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テーマ:☆詩を書きましょう☆(8812)
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その海辺の村では
海の向こうから太鼓の様な音が聞こえてくる日があった その音が聞こえる日は 子供達は家にいるようにと、大人に言われていた 太鼓の音の聞こえる日に外へ出ること それは誰もわからない古い昔からのタブーだった 子供が大人にその理由を聞いても、 答えられる大人は一人もいなかった だが依然としてそれは厳然としたタブーだった 太鼓の鳴る日 親に外出を禁じられた娘は、 誰も知らない昔、津波の日に人柱になった長者の娘の話を 家の中で思い出していた その言い伝えは、言い伝えにすぎなかった 本当に見たものはもう誰も生きてはいないのだったし 人柱のしるしにたてられた礎は もう石に刻まれた文字が風化して、誰一人読める者はいなかった 娘は時々その森の中の礎のそばで、冷たいその礎に頬をあて、 物思いに耽ることを楽しみにしていた そのせいで村では変わり者の娘だと陰口をいわれていた 娘は、人柱になった長者の娘が感じた恐怖を 想像することが好きだった その太鼓の鳴る日 親の目を盗んで娘は外へ出た 禁じられている行為だったが 娘は浜へ出て 海の彼方 空と海の溶ける所をみつめた 太鼓の音がしていた 髪が風に吹き乱されるのが心地よかった その時、ひとりの男が波打ち際を 娘の方へ歩いてくるのが見えた この村の男ではない知らない男だった 男が近づいてくる その男に連れ去られても、何をされてもいい と娘は思った お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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