カテゴリ:本、雑誌、記録
2025年2月21日付、日本経済新聞朝刊の文化欄に、次の見出しがありました。
「穴太衆、伝統の石積みを今に ◇「石の声聞く」城郭造りの職人集団、堅牢な野面積みを現代建築にも継承◇ 粟田純徳(あわたすみのり)=粟田建設社長 私は中学生の時、司馬遼太郎さんの歴史小説「国盗り物語」を皮切りに、同氏の本を沢山読んできました。その中で「穴太衆:あのうしゅう」が城の石を組んでいく話が多く記載されていたので、とても興味を持っていました。 日経新聞の記事ですが、穴太衆の末裔である粟田純徳さんの文章が掲示されており、一部を紹介します。 ーーーーーーーーーーーー 日本の城郭造りに革命をもたらしたとされる織田信長の安土城。そこで堅牢な石垣を築き、その名が広く知られたと伝わるのが、比叡山山麓の大津市坂本地区に拠点を置く石工集団「穴太衆:あのうしゅう」である。粟田建設はその末裔であり、私は江戸初期に創業した初代から数えて15代目となる。 ~ 祖父は13代目で人間国宝になった万喜三(まきぞう)。私は小学生のころから、城壁の修復現場に連れられ、石積みの技術を間近で見ていた。40年ほど前、中学を卒業すると祖父に師事。大学を出ていた14代目の父、純司(じゅんじ)には反対されたが、一刻も早く家業を学びたいとの気持ちは揺るがなかった。 石積みの技術には石を加工し隙間を減らす「打込ハギ」などもあるが、穴太衆が得意としたのは石を加工せずに積む「野面(のづら)積み」だ。表面から3分の1ぐらい奥のところに重力がかかるように石を置くことで、比類のない堅牢さを発揮する。 野面積みでは、大きさも形も異なる石の中からどれを選び、どの順番で積むかが問われる。学び始めのこと「次はその石」という祖父の指示に従って積んでいくと、次々にピタッとはまっていくのには驚かされた。 家では孫にやさしいおじいさんだったが、職場では「見て盗め」と何も教えてもらえず、時には罵倒されることもあった。ただ「石の声を聞く」ことの大切さは徹底的にたたき込まれた。祖父と一緒に働いたのは5年ほどだが、私にはかけがえのない修業期間となった。 城の石垣修復でやはり印象深いのは祖父、父、私と3代で手がけたものだ。例えば「天空の城」として知られる竹田城跡(兵庫県朝来市)。祖父が率いていたころは、現地にプレハブ小屋を建て一家で住み込んだ。観光地として有名になってからは、作業できるのは冬季だけとなった。豪雪地帯なので、初日は除雪作業で終わってしまう。 淡路島にある洲本城跡(兵庫県洲本市)の石垣修復も3代で担当する。使われている石は竹田城跡に比べると小ぶりだ。史跡での石採取はできないこともあり、似た石の入手には苦労している。 ~ 2022年にはうれしい出来事があった。穴太衆と鉄砲職人の集団、国友衆が対決する今村翔吾さんの歴史小説「塞王の楯(さいおうのたて)」が第166回直木賞を受賞した。大津在住の今村さんから「穴太衆について教えて」と言われ、取材を受けていただけに喜びもひとしおだった。裏方の存在に光を当ててくれたことに感謝している。 ーーーーーーーーーーー 上記の記事を読んだ後、すぐに本屋で「塞王の楯 上/今村翔吾/集英社文庫/集英社」と「塞王の楯 下/今村翔吾/集英社文庫/集英社」の2冊を購入し、一気に読みました。 京極高次が城主の大津城が舞台で、知恵を出しながら石を積むことで城を守る穴太衆と、最新の鉄砲や大筒で城を攻撃する国友衆の対決が詳しく書かれており、一挙に引き込まれました。 興味のある方は是非読んでください。 ーーーーーーーーーーーー 2025年2月21日付、日本経済新聞朝刊の文化欄。 「穴太衆、伝統の石積みを今に ◇「石の声聞く」城郭造りの職人集団、堅牢な野面積みを現代建築にも継承◇ 粟田純徳(あわたすみのり=粟田建設社長) ![]() ↓ 石に話しかけるように積んでいく。(2021年) ![]() ![]() ![]() ーーーーーーーーーーーーーーー ↓「塞王の楯 上/今村翔吾/集英社文庫/集英社」 ![]() ↑ 時は戦国。炎に包まれた一乗谷で、幼き匡介は家族を喪い、運命の師と出逢う。石垣職人”穴太衆:あのうしゅう”の頂点に君臨する塞王・飛田源斎。彼のように鉄壁の石垣が造れたら、いつか世の戦は途絶える。匡介はそう信じて、石工として腕を磨く。一方、鉄砲職人”国友衆”の若き鬼才・国友彦九郎は、誰もが恐れる驚異の鉄砲で戦なき世を目指す。相反する二つの信念。対決の時が迫るー。 第166回直木賞受賞作。 ↓「塞王の楯 下/今村翔吾/集英社文庫/集英社」 ![]() ↑ 太閤秀吉が病没した。押し寄せる大乱の気配。源斎は、最古の仕事だと言い残し、激しい攻城戦が予想される伏見城へと発った。代わって穴太衆(あのうしゅう)・飛田屋の頭となった匡介は、京極高次から琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。立ちはだかるは、彦九郎率いる国友衆と最新の鉄砲。関ヶ原前夜の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける! 最強の楯と至高の矛、二つの魂が行き着く先はー。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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