2020/11/11(水)01:18
畳敷き ~ 日本ならではの寛ぎの室内空間 ・・・ 畳職人の技
先週、完了検査で指摘された吸気口が急遽設置され、今週めでたく合格の石場建て伝統構法の新築。
今日は、待ちに待った畳敷きの日。仕事帰り、現場に駆けつけて見ると、見事敷き込まれていました。
1階は、小上がり書斎3畳。といっても、堀込カウンターデスクがあるので、1枚の大きさは1畳より小さい変形畳。
籠り感のある部屋がコンセプトで、棟梁も昼休みはよくここに籠って寛いでいましたが、畳を敷くとますます落ち着くいい空間になり、畳の良さをあらためて実感!老年期には、寝室としても使えそう。
2階は、6畳+4畳半+6畳の全面畳敷き。今どき、畳のない家も多いのに、古民家のように全面畳敷きは珍しいんじゃないでしょうか。
この家は1階の天井が直接2階の床板なので、畳を敷き詰めることで1階への足音が大幅に減衰されます。もちろん畳ですから、どこにでもゴロゴロできるという快適性も。
畳表は、生産者が明確な熊本産。今は中国産が主流ですが、中国から伝わった建築技術が基礎となった日本建築で、畳こそ純粋に日本オリジナル。畳表は国産を選びたいものです。
畳表の藺草(イグサ)には、調湿作用や空気浄化消臭作用や断熱効果の他、アロマテラピー効果や集中力増進効果もあると言われています。また、この青畳が年月を重ね艶やかな黄金色になっていく楽しみもあります。
(参照 : 熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会 / 熊本県畳工業組合)
畳床(中身)は、残念ながら予算の都合で本藁床ではなく、木材繊維を固めたもの。断熱材に使ったフォレストボードの硬い版みたいなイメージ。けっこう重いのですが、畳を上げてメンテナンスする頻度は藁床ほどではなさそうです。
今の主流は発泡ポリスチレン。安くて軽いんですが、1階の火災で2階の畳が溶けて有毒ガスが出たのを目の当たりにしたことがあり、石油系の素材はやはり怖かったんです。
畳の縁(ヘリ)は、1階の書斎は狭いので、少し模様が入っているもの、2階は総16.5畳なんで、スッキリ無地のもの、色は青畳のうちも黄金色になってからも縁が主張しないような青緑系を選びました。
近年は縁のないヘリ無し畳が琉球畳という一部誤った呼称(※)で人気ですが、私は好みません。ヘリは畳の角を守るもの。ただの飾りではないからです。また「畳のへりを踏んではいけない」という文化を伝える意義もあります。
(※本来の琉球畳は、藺草ではなくカヤツリグサ科の七島藺で編まれたものです。)
この家に畳を敷くにあたっては、伝統構法であるがゆえに柱の太さが場所によって違っているので、ただ長方形に作ったのでは納まりません。そのため、微妙な切り欠きで見事に納まりをつけてあります。
畳職人さんは、近ごろこういう仕事はなかなかないので、やり甲斐がある!と張り切ってくださったと聞いています。この家に関わってくださった様々な職人さんたちのなかで、畳屋さんにはお会いできていないので、ぜひ近々お礼に伺いたいと思っています。
見に入ったときはもう日が暮れていたので、2階の電灯を消してみました。そしたら、1階の灯りが吹抜け簀子から仄かに洩れ上がってきます。狙ってたとはいえ、畳と相まって一層素敵な雰囲気です。
2018/9/19稿「ホロデッキ?…ニセモノでできた家」で触れた宇宙戦艦ヤマトの医師 佐渡先生の部屋のように、180年ほど未来の宇宙艦でも、畳の部屋なら寛げるだろうなぁと思います。
そもそもこの家に、宇宙船じゃあるまいし、24時間換気システムは必要ないのです!