夫のおじいさんとおばあさん

2019.10.12

私の夫は、母親であるかあさんにほとんど世話をしてもらえなかった。
かわりに色々世話をしてくれたのはおばあさんだった。

おばあさんは気のいい人。

夫が若い頃、バイクを盗まれた。
数週間たって、バイクを盗んだ若者が父親と一緒に謝りに来た。

私の夫は留守だった。

おばあさんが、お茶やお菓子を出してバイク泥棒とその父親をもてなした。
さらに、お土産に畑で採れた野菜や栗をたくさん持たせて帰らせたと言う。

その後夫が帰って来たら、見る影もなく改造されたバイクだけが帰ってきていた。

これじゃ、もう乗れないし。
と嘆いた夫だけど、夫がいない間にばあさんが全てを許して帰らせてしまったので、もうどうしようもなかった。

ほんま、あほなばあさんやったで。
呆れ果てたわ。
と夫は言う。

そんなおばあさんは、70代で死んだ。
弱って動けなくなり、病院に連れて行ったら間もなく亡くなった。
老衰だと言われたと言う。

おばあさんの夫である、私の夫のおじいさんは、すごく自分勝手な人だったと言う。

私の夫がまだ若い頃、買って来て庭の池に放した鯉がどんどん減っていくので不思議に思っていたら、おじいさんが掬い上げて自分で料理してこっそり食べていたと言う。

夫が庭に植えた木は翌日引っこ抜かれいたし、庭の囲いや物置きを作ったら、何も言わずに壊して取り除いてしまう。

そんな意地悪なじいさんだった。

そんなじいさんなのに、おばあさんは長い間よく連れ添ってきたなぁと思う。
悪口も言わずに。

生きていくためには、夫の嫌な部分は許すか見ないことにしないと仕方なかったのかな？

そんなおばあさんが死んだ後、取り残されたおじいさんはショックを受け、しばらくは死人のように寝こんでいて、なかなか立ち直れなかったらしい。

おばあさんがずっと我慢していたとしたら、先にあの世に旅立ったことは、最後の仕返しかな？