2012/04/25(水)23:52
『少年と自転車(ダルデンヌ兄弟)』
『少年と自転車(ダルデンヌ兄弟)』
これほどに、見終えて直ぐに気持ちが柔らかく優しく仕合せな気持ちになった映画はいつの事か思い出せないほどで久々の体験である。
お見事!!と言う他ない。
一言で言えば「少年の成長物語」。それが大人も含め、見る側の気持ちまで巻き込むような物語になっている。
「朝日新聞デジタル(「少年と自転車」ダルデンヌ兄弟×樹木希林対談)」の記事を引く・・・、
「リュック」:私たちの撮影は、リハーサル期間がすごく長いんです。撮影前に40日間と演劇並みです。リハーサルでは身体的な部分から始めます。動きを通じて俳優は登場人物の中に入り込んでいきます。
今まで殆ど有名な俳優を使っていない監督が、今回セシル・ドゥ・フランスを少年の里親役に起用した。それについて・・・、
「リュック」:セシルの場合、それまでのキャリアで身につけた技術がある。でも今回の相手役は少年で動物的。ただそこにいるだけで存在感があります。一方、彼女の方は自分の技術を完全に見えないようにしないと存在感が出てこない。時間はかかりましたが、セシルは自分でそれに気がつきました。歩き方、見つめ方、ふりかえり方を「普段はつくるけど、今回はつくらない」と。
これを読むとセシル・ドゥ・フランスも凄いなあと思う。
リハーサルの長さだけではないと思うが、まさに練りに練られた作品。わずか(今は長い映画が多い)87分であるが、濃密だ。
少年シリルが木炭の紙袋を抱え自転車が左に曲がり画面が暗くなる。映画が終わったのだ。これほどに、見終えて直ぐに気持ちが柔らかく優しく仕合せな気持ちになった映画はいつの事か思い出せないほどで久々の体験である。
お見事!!と言う他ない。
一言で言えば「少年の成長物語」。それが大人も含め、見る側の気持ちまで巻き込むような物語になっている。
何故、父は頑なにシリルを拒むのか?
何故、サマンサはいくら頼まれたからと言って、男を捨ててまでシリルの里親を続けるのか?
特にサマンサの件は気になる。人は一人では生きてゆけないと、ダルテンヌ兄弟監督は語っているが、それでは当たり前すぎるであろう。もっと他に何かがなければ、サマンサの行為は分からない。
そして、音楽がいい。印象に残ったのは二場面。一つは、父親に盗みで貰った金を渡しにいくが断られ自転車で帰るときのバック。ベートーヴェン?
それとエンドタイトルの音楽。ピアノ協奏曲?
いずれもよい。
いずれ、既存の曲だろう。分かればよいが・・・。