南包の風呂敷

2007/09/30(日)16:00

『陰日向に咲く(劇団ひとり)』

本・読書(479)

所謂、お笑いの一人。劇団一人の処女作。 おぬし、中々できるな、である。 『陰日向に咲く(劇団ひとり)』は連作短編集である。 「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」「Overrun」「鳴き砂を歩く犬」の5編からなる。 それらが、連環的に繋がっていく。その関連を読みながら、おやおやっと思っているとこの作品に取り込まれている自分に気が付く。そのように、仕組まれた物語の群れである。 つながりと言うのが、途中で分かると、どこにそのつながりがあるのか、何処でどういう風にそのつながりが出てくるのかを、探りながら読んでいくことになる。それも、多分計算されて書かれていると思わざるを得ない。そのように、巧みに作られている。最後まで読んで、最初の「道草」に帰ってきて、もう一度「道草」を読んでしまう。 「道草」のホームレスが、 「拝啓、僕のアイドル様」のボクが、 「ピンボケな私」の彼女が、 「Overrun」の自己破産者が、 そして、「鳴き砂を歩く犬」は、あの巨人の長嶋が新人の時代に一気に遡り、現代に戻る様も見事だ。 途中、何度も筒井康隆の初期の短編を思い起こさせるもの(「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」)もあった。 ただ、物語の内容は今風で、普通だと思った。 陰日向に咲く 劇団ひとり 2006年1月25日 第1刷発行 幻冬舎

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