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:::Nebula†Garden…ホガラカDiary:::

◆夢のつづき


【二次創作書庫…ikki*shun】

夢のつづき



  くぐもった寝息が、静かな部屋の鼓動となっていた。
 瞼の弧を縁取る長い睫、小さく開いた唇、細く柔らかな髪が頬に乱れて、指を伸ばしたい衝動に駆られる。
 床には、読みかけだったと思われる文庫本がひっそりと横たわっていた。
 瞬は昼下がりの平和な風に包まれながら、夢の中をさ迷っているようだ。
 しなやかな四肢を隣で寝ている白猫と同じような角度で投げ出し、小さな顔 を大きな羽毛の枕に埋めている。
 俺が、自身の想いを明確に見抜けていなかったあの頃、この細く幼い腕は何者の背を抱きしめていたのだろう。
 「…うぅ…ん…ん?なんだ、兄さんか…。」
 「悪かったな俺で。誰だと思ったんだ?」
 金髪野郎の顔を思い浮かべながら寝ぼけ顔の弟を見下ろす。
 「この家で人の寝顔盗み見するのなんて、兄さんだけなんだから。直ぐに分かるよ。」
 瞬はコロリと真上に向き直って、顔に乱れかかった髪をかき上げた。細い指に絹が絡む。
 「夢見てただろ?」
 「ゆめぇ?…見てたかもしれないけど…。起きたら忘れちゃった。」
 俺は床に落ちた文庫本を拾おうと身を屈める。
 「兄さんの夢じゃなかったら嫉妬するの?」
 夢に嫉妬?
 「バカバカしい…。」
 俺は下を向いたまま答えた。
 「僕はするよ。兄さんが他の人の夢を見たら気になっちゃう。」
 瞬はそういう性格ではない。ないのに、あえて俺の気持ちを乱すような事を言いたがる。
 気だるそうに寝転んだままの瞬がこちらを見ている。
 自分の発した言葉がどんなふうに響いているのか興味津々なのだ。
 屈んでいる俺と、寝そべったままでいる瞬の目の高さは同じだった。
 「…そうだな…‘ロシア野郎’の夢を見ていたのなら、かなり気分が悪いかもな。」
 痛いところを突いてやる。
 「そうなんだ…。」
 瞬は、興味なさそうに頷くと、今まで力なくシーツの上に投げ出していた手を俺の肩に滑らせた。
 「…夢の続きは、二人で見ようよ。」
 囁きが鼓膜を擽った。
 「こうゆうのは昼向きの夢じゃないぞ。」
 「いいんだってば。」
 せっかく拾いかけた文庫本が再び床に落ちて、鈍い音が絨毯に吸い取られる。
 瞬と一緒に寝ていた白猫が迷惑そうにベッドから飛び降り、長い尻尾を振りながらドアの隙間を
 すり抜けていった。


〓ENDE〓


アホテキスはこれがラストです;
この先、もう少しマトモなテキストが載せられると思います;(…たぶん)

20030508...by.che*myun



夢のつづき
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