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カテゴリ:認知症 介護
何日目だったか…
その日、かあさんの孫娘がかあさんに会いに来た。 生まれてまだ数ヶ月の、赤ちゃんを連れて来た。 孫娘の子供だから、かあさんのひ孫だ。 多分、初対面ではなかったと思うけど、かあさんの記憶からひ孫のことは消えていた。 おばあちゃん! 孫娘が声をかけると、かあさんは目を開けた。 来てくれたんか。 孫娘を見て、弱々しく言った。 おばあちゃん、ほら。 孫娘が抱いてる赤ちゃんをベッドの上のかあさんに見せると ひゃあ! あんたの子か? 息苦しそうにしながらもそう言って、手を伸ばそうとするかあさん。 孫娘が赤ちゃんをよく見えるようかあさんに近づけると、 酸素マスクも振り払い、手を伸ばして赤ちゃんにさわろうとする。 ひゃあ! かわいいな〜! 死にかかってる人とは思えない大きな声を出した。 赤ちゃん、泣き出す。 孫娘は赤ちゃんをあやしにその場を離れる。 かあさん。 ぐったり。 死んだように目を閉じて、しばらく苦しそうに喘いでいる。 そのうち、赤ちゃんを抱いた孫娘は、また病室のかあさんのベッドサイドに戻って来た。 かあさん、ぱっちり、目を開ける。 あんた! 来てくれたんか? さっきのことは忘れている。 赤ちゃんが目に入ると、かあさん、また興奮。 ひゃあ、あんたの子か? 女の子か? また初対面の様相。 またもや赤ちゃんがグズり出すと、部屋を出てお乳を飲ませに行く孫娘。 かあさんは、またもやぐったり。 かあさん、何もしないでも息苦しいだろうに。 赤ちゃんを見ると、それも忘れて興奮しちゃうみたい。 私は喘ぐかあさんの顔の上で、酸素吸入のマスクを抑え続けていた。 かあさんはすぐにそれを外そうとする。 あんなに興奮して… 突然、心臓止まっちゃうんじゃないかしら。 そう思った。 孫娘と赤ちゃんが見えなくなったら、目を閉じて苦しいそうな息をしてて、そうしてまた全部忘れちゃうようだ。 目を開けた時に赤ちゃんが見えたら、また初対面。 かあさんが嬉しそうに手を伸ばすから、孫娘が赤ちゃんをかあさんに近づけて見せる。 かあさん、喜んで大興奮。 そんなこと、何回も繰り返した。 もう、ひやひやしちゃう。 かあさんの心臓がいつ止まるかと… そんなひ孫との初対面。 ✕多分、4回くらい。 かあさん、もう体力なんて残ってないはずなのに。 心臓はいつ止まってもおかしくないのに。 でもどっちみち、もうすぐ心臓は止まる。 早く楽にしてあげて。 とも思った。 だけど、その日も、かあさんの心臓が止まることはなかった。 にほんブログ村 にほんブログ村 人気ブログランキングへ 認知症ランキング 【店内全品5倍】人生のリスクを未然に防ぐ意思能力鑑定 「認知症」でも家族が納得する遺産相続/圓井順子【3000円以上送料無料】 【新品】【本】日めくり まいにち認知症予防トレーニング 土井 剛彦 監修 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.12.16 04:34:02
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