カテゴリ:家/土地 雑感
富田林市の「寺内町」、大阪府内唯一の「伝統的建造物」指定保存地区にある 19世紀後半築の中井家住宅が、今日全焼してしまった。 まずはケガ人もないということで、不幸中の幸いである。 それにしても、惜しいことだった。 日本の伝統建築技能を「世界遺産」にという動きがある一方で、 伝統建築が目の前で次々と壊されていくなか、 なんとかその街の美しい景観保全の意味からも残っていてほしかった。 私は、自宅を焼失した。 それがキッカケで、堅固な「木造」住宅を建てようと考えた。 焼失した家は在来工法の建売住宅。 3.5寸という建売仕様の細い柱であったが、素早い消火活動のお陰で、 黒焦げになっても崩壊することなく鎮火まで躯体を支え続けた。 軽量鉄骨造りなら飴のように曲がり崩れて、留守番していた犬に被さっただろう。 しかし問題は、化学物質の燃焼ガスである。 犬は怯えて床に伏せていたので熱や炎にはやられずに済んだが、 大量の毒ガスを吸い込んでしまった。 高いところに鼻のある人間なら、どうだったか? 鎮火後の焼跡に入り片づけをしている間、化学物質の異臭に悩まされた。 それが、無垢材や自然素材で、太い木組みの家を建てようと考えたきっかけである。 木造は火に弱いと現代では喧伝されてきた。 関東大震災や先の大戦での大空襲で街が焼け野原になり、 国民的トラウマとなってしまったということも大きいだろう。 しかし実際は、木造は火に強いそうだ。火事になるのは、 まずカーテンなどの家財から(ウチは電気からタオルに引火か?)で、 柱や梁などの木材がまず燃え始めるわけではない。 周囲が燃え始めるとまず木材の表面が炭化し、その断熱効果により 周囲が高温となっても木の内部にまで燃え進むのを遅らせる効果があるという。 そもそも木の熱伝導率は鉄の1/1000だそうだ。 (ただ、金具による補強は、それが熱橋となり、木材を芯から熱してしまう。) なので火災で木造住宅が倒壊に至るまでの時間は柱の太さで決まる事となり、 太い柱を使った家の方が当然燃えにくくなるというわけだ。 耐震性から言っても4寸角は最低ラインだろうし、昔の家は普通それ以上だ。 火災でそれより問題なのは、新建材から発生する有毒ガス。 近年の家は床も壁も断熱材も、合板や集成材など木材でも接着剤・・・、 ほとんどが有毒ガスを発生する化学物質を使って建てられている。 その怖さは身をもって体感しているだけに、今の建築業界には大きな違和感を覚える。 話しを戻して、焼失した中井家住宅。 (富田林寺内町の探訪「中井家住宅」) すごく太い柱や梁で漆喰外壁なのにここまで焼け落ちているということは、 かなり長時間燃えたのだろう。 古い街並みということで、消火活動に手間取ったのかもしれない。 けれど建物本体からは、恐らく有毒ガスは出なかったのではないか。 火事は、他人ごとではない。 直接的な責任は自分には無くても、自宅は燃えるときは燃える。 火事に遭ったときのことを考えて、家の新築を考えていますか? それにしても、日本の宝をまたひとつ失ってしまった。 伝統建築の技能を受け継ぐためにも、ぜひ元通り新築できればと思う。 ただでさえ維持費がかかっていただろうに、所有者個人にそれを求めるのは酷ではあるが。
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最終更新日
2020年09月20日 22時55分19秒
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