2017/07/16(日)20:45
やすらげるいばしょ(7s・病・安居と小さな他人たち)
※安居の精神世界の話。
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安居の世界は気持ちがいい。
言葉と態度で切り離された自分達は、浮遊して相手の心に届く。
それが跳ね返されれば自分達は死ぬ。
安居はそんな自分達をひたすらにその心の中に入れていく。
元から住んでいた少しのもともとの安居はもうどこに居るのかもわからない。
安居の中に棲む時は、安居の顔形になる。
たまに、ほんとうにたまに元の姿に戻るけれど、じきにほとんどが大きな大きな安居に吸収される。
その流れ込む転入生たちが更に増えたのはここ数年のことだ。
人は死ぬ瞬間に一気に流入する速度と密度を増す。
のばらが、少し繭が、茂が。
卯浪が、少し十六夜が、少し花が。
中で何かしらの声を上げる。
中でも生きているのに大量の分身をもたらすのが涼。
心の中で固まった安居が、最近のできるごとにぐちゃぐちゃになっていく安居を殺そうとするたび、その涼が止めに入る。
間に入るその手でどちらの安居をも傷付けながらも、それしか彼は止める術を知らない。
だけどここ最近は夏のBがそれ以上にお祭り騒ぎで乱入してきたからか、その涼たちも、安居も、安居に同化している自分達も、あやふやになっている。
小さなナツは、安居の心に届く度、自分からはじけて消える。
そんなナツを留める為に安居も自分達もおおわらわで、悩んでいる暇がない。
……小さな要だった僕も同じ。
この世界は、少しずつ、今度こそ生まれ変わっているようだ。