Laub🍃

2020/12/22(火)22:48

happyhappyhappy!!!

●少女漫画(116)

・ウサちゃんマンをお祝いしたかった早坂君の話 ・夏男をお祝いしたかった野々口さんの話 ・真冬をお祝いする鷹臣くんの話 ***早坂くんとウサちゃんマンの場合*** 「そういえば、ウサちゃんマンっていつが誕生日なんですか?」 「フフフ…それは秘密よ。ヒーローには秘密がつきものだから」 「なるほど!!!」  ……通ってしまった。  本当は今日が誕生日なのだけれど。  大学生となった私たちは、今日鷹臣君の呼び出しで顔を合わせることになった。  去年なら他所の学校とのトラブルやら冬休み直前ではっちゃけだす一部の人やらを落ち着ける仕事をやらされていたところだけど、今年は違う。なんでも屋の仕事として請け負った仕事に、顔出しNGの仕事があった上、初見で「あっ!!!ウサちゃんマン!!!お久しぶりです!!!!」とキラキラした目を早坂君に向けられて勝てなかった私はウサちゃんマンとして今回の任務をこなすことになってしまった。 「でも、もうそろそろよ。……それがどうかしたのかしら?」  首を傾げてみせると、早坂君は言った。 「いえっ……その時が近付いたら、何か日頃の感謝にお渡しできないかなと思って」  別に大丈夫だよ早坂くん…!  真冬の時にもらってるし…! 「大丈夫よ。既に私はあなたから素敵なプレゼントを貰っているわ。その素敵な笑顔という……ね」  キラン!と効果音がつきそうな顔で笑うと、早坂くんの目はさらにキラキラと輝きはじめた。  うっ……まぶしい……!  私は早坂君に正体を明かせる日が来るのか、また不安になってきた。  ……一生来ないのかもしれないなぁ。 ***夏男と野々口さんの場合*** 「なっ、夏男!その……久しぶりだな」  鷹臣君による任務のため、久々に男装して標的を追っていたら……可愛い子に会ってしまった。 「野々口さん!?」  嬉しいけど…嬉しいけれども!今は仕事中だ… 「すまん、今何か取り込み中か?」 「あ、うん……あっ」  ターゲットに気付かれた!  まずい。カップルの振りをすれば誤魔化せるか……!? 「事情は後で説明するんだけど、ちょっと俺とカップルの振りをしてくれない?」 「かっ、かっぷる!?」  ひそひそ声ではあるものの、野々口さんは少し声を荒げる。 「ごめんね、男とカップルのふりなんて嫌だよね」 「べ、別に…嫌、では…」  少し顔を赤らめて俯く野々口さん。可愛い。  疑いの目を向けてくる標的を誤魔化す為、いったん野々口さんの手を繋いで近くの建物に入る。 「なっ、夏男、ここは……!」 「えっ、あーっと、ごめん!!!」  でかでかと輝く「休憩」の文字。やばい。これでは私がエロテロリストになってしまう。 「ごめん……今ちょっと、ある人を調査するために尾行してて…」 「そうだったのか…邪魔してすまない。……このままでは見失ってしまうな。一旦私がお前に嫌気がさしたふりをして出ていき、お前がそれを追って出るというのはどうだ?先回りして物陰で相手を待つことができる」 「野々口さん、凄い…!」  さすがというかなんというか、異常事態に対する呑み込みが速い。 「付き合わせてしまってごめんね、後で何かお礼するから」 「!……分かった」  嬉しそうに言う野々口さん。ああ、罪悪感。  *  なんとか目的は果たした。尾行した結果、相手の弱味を手に入れることができたので上々というところだろう。鷹臣君に「成功したよ、後で詳細は送るね」とだけメールして、野々口さんに向き直る。 「お疲れ様、ごめんね急に付き合わせちゃって……お礼は何がいい?」  てっきりカフェでおごり、とかそういうものを想像していたのだけど。 「……お礼なら、……お前の誕生日を教えてくれないか」 「えっ!?えーと…ごめん、今は教え、られない、かな…」  色々と誤魔化して活動してる身だ、どこからボロが出るか分からない。  特に、野々口さんに「理想の王子様」として手を伸ばした以上は、その幻想を壊す切っ掛けなんて作りたくない。 「そうか…」 「あっでも、最近だよ!この間過ぎた!」  フォローするように言うと、野々口さんは更にしゅんとした。 「そ、そうか…おめでとう」 「ありがとう!」  祝ってもらえるだけで嬉しい。  そう思っていたら、野々口さんに手を伸ばされる。  え。 「……この近くに、夜景の綺麗な店があるんだ。……そこで何か食べないか?小腹が空いたし寒い。ワリカンでいい」 「えっ?それは悪いよ、お礼なんだから」 「……」 「借りを返させてよ」 「それだと誕生日祝いにならんだろう。……私は良い場所を教える。お前は私の食事に付き合う。……これでお祝いとお礼になる」 「……なんだか悪いよ…」 「私がいいといっている」  そう言う野々口さんの目は、季節が終わってもまだキラキラしているイルミネーションに照らされて、とても綺麗に光っていた。 ***鷹臣くんと真冬(幼)の場合***  今年もあのガキの誕生日がやってきた。 「鷹臣くーん!」 「はいはい、なんだ真冬」 「今日の真冬の違い分かる?」 「すっげえアホみたいに浮かれたかっこしてんな」 「違い分かった!?嬉しい!」 「誕生日だからだろ。はいはい、おめでとさん」 「えへへ、ありがとう」 「……」  誕生日プレゼント、とは俺の性に合わないが。 「なんかほしいもんとか、行きたいところとか、やってほしいこととかあるか」  気まぐれでそう提案してみたのは、単にヒマだったからだ。  西高との喧嘩もこの間ひと段落ついたばかり。危ないことはねえだろう。今日くらいは、少し羽目を外して周りに多少舐められても構わねえ。  しかし、ガキの目がやたらキラキラ輝きだしたのを見て、俺は早速後悔し始めた。  そして俺の嫌な予感は、大抵当たるのだった。

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