2018/03/13(火)01:46
落花流水/2 (7sIFss)
IF記憶喪失安居視点
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落花流水/2
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13歳の選抜試験が終わって、のびのびと僕……じゃない、俺は泳いでた。
茂が前を泳いでる。
危ないな、あの泳ぎ方。
また、教えてやらないと。
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気が付いたら、いくつかの見知らぬ顔に囲まれていた。
「うえ……げほっ」
どうやら僕……いや俺は溺れかけてたみたいだ。
「起きた!!」
「大丈夫ですか!?」
「げほっ……………どこ…ここ……」
……もしかして、ここは外の世界なのか?
プールでもしかして俺は溺れたのか。
そのせいで病院に運ばれたのか、それとも……それとも……落第しちゃったのか……!?
「む、無理して喋らない方が……っ」
「そうよ、大丈夫よ、落ち着くまで待ってるから」
「水…飲めますか?」
目の前の、人の好さそうな青年が、器に入れた水を差しだしてくる。
要先輩と同じ位の年かな。
「……」
水をこくこくと飲んでいると、少し気持ちが落ち着いてくる。
同時に、身体がぶるりと震える。寒い。
「おらおら、焚火んとこに早く連れてこいや!」
「は、はい!」
「すみません、歩けますか……無理ですよね、……おぶいますよ」
「……ああ……」
なぜか酷くだるい身体をなんとか起こして、その人が好さそうな男の背中に俺はもたれかかった。
ずり落ちそうになる俺を、大人っぽい女性が支えてくれる。
テレビや写真でしか見たことがない、大人の女性。
こんな感じなんだな。
何故だか少しほっとして、俺は再び意識を手放した。
意識が途切れる直前目に入ったのは、さっきから震えた声を上げていた女の子。
外見はちょっと繭に似ているような気がしたのに、意識が薄れるに従って、その顔が茂に重なっていく。
「……しげる…」
あいつは心配してるかな。
暗闇の中、茂が一人残って、俺に手を振って、そして、すとんと俺はやわらかい真っ黒な世界に放り出された。