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ごった煮底辺生活記(凍結中

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無法の学生記 「支配者」 03

     無法の学生記 「支配者」 03

 チビスケ変態のくせして綺麗な顔してる変な奴、無法って言ったかしら。
 転校初日を台無しにした張本人。ゆるせないわ。
「どこに連れてく気よ」
「…とりあえず体育館裏、だな」

 どき。体育館裏ですって? なによこの変態、わたしとケンカでもする気?

 あったまにくる。チビのくせに。制服だろーが、スカートだろーが、もういいわ。
そっちがその気なら柔道部の腕前を味わってもらうわ。

 変態の後について誘われるまま、校庭に出て青い屋根の体育館の裏へ。
 体育館の壁と高いコンクリートの壁に挟まれて薄暗い。

 ん? おかしいわ。陰に、体育館の陰に入った途端、なんだか寒い。季節が一気に
冬に…いえ、南極にでもなったかのような……もう花見も終わる季節なのに。
「ぶわっくしょんっ」
 思わず、くしゃみ。それをまっていたかのように、チビスケが振り向いた。
「寒いか」
「寒いわよ…なんか変よ、ここ。いえ、この学校、みんな変だわっ」
「…ま、いいや」
 よくないわよ。
「一つ、いっとく。俺はチビじゃない」
 変態はわたしを見上げながら、右手ひとさし指を立てた。

 こうして見おろすと…あらためてわかる。こいつ、小学生料金でバスに乗れるわ。
 変態でなければ美少年ってところね。眉毛は太めだけど。
「わたしをあんな目にあわせておいて…」
 ん、んん? 変態の顔がない。あるのはスラックスの黒ベルト。
「ほれ、どうだ? 俺はチビか?」
 ん、んん?? 声が頭の方から…んんんんんんんんんんんっ????
 チビスケがわたしを見おろしている…お、おっきくなった??
 小学生が…ビックサイズの高校生になった……。
 な、なに? なにがおきたの? こいつ、なに? 怪物? 妖怪??
 声がでない。足の感覚がなくなって、尻餅ついた。
 怪物は腰に手を当ててわたしを見下ろしている。
「…これでチビスケじゃねーって認めるな? ほれ」
 手がおりてきた。指も手のひらも、一応、人間だ。
「しょーがねーな! 腰でも抜かしたか?」
 わたしは腕をつかまれ、立たせられた。あれ…
「これからは、人を見てくれだけでチビスケなんて言うなよなー」
 声は下から…もどってる。小学生に。チビスケに。
「後は理科室の件だな! あれは助けてやったんだぞ、恩知らずめ」
 さっきは、たしかにおっきかった。チビじゃなかった。
「まったく、たのまれなきゃ、誰があんなところにちょっかい出すかっての」
 見間違いじゃない。こいつ、背の高さが変わったんだ。
「あんた…何者なの?」
 その時、チャイムが鳴った。六時間目がはじまる!
 とりあえず、わたし達は教室に走った。
「俺は無法。無法文太って覚えておきな」
 走りながら…無法…くんは言った。
 無法文太…。
 チビスケじゃないかもしれないけど、怪物で変態なんだってのはわかったわ。

 すでに授業が始まっていた。六時間目は…数学だった。
 わたしは数学が苦手だ。この変な学校の数学も普通と変わらなかった。残念。
 無法くんのおかげですっかり忘れちゃったけど、理科室ってなんだろ?
 理科室は、理科の授業で、実験なんかをする教室です。
 普通はそう。でも、この学校では違うみたい。
 幽鬼先生が言っていた。一年前から消えちゃった? 理科室が?
 目をつけられる? 理科室に?
 わたしはそこで縛られていた…無法くんに。
 なにがなんだか、さっぱりわかめラーメン。
「では、ここを新田、答えてみなさい」
 やっぱりうまいぞソース焼そばって、は?
「新田、この問題の答えだ」
 さ、さされた!! さされちゃった!! 転校初日だってのにさされた!
 問題は黒板に…なにも書いてない!! 教科書? 何ページのどこ?
 なんでわたしをさすのよ、このペヤング先生!!
 顔が真四角で、白い、まるでコックさんのような服を着てるからペヤング先生って
決めたのだ。さっき。おかげでカップラーメンの想像したじゃないの!
 あ~~~こんな目にあうのも、あんたせいよ! 無法くんって、あ~こいつ、
寝てる~~しんじらんないーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
「どうした、新田?」
 しかたない、ここは正直に…まずは立ってから…
「すいません、わかりません…ん?」

 その時、教室のドアがノックされた。
 ガラッと扉があくと、そこには白衣を着た男性がいた。
 腰までかるほどの黒髪、スラッとして整ったスタイル、キリリとした…そう、
美形としか言い様のない顔、切れ長の目。黒ぶち眼鏡がちょっとマヌケだけど。
「授業中、失礼します」
 うわ、なんだろ。こんな人、いるんだ。先生? わ、わたしを見た。
「やはり、ここにいたか。貴重な実験材料にして、この世の支配者よ」
 は?


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