第13話とりあえずハーフで【Half/半分】レンはぎょっとなった。「ちょ、ちょっと」 「―私はほしいものは何が何でも手に入れたい性分でね」 「サーシャさん、ちょっと」 「うん、君の言うとおりだ、確かに秘密ばかりではつまらないだろう。君に私の顔を拝ませてやろう」 「服を脱がないで下さい」 「何で?別にゲイでも不能でもないのだろう?女から誘っているんだ、それも美人の。何の問題もないだろう、男なんだから私を楽しませてくれるだろう?坊や。レンの顔やからだは割りと好きだ」 「いや、いやっ」 どどどど・・・・ 「アレン、しつこくね?」 「ラルク、・・・何かしたのか?」 「それはですね」 後ろからにゅっ、とセレスティア・エミヤが出た。このネオミネルバのオペレーターで、レンに使えている少女だ。いつも笑顔で、ニコニコしている。 「アレン君の大切な骨董品をラルクちゃんが壊したからですよ」 「ああ、あのボロ壷、そういえば、何かあると磨いたり、手入れしているな」 シュールだよな、何か、あの光景は。と、レンは思った。 「ええ、床に置いたところを運悪く、ラルクちゃんが蹴飛ばしてしまって」 「あーっ」 「アレンの奴、執念深いからな」 シャッ、と自動ドアが開く。 「すみません、お取り込み中でしたか」 「ルブラン上官、言え、そんなことは」 「これは、工作というものですか?」 「ハッ、プライベートで孤児院の子供達に贈り物をすることになって」 ふっ、と軽やかにシェリルが笑う。その笑顔を見て、エリアルは照れくさそうな表情をした。 「いい心がけです」 「それで上官、何か御用ですか?艦長からまた新しい司令ですか?」 「いえ、そんなことは、・・・・その、フォングランツ、貴方、レンと親しいですよね?」 「は、はぁ。まあ、世間話をするほどは、以前より距離は近いと思いますが」 「・・・・その、好きな食べ物とか、今ほしいものとかわかりますか?」 恥ずかしそうにもじもじしながら、シェリルは目をそらしつつ聞いた。 「それはあれですか、好きな異性のことを知りたいとかそういう」 「イエッ、そのようなことは、その、あれです、部下とのコミュニケーションを」 「それでしたら、もう少しラルクととってあげては?」 シェリルはきょとんとなった。 「は?」 「彼は関係ありませんよ」 「・・・上官はその辺りが欠点のようですね」 「え?」 抱き枕はどう見えても、萌え系だった。レンは、その枕をくるみながら寝ていた。 「・・・すーっ」 「リカルド様」 「・・・起こせ」 「はっ」 レンの部屋に、リカルドの部下が入った。 たったったっ 「・・・・ええと、ラルク、エリアル、これは何?」 「・・・・デートの申し込みのようですね」 「アレン、お前、いつの間に!?」 「護衛役は、神出鬼没の機能があるので」 「・・・お前、女をかどわかせてきただろ」 「任務ですので」 「どうも上官殿は恋されると思いこまれるようだな」 「アンジェリアにお前、夜中何か、された?」 「まさか、彼女は名目は俺の婚約者だけど、俺の友達として艦に乗ったんだぞ。アンジェリアが信頼を裏切るわけがない」 「据え膳は男の恥だからな、アスタール」 「え?」 「女の誘いを断るのは無粋だぞ、この色男」 「は?」 「それでは、お召し物を用意しなければ」 「え?」 「「「よし、今から当日までの作戦会議を開始する」」」 「ちょ、引っ張るな、なんだ?」 「行くぞ」 「えええ~」 「艦長、上官許可を求めていますが、どうなさいますか?」 「どこの船だ?」 「それが撃ちの艦らしいのですが、識別番号が新しいもので」 「確認しよう」 新しいガンダムのコクピットが開き、ラルクが現れたがその表情は揺れていた。 ウィィン・・・。 中から、オーブの学生の制服を着た少女が現れる。宇宙空間の中、ふわりと浮きながら出てきた。少女の瞳は閉じられている。 「レン」 「は、はい」 新品のミッドナイトグリーンのリボンをつけたふわふわのウェーブヘアの小柄の少女はレンによって、すくい上げられる。足も自由に出来ないらしい。 「ラルク、何故、民間人がMSに?」 「艦長、実は・・・」 「―教えます、私がこのネオミネルバの支援者だからです。MPJ社といえば、わかるでしょうか」 「は?支援者?」 「お願いです、ネオミネルバの皆さん、私の兄を奪ったスーパーコーディネーターを、地球連合を亡ぼしてください、わたくしと共に」 スカートを翻して、盲目のその少女は確かにそういった。 「私はエリザベート、エリザベート・橘・フリューゲル、貴方達に家族を殺され、ナチュラルに家を奪われた人間です。兄の仇を討たせてください」 「お久し振りで・・・ごあいます、クライン議長」 「アスタール准左、ラクスでいいんですのよ」 苦虫を噛んだような表情をしている。 「LDさんを私の王宮へ」 「しかし、マリー様、彼は外国人で他国の軍人でして」 「コーディネーターかもしれません」 「病気の人をあなたたちは放っておくのですか」 「・・・・」 「・・・・上官は何故、あんな態度を取ったんでしょうね」 「本当に君は鈍感だな」 「副艦長?」 「愛は人を複雑にするんだよ」 2 「貴方にはわかりませんよ、わかってたまるものですか!!」 「君、ラクス様に、なんてことを!!」 「・・・・・・あれは」 「プラントの鬼神、リカルド・ナラ・アスタールだ!!」 3 勝てない、・・・・兄貴には。 リカルド・ナラ・アスタールには・・・!! 「カイン・ブルークォーツを返して頂きたい」 脅迫だ。これは。 「我々も貴方達と構えるのは得策ではない」 「ジークフリート・フィレスは存在しないのですよ、皇太子殿下・・・いえ、宰相ラインフルと様」 4 「アロイスはいないのか?」 「ザシャ、やはり、連絡してから来るべきであろう」 「・・・これだから、貴族様は。そんな常識使ってたら、いつ、あいつを捕まえられるよ」 「私ハアロイスの意志を汲むべきと思う」 「幼い頃からの戦闘の教育の副作用だと思います。アスタール様は普通の教育は勿論,MSパイロットとして、スーパーコーディネーターに開花するように、レン様を戦場に送り込みましたから」 壊れたからくり人形か。直せるかな、とカインは人形や装飾品の多い部屋でネジや歯車をいじっていた。アロイスの母のものにしては幼い少女がすきそうなものが多すぎる。 「まあ、ジークは機械いじりがすきなの」 「はい、まぁ」 「お父様か、ご兄弟の影響?」 「ないです」 「は?」 「ですから男性も女性も親というべき遺伝子提供者はいません。兄弟は双子の妹だけです」 くらりとなった。 「ジーク?」 「すみません、少し、席をはずします」 5 「・・・・・大丈夫、・・・・これが戦争だ・・・殺せばいいんだ」 「ごめん・・・見ないで」 「え?」 漆黒の宇宙を映し出す外に面した廊下で、レンがシェリルに抱きついた。 しがみつくようだった。 「・・・えろ、消えてくれ、消えて・・・・お願い」 その光景をラルクが目撃する。 6 「写真か」 数々の賞やトロフィーもある。家系図らしい木の絵が壁に描かれている。けれど、寒々しい。飾り窓さえ、どこか他人行儀だ。唯一、温かそうなのは幼いアロイスと両親と少女の写真だ。 「・・・・やるか」 そろそろ、記憶の書き換えの影響が体に出る。ブロックワードは大丈夫だ。 ・・・好きになれないな、この瞬間は。 注射を首へと当てて、薬を注入する。携帯用なのでサイズが小さいのが困る。 ガタタン。 「ん?」 カインは呑気な声を出した。 表情を一切崩さない、冷たい表情が常のアロイスの表情が揺れていた。地面には、鏡が割れている。薬のびんなものも。 「ベルツ、どうかしたのか?」 「・・・・・・・カイン、お前は・・・・」 瞳も恐怖で染められている。しかし、すぐに冷たい表情のアロイスに戻って、注射を奪い取り、投げ捨てる。 「ちょっと、もったいない、君僕が強化ニンゲンだって知ってるなら、薬が必要なことも知ってるだろ、埃がついたらどうするのさ。この薬、結構レアものだよ?」 「非合理的な組織の元で作られ、常用されたものは必ずしも適応できるとは限らない。二度と俺の前でこんなマネをするな」 「身体に必要なんだよ、仕方ないだろ」 「おかしいと思わないのか・・・」 「?そういうからだなんだから、普通でしょ?変な人だな、君は・・ああ、君、ナチュラルじゃなくて、コーディネーターか」 |