのもいい、そう思う。
・・・だが、どんな楽しい時間にも終わりは来る。
「それ位にしておけ。主食が入らなくなるだろう」
「あ、直ちゃんも食べるー?」
「僕は遠慮しておく。これから夕飯だからな」
そう言って仕事から帰ってくるなり晩御飯を作り始める鍵屋崎。
「飯も嫌いじゃねーけど、ずっとおやつってのもいいよなー」
「それでは栄養が偏る」
「そりゃまあ、分かってるけどさー」
レイジが拗ねたように言う。
そんなレイジをいつもは無視するか皮肉る鍵屋崎だが、
なぜか今日はその眼鏡がきらんと光った。
「…今日、宅急便で安田から葡萄が届いた。
よって、これから毎日毎食君達にはデザートという形でこれとそちらの果物を消費してもらう」
「「「!!!」」」
「後で安田に礼の電話を掛ける。一声準備しておけ」
「わー、安田さん太っ腹やなー!」
「おい、まだ開けるんじゃない」
「……鍵屋崎…」
「ロン……一粒だけなら許可する。それ以上は駄目だからな」
「!謝々!!」
明日も明後日も補修だと滅入っていた気持ちが嘘のように晴れていく。
食べ物で気分が上がったり下がったりなんて自分でも単純だと思うが、
この幸福感は何にも代えられねえ。
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今日で5日目だ。
「……ロンロン、これ食ってええで」
「いいのか!?」モッモッ
「…ああ。流石の俺でも…うっぷ」
「ヨンイルもうギブアップか?俺はまだ入・・・えっぷ」
「おめーら無理すんなよ…」モッモッ
「お前こそどこに入っとんのや…」
「ロン…お前それ何個目だ」
「……数えてねえ」モッモッ
「だよな………」
目の前には死屍累々。
あれから
琵琶(保健室の外に生ってるのを老医師に貰った)
マンゴーとバナナ(マリアとマイケルから)
梅酒(梅花が作り過ぎてしまったからとくれた)
パイナップル(補修の帰り道突然現れた道了に渡された)
ドラゴンフルーツ(ワンフーから)
ライチ(鍵屋崎の友人リュウホウから)
無花果(五十嵐から)
サクランボ(斉藤から)
メロン(アルセニーから)
パッションフルーツ(ホセから)
ライチ(ビバリーから)
杏(また安田から)
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どれもそれぞれおいしかったが、小食の鍵屋崎はともかく
良く食べ良く寝るイメージの二人がここまでなるってのは正直意外だった。
「ううう…口ん中がめっちゃ甘い…」
「肉…肉が食いてえ……」
今まだ潰れてねえのはもう一人サムライだが、サムライも少し顔色が青い。
「………」
ピンポーン
突然玄関のベルが鳴った。既視感。
「……また…果物か…?」
どうにか起き上がろうとする鍵屋崎の顔はゾンビみてえだった。
おぼつかない足取りで歩きだそうとするがぺたりと座り込んじまう鍵屋崎を制し、
サムライが玄関に行く。
「……誰だ………
リョウか」
「おっひさー」
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「え、こんなに貰っていいの!?」
回覧板を回しにきたリョウが喜色に富んだ声を上げる。
「ああ。……ロン、悪いが…」
「うーん、まあ、別に構わねーけど…」
贅沢を言っちゃあ難だが、まだまだ食べられそうとはいえ正直贅沢に飽きてきていたのも事実だ。
「えー、でもいいな、僕もお得意さんとかに貰ったんだけどゼリーとかばっかでさあ、
正直マンネリだったんだよね」
そう言ってリョウはいい笑顔で去って行った。
俺たちの間、空いた果物箱のスペースを爽やかな風が吹き抜けていった。
・・・後日。
「…あと…5箱か」
「ああ」
「冷蔵庫からはみ出した分だけでも処理しなければな」
「ま、ロンロンにかかれば軽いやろ」
「ああ。ロン、君の胃袋は本当に奇妙だ、一度胃カメラを入れてみたい」
「やだ」
何か俺が胃袋だけになったような言い方だが、気にしねえ。
ピンポーン
サムライがまた玄関に向かう。
玄関先に立っていたのはリョウ。
…何となくこの間のことを思い出す。
「あ、サムライじゃん!この間はありがと、あの果物おいしかったよ。」
「そうか」
「で、折角だから貞子と作ってみたんだけどさ。
タルトとワッフルとジャムパンとプリンとパイ。ちょっと作り過ぎちゃってさあ、
この間のお返しってことで貰ってくんない?」
「おお!」
「あ、ロンロン。ほらほら、うまそうでしょー」
大量の菓子を受け取って満面の笑みで振り返ると、
何故か鍵屋崎とレイジとヨンイルが真っ青な顔をしていた。
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・種類がちょっとずつ違ったら食べられるかもしれない
・ただしリョウのお菓子は砂糖激盛り(これでも貞子が止めた)
・レイジはそろそろ暴君が目覚める。そして食べる。
・お歳暮面子の中にはじめちゃんが入っているようないないような
・その内ロンvs凱さんで大食い対決inラーメン屋
・ロンよりヨンイルやサムライのほうが沢山食べられそうだという突っ込みはおいといて
食べ物をおいしそうに食べるロンロンの話でした。