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この間、カフェで私の隣に座ったご夫婦。見たところ60代後半という年代。夫も定年退職して、二人で日々暮らしているような内容の会話が、至近距離のおもしろさで手にとるように聞こえてくる。
このご主人、大変に相槌をうつのがうまい。妻は女性にありがち?なように、とりとめなく話題を変えながら延々と話し続けるのだが、夫は退屈するふうでもなく、絶妙な相槌を打ち続けている。 「ほら、あのマスカラね、今日、買って帰ろうと思っていたら葉書の案内の日付を思い間違えしていて、昨日までだったわ。」「ほう、そうか。」 「それにしても、このワイン、やっぱりおいしわよねえ(手土産にワインを買ったらしい)」「うん、そうだねえ。」 「それにしても○○さん(どうやら、共通の趣味の知人らしい)まいっちゃうわ。 自分で買ったら『あそこのメンチかつは最高だ』なんて何度も何度も言うくせにこの間私がおみやげに買っていったときは『おいしい』の一言もないのよ。」「そうか、あははは。」 私はこの「そうか、あははは。」の相槌に感嘆した。共通の知人の、いってみれば「文句」に対して、明るく答えて「あはは」と笑い飛ばす。妻のふんがいに同意するでもなく、反論するでもなく、一緒になって不満をあおるわけでもなく、それでいて、語った妻のうっぷんはちゃんと晴れる相槌。 「じゃあ、そろそろ時間だからいこうか。」とその夫はさっさとセルフサービスのコーヒーカップを下げ、手土産のワインの包みを妻の隣の座席からさりげなく自分が持ち、夫がそれだけの作業をすませた後もコートのぼたんをとめるのに手間どる妻をじっと待っていた。 たいていの女性はとりとめなく話をするのが好きだ。きちんと気持ちよい相槌をうってくれる夫をもった妻は幸せものだ。少なくとも、その「メンチかつ」のうっぷんを夫ではない仲間内の女性にうちあけて、ひんしゅくを買う危険をその妻は回避した。(笑) 「そうか、あははは。」 とても参考になる相槌を私は勉強した。 だれだって、愚痴をこぼしたくなるときがある。でも、愚痴というのはこぼしているうちにそれを増長させてしまうという難点がある。もし、それに陥りそうな人が回りにいたら「そうか、あははは。」と私も相槌をうとう。今日はとってもためになるテイータイムだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年05月25日 10時34分41秒
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