イスワント・ハルトノ展(於; ギャラリーK)
超かっこいい。ギャラリーの壁面にはカーテンが掛けられ、柱状のシャンデリアと、壁面に飾られた20枚ほどの写真の前にそれぞれに備え付けられた飾り棚が設けられている。その棚には、まるで写真への供え物のように、ラメとスパンコールで飾られたクッションの上に置かれたそれぞれ異なる匂いの香水瓶。香水瓶は、羽やガラス球やビーズでゴージャスにデコレーションされている。ギャラリー全体は、ゴージャスなリビングのようにも見える。ただ、シャンデリアの向こうに透けて見えるのは旭日旗であり、カーテンにプリントされているのは第二次世界大戦中の日本の風景だ。自分達の寄付で贈られた戦闘機の前で笑みを浮かべる新橋芸者の写真や、軍事訓練をする大阪のダンサー達の写真が、カーテンにプリントされている。壁に飾られている20枚ほどの写真は、特攻隊員の写真である。クラシックな額縁とともにアクリル板にプリントされている。隊員がピアノを弾いてくつろいでいる写真などもある。写真にはそれぞれ名前がつけられ、それぞれの香りの香水瓶がその前に置かれている。写真は古ぼけており、かすかな香水の香りとともに、時間が経過したことを感じさせる。だが、全ての写真の中に、作家の現在の姿が合成されて写り込んでいる。リビングにはオルゴールとの音と、作家が街頭で靖国神社についてインタビューした音声が流れている。「tenno」と名づけられた額縁の中には、写真がない。額縁と、その中の空白が感じさせる、ある感覚。インドネシア人の作家に、あらためて天皇というものの存在の、不思議さを知らされる。リビングルームの中にある戦争。戦争は過去のものではなく、日常の一部であるということが伝わってくる。戦争はただ反対するものではなく、自分の中に、日常の中に既にあるものだ、という認識を促される。戦争とか天皇という概念が、ある不思議な感覚を、呼び起こすことができるのだな。芸術として効果的に使われている、と思った。ギャラリーKのページ