９１歳、かあさんの夏

朝、朝食のトーストを食べながら野球の話を始める夫。

腕を伸ばしてバットを振るから早い球が打たれへんのや。
フォーム見てすぐわかったわ。

こうやろ！
立ち上がりフォームを実演してみせる。
こうや、バット振るの、距離があるやろ。
そやから打たれへんねん。

そして今度は、速球を打てる別の選手のフォームを実演。

肘曲げててコンパクトやろ。
こうや。
パチーン！！

打てるんや。
距離が近いんや。

そして次は、チームのために戦う強い球団の話。

バントのサインが出たら、絶対バントや。
従わなあかん。
チームのためにバントしたら、査定が上がるんや。

ヒット打ったらあかんの？
自分の記録より絶対チームのため？
そんなにみんな自分のチームが好きなの？

好きなんや。
報酬がええからや。

勉強になるやろ。
わしは何でも知ってるからな。
野球やろ。経済やろ。政治やろ。クルマやろ。

はいはい。
そうやね。
だけど、遅刻するわ。
もう仕事行かないと。

話に熱が入ってしまい、喋り続ける夫。
いつもこうだよ。

暇な時ならいいけど、忙しい出勤前はやめてよね。


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