雑木林(途中)
スケッチに没頭していると、突然「絵かいてるの」という声が、頭の中に響いてきた。顔を上げると、おそろいの赤い帽子をかぶった兄弟が立っている。小学生4年生くらいと小学生1年生くらいに見える。くちぐちに「わあ~」「すごいね」「じょうずだね~」「えへへ、そう?(そんなにうまく見えるのかな)ありがとう」「どこを描いてるの?」と、兄のほうがきく。そう聞かれて、あらためて目の前を見る。私達のすぐ目の前には、大きな雑木林が在る。木と木の間に静かさがただよっている。散りかけた白木蓮が一本立っているところを私は指さす。「あそこに白い花があるでしょう、それが、これ」「ふうーん」兄弟は私の絵と風景を、まじめな顔で見比べる。ちいさい方が、バックから飛び出ている色鉛筆の箱をみつけると「これで描くの」と箱をさかさにして色鉛筆を小さな手に何本もわしづかみにする。「うん、それも使うよ」「これは?」と筆を指さすので、「これも使うよ」と答える。目は黒目ばかりで、鼻の下に鼻水がこびりついている。「ざりがに釣れた?」と私はきいてみた。あたりの池や小川ではざりがにが釣れる。「たくさん釣れたよ」と一段大きな声で答える。しばらくして「ぼくたちもうもどらなきゃ」と弟の方が、お芝居のセリフのように言う。家族でここに遊びに来て、楽しくて興奮しているんだな、と思う。「じゃあね~」かわいいなあ、と思いながら笑っていると、お兄ちゃんがふりむいて赤い帽子をいじっている。それから彼は私を見て「うまくいくといいね」と言った。「うん、ありがとうね」と私も彼を見て答えた。(あとは写真を見ながら仕上げる予定です。)