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なりぽん@厭離庵

いろいろな『事実』


     
いろいろな『事実』


人は『厳然たる事実』などとさも大事そうに言うが、
もう事実に平伏すのは止めようと思う

一体『事実』がどれほど事実だったと言えるのだ
あれだけ多くの事実に縁どられた彼女との愛の中に
一片の真実を見出すことすらできない

彼女がこのベッドに何度となく横たわった
それを事実として説明するのは容易だが
真実として証明するには
あまりに幼すぎる言葉の原野

人は『揺るがぬ事実』などとさも大事そうに言うが
もう事実に跪くのは止めようと思う

僕のようなインチキ実証論者は
事実が満足な量に達すれば
すぐに思弁してしまうのだ
その思弁の空しさは
何百もの事実ではなく
たった一つの真実によって
空高く構築されるのだ

彼女がもはや僕の平原を超えていった
何も無い野放図な平原を超え
地殻運動止まない扇状地を目指している

しかし彼女は本当に超えていったのだろうか
単に越えていったに過ぎないのではないだろうか

僕は潔い平原を続けよう
彼女の見せた最後の涙滴が
単なる事実なのか
それとも
憐憫の真実なのか
その判断は
僕の愛の最後の試金石

人は『動かぬ事実』などとさも大事そうに言うが
もう事実に従属するのは止めようと思う
彼女の愛が真実でなく事実でしかないという
動かぬ事実だけで
僕のもっていた
唯一の真実―僕が彼女を愛していた―
も事実に退化しようとしている




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