2014/10/26(日)23:47
文化祭4日前 /文化祭ss続き・学生プリズン
「ちょっと待て。何なんだこれは」
「え?何て、演劇の衣装やけど?」
「そんなことは分かっている!僕が言っているのは、何故こんなに女性の服の丈が短いのかということだ!」
「せやかて、せやかて手塚先生割かし短めにかいとるやん!それをちょーっと誇張しただけやないかい!!!俺もそっちのほうが萌えるし!」
「……貴様の独断で設定を弄るんじゃない!それに、……これを着るのが誰か分かって言っているのか」
「直ちゃんやな」
「そうか。……歯を食いしばれ」
「待て、あかんそれはあかん!教室内暴力反対――」
平和だ。
後ろから聞こえてくるがたがたとかいう騒音もまあじゃれあいみたいなもんだ。
鍵屋崎の非力じゃ大してヨンイルに効果を与えられねえだろう。
「あか、あかんいくら直ちゃんでもやってええことと悪いことがあるんやで!?」
「いくらいつも非常識なことをしでかし呆れ半分諦め半分で黙認されている君でも許されることと許されないことがあると判っているか」
……いつかみてえに急所を狙われてるのでもないかぎり。
ヨンイルヨンイルうるせえ西の子分たちはざわついているが、まあ、大丈夫だろう。多分。
それよりも――
「……何をしている」
「サムライか。今日は早かったな」
「いや、休憩時間だ。何やら嫌な予感がしてな」
……唐突にぴきりと音を立てはじめた空気。
突如静かに警戒心をたたえて現れたサムライと、ヨンイルに説教することに集中してイライラしてる鍵屋崎。そして鍵屋崎に凄まれつつも全く堪えた様子のないヨンイル。大したことは起こらないと……少なくとも表面上では大したことは起こらないとわかっているがなんだか頭痛がする、嫌な予感。
丁度殴る恰好だか教育的指導だかしていたところがどう見えたのかサムライがやたらきつい殺気を放っている気がする、背中の向こうからちりちりと焼けるような気配。ついでに目の前のレイジが背後の惨状に面白そうな顔をしつつ俺にちょっかい出して来るのが本気でうぜえ。お前の作業は終わってるのかと言おうと思ったら俺よりもずっと要領よく進めてやがる、余計にイラつく。
「ヨンイル、お前は直に何をした」
「きっついなあ、ちょーっと衣装のスカート丈短くしただけや」
「……!」
ヨンイルの漫画じゃ効果音がつきそうなくらいサムライから殺気とも悋気ともつかねえもんが迸る。
「ロン」
同時にヨンイルからも謎のオーラみたいなもんが湧き出る。
「ローン」
そして何故か鍵屋崎までもやたら威圧感存在感を出し始める。
「なあロンって言って」
「うっせえレイジ!気になって作業に集中できねえんだよ!!」
後ろから前から何なんだ、今日は厄日なのかとレイジに食ってかかると次の瞬間口から何かがつぷりと音を立てて入る感触と――……
「……ふぁ?」
「うまい?」
「……ふめぇほ」
うまい。
レイジが口の中に押し込んで来たのは飴玉だった。それも…結構好みの味。
「イライラしてる時って甘いもん欲しくなるだろ」
「…ふぁあな」
朝からずっとやってても、不器用なせいで進まない作業にイライラして文化祭だからって普段話さないクラスメイトと話さなきゃいけなくてイライラしてたのが、一瞬で飴玉みてえに溶けてしまったのが悔しくて、けど嬉しい。
「……謝々」
「……」
礼を言った途端またひっつこうとしてきたレイジは取り敢えずはたいておいた。
俺がレイジに飴を貰った時あらかた決着ついたのか、後ろの3人もラスボスみたいなオーラを潜め、どっかの少女マンガみてえなことになっていた。
「サムライ、休憩時間はいいのか」
「ぐ……ヨンイル、妙なことはするなよ。直、お前もその……無防備にするんじゃない」
「いつ僕が無防備にしたと言うんだ」
「俺は妙なことなんてしてへんで」
くそ、心配するだけ損した。
「ロン、こっち終わったから一緒に作業しようぜ!!」
だからなんでお前はそんなに早いんだよ。
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【続】
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ロンの叫び声で3人が我に返ったとかそうじゃないとか。