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カテゴリ:文章のスケッチ
初めの夜は、脳細胞がダンスを踊っているみたいに、意味や言葉のかけらがつながったり離れたり、真っ白になったり、一晩中それが続いた。私は死人みたいに横になっていた。死体になった気持ちだった。ひからびたミイラみたいに。 日が昇ったら、光がとてもいやだった。やがて人の声が聞こえてきた。それが怖かった。日常生活の、いろいろな瞬間の断片が浮かんできた。会社の廊下を歩く風景とか、駅の階段を登る一瞬の空気が、頭に浮かんで、それが怖かった。何も食べず飲まなかった。ミイラになってしまいたかった。 二日目に、すこしだけ頭の整理ができてきて、それでも幼児のような欲求を、電話口で繰り返すだけのようだった。まだ眠りはおとずれなかった。横たわったまま、夜になり、そしてふたたび朝になった。三日目。 会社を休んだ。お昼頃に、立ち上がってみた。腰がいたくて、すこしふらついた。冷蔵庫のジュースを飲んだ。初めの夜以来のシャワーを浴びて、すこし化粧をして、コンビニに行った。缶チューハイとサンドイッチと冷凍のうどん、を買って帰った。缶チューハイを半分飲んで、サンドイッチを食べてまた横になった。生きていかなければいけないから、明日は会社には行かなければならないから。ふとんの中で、苦しみが襲ってきた。 夜起きて、シャワーを浴びて、うどんを温めてたべて、好きな映画のDVDをつけっぱなしにして、また横になった。明日は起きなければ。 夜、きれぎれの夢を見た。怖い夢ばかり。外は、暴風雨が吹き荒れている。 朝、起きて会社へ行った。世界は、何故なのか以前よりやわらかく見えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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