金銭的に恵まれた商売
私が50代の時に購入して読んだ本があります。「50代からの選択 ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか/大前研一/集英社文庫/集英社」です。60歳で定年退職をし、再雇用になる段階で、もう一度読み直しました。サラリーマンをしてきた私が、一番印象に残った部分を紹介します。ーーーーーーーーーーーーーーーーp97~101『金銭的に恵まれた商売』サラリーマン最後の10年を考えてみたい。まず、最初にあなたがすべきことは、会社に対しての無限の感謝である。会社は、さしたる個性もなく、凡庸な才能しか持ち合わせていないあなたに、月々きちんと給料を払い続けてくれたのである。そのおかげであなたはこうやって平穏無事に今日まで過ごすことができた。そのことに対して、心からありがたいと思わなくてはいけない。僕は、学生時代音楽家になろと思って、明けても暮れてもクラリネットという日々を過ごした人間なので、音楽家になった友達が何人もいる。彼らはみなすごい才能の持ち主だ。中には10代でコンサートを開き、すげえ、すげえ、天才だ、と騒がれた過去を持つ者もいた。だが、音楽家の世界は厳しい。そんな彼らも、演奏会だけでは食えず、1レッスン5000円から1万円のレッスンを週に何レッスンもこなして、生活費を稼いでいる。世界で一流よりちょい下くらいの音楽家でさえ、日本では6000円でチケットを売って600人のホールをいっぱいにできない。海外の交響楽団の常任指揮者の経験がある一流の指揮者をよく知っているのだが、そんな彼でも収入的には年俸1000万円もいっていない。すばらしい能力の持ち主が、鍛錬の日々を経て音楽家になった、にもかかわらず、40歳、50歳の段階ですでに演奏活動だけでは食えないのが音楽家の世界なのだ。で、こういう人のピークの時期を振り返ると、やっぱり30歳くらい。以後ずっと、初心者のレッスンをしながら、小さなコンサートをNPO的にやったり、学校に行って演奏してあげたり、といったことをやっている。スポーツ選手も似たり寄ったりだ。若いころ、トップクラスのスキーヤーとしてならした知人がいる。彼は今インストラクターとして引っ張りだこだが、そんな彼でさえ年俸500万円にも満たない。スキーのインストラクターは、たいてい夏になると、大工をやったり板金をやったり、トラックの運転手をやったりして稼いでいる。夏場は、日本と季節が逆さまのニュージーランドに行くという人もいるが、いずれにせよ、生活が安定しないことこの上ない。彼らと比べると、サラリーマンがいかに金銭的に恵まれた商売であるかがよくわかる。サラリーマンなんて突出した才能なしでもなんとか務まる商売だ。特別な才能なしでもできる商売で、才能にあふれた一流の音楽家や傑出した能力を持つプロのスポーツインストラクターと同じくらいの給料を稼いでしまう。だから、あなたは自分がいかに恵まれた環境にあるかを、思い知るべきだ。オレはこんなにいい人生を送るほどの人間じゃなかった、それだけの価値も能力もなかった。にもかかわらず、会社はオレに25年以上も仕事を与え続けてくれた。給料をくれる割には評価してもらえなかったし、とくに優遇された覚えもない、どちらかと言えば冷遇されてきたような気がするけれども、とりあえずクビにされることもなく、ここまでやってこられた。これがいかにラッキーなことか。もう、感謝、感謝、無限の感謝を会社に捧げるべきなのだ。会社がオレを認めてくれない、評価が悪い、出世させてくれない・・・、と文句タラタラの人がいるが、ちょっと考えてもらいたい。音楽家は、チケットが売れないことを他人のせいにするか? コンサート会場がガラガラだったとき、エージェントが悪かったとか、「チケットぴあ」がちゃんと売ってくれないとか、言っているようでは音楽家は務まらない。魅力あるコンサートを開いて客を集められないのは、自分以外のだれの責任でもない。プロの世界とはそういうものなのだ。社長がオレの事を誤解しているから出世できない、なんて言ってるヤツは、僕に言わせれば、木にボールをぶつけたゴルファーが、こんなところに生えているからぶつかったではないか、と木に文句を言っているようなものだ。だから、もうそういう人生はやめなさい、と僕は言いたい。閑職に追いやられて、会社を逆恨みし、かといって表立って行動する勇気がないものだから、「2ちゃんねる」かなんかで、グチャグチャ文句を言い始める。サラリーマンというものは、ゆめゆめそんなことをやってはいけない。文句を言いたくなったら、スキーのインストラクターや音楽家などプロの厳しさを思い出せ。そして、いかに自分が恵まれた大名に使えているのかを噛みしめるべきだ。やっぱり侍としては大名に足を向けてはいかん、ということなのである。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー自分を振り返ってみると、技術、能力もなく、会社に全然貢献してこなかった36年間のサラリーマン人生でしたが、こんな私でも給料をもらい続けることができたのは、やはりありがたい事であったと思います。ーーーーーーーーーーーーーー↓ 50代からの選択 ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか/大前研一/集英社文庫/集英社