1年前の赤い花。
スマホのアプリが、突然1年前の思い出を連れて来る。
ちょうど1年前の、真っ赤な彼岸花の写真。
そう言えばそうだった。
認知症のかあさんとの闘いの日々を繰り広げていた私たち。
以前は時々は旅行に行ったりしてたけど、それもできなくなり、でもストレスがたまると、2人でドライブに出かけた。
ちょっと田舎の方へ走ると、彼岸花がたくさん咲いていた。
ほんとにきれいだった。
癒された。
今、かあさんは施設に入居して、そこそこ機嫌よく暮らしているようなので、私たちは旅行にも行けるようになった。
なんてありがたいんだろう。
でも、かあさんにありがとうとは言わない。
1年半前、私たちはかあさんに大事なものを奪われた。
それは私の大きな夢だった。
私には行きたい場所があったのだ。
そりゃ、かあさんが突然入院することになって、私たちが旅行をキャンセルせざるをえなくなったのは、かあさんを責めても仕方ないことだし、かあさんにそのことを話したこともない。
(話しても理解できないだろうけど…)
もし、その大事なものが、再び私たちの手に戻ってきたら、ありがとうって気持ちになれるのかな?
今はまだわからない。
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