2018/08/31(金)04:13
種 (1次ss)
その種は、もしかしたら博士になれるかもしれない種だった。
その種は、もしかしたらアイドルになれるかもしれない種だった。
その種は、もしかしたら先生になれるかもしれない種だった。
けれどその種は、そのすべての可能性を捨てて火にかけられることを選んだ。
悪魔が言ったのだ、そうしたら残りの種の安全は保障してやろうと。
種は意識を失いながら、生まれ変わったら今度こそ、次の姿になって死にたいと思った。
*
種が目を覚ますと、種は人間になっていた。
どうやら種を火で炒って食べた人間の体に居るようだった。
ともに食べられた仲間たちもそこに居た。
ともに人間の体と心を構築していた。
種たちはそれによってやっと、夢見た何かになる手足を得た。