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:::Nebula†Garden…ホガラカDiary:::

◇スーベニールvsスーベニール


【二次創作書庫…ikki*shun】

...スーベニールVSスーベニール...ikki*shun


  プカプカと、白鳥のオモチャが湯船の上を渡る。
 瞬は、散り散りになった子供たちを指で突付いて、親鳥に寄せてやった。
 日本でよく見かける‘可愛い’黄色いアヒルのオモチャとは違って、どこか奇妙だ。
 子供たちは灰色の羽に黒いくちばし、親鳥も、水面でバランスが取れるようにか、
 白鳥にしてはやけに首が短かかった。西洋人の‘可愛い’という感覚が理解できない。と瞬は思う。
 「氷河も…やっぱり面白いや…」
 先月、氷河が日本に戻って来た時に貰ったシベリア土産。
 思い立って浮かべてみたら、やっぱり変だったのだ。
 首まで湯船につかって、その奇妙な白鳥のオモチャを改めて眺めてみると‘みにくいアヒルの子’が4羽。
 不安定に揺れながら頼りなげに泳いでいる。
 運命に翻弄されながらも、なんとか今まで生き延びてきたけれど、いつ又、戦いの日々が訪れるのかと、
 落ち着きなく日々を過ごす僕たちのように…と、瞬はボンヤリと考えた。
 ううん…僕だけかな。とも。戦う事が怖いのではない。
 守るべきアテナを、世界を、守りきれなかったら…という恐怖。
 その重責に押しつぶされそうになることが時々ある。
 「親鳥に‘飾り尾羽’を着けて兄さんにしようかな…で、後の4羽は、星矢と紫龍と氷河と
  …僕かなぁ…でも、白鳥だから大きいのが氷河?」
 瞬は、重たい考えを払いのけようと、おどけた配役をそれぞれに割り当ててみる。
 揺れながら向ってきた‘氷河’のくちばしが‘ツンッ’と瞬の唇を啄ばんだ。
 「うわっ!ダメだよ氷河;;;」
 「…お前、何やってるんだ?」
 一輝が、バス・ルームの戸口に腕をかけて、久々に会う弟の奇行を眺めていた。
 相当の呆れ顔で…。
 「に、兄さん!?何でいっつも予定通りに帰って来てくれないんだよっ!」
 思いも寄らぬ一輝の登場に瞬は動揺し、水没しそうになりながら兄を振り返る。
 「‘予定は未定’になりがちの仕事なんだから仕方がないだろう。」
 戦いのさ中でも日常でも、神出鬼没は治らないらしい…。
 「それより、そんな気持ちの悪いモン浮かべてないで、こっちにしろ。」
 一旦姿を消した一輝は、ガラス瓶の蓋を捻りながら戻ってきた。
 英語ではない、難解な文字のラベルが怪しげなその瓶の中から、粒子の粗い薄紅色の粉が降ってくる。
 「何!?なにこれっ!…あ、良い匂い。」  清涼感と酸味の混ざり合ったゼラニウムの香りが立ち上る。
 「死海の塩だ。よく混ぜろよ。」
 粗目の塩を溶かそうと、瞬が必死に湯を掻くと、大荒れの水面で白鳥達が回ったり
 ひっくり返ったりの大騒ぎになった。
 瞬はひっくり返ったひとつを摘んで、また浮かべてやる。
 「僕がコレかな。」
 しかし、決して沈んでしまうことはない。

 「何があっても、お前は俺が守ってやるから大丈夫だ。だから、世界もアテナも心配ない…安心しろ。」
 そう言いに戻ってくると、一輝は今度こそ本当にバス・ルームから姿を消した。

 =END=

[2005/10/08]...by.che*myun



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