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ごった煮底辺生活記(凍結中

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無法の学生記 「支配者」 04

無法の学生記 「支配者」 04

「まて、理科室」
 は? ペヤング先生、なんですって?
「角田先生、これは貴重なチャンスなのです。邪魔をしないでいただきたい」
「そうはいかん」
 いつのまにか、黒板の前でペヤング先生と白衣の男性が向き合っている。
 今、ペヤング先生、理科室って言ったような…。

「理科室だ! 理科室! 理科室よ!」
 え? クラスメイト達が叫んだ。理科室? あの男性が??
「新田さん、無法くんのそばから離れちゃダメよ!」
 はあ、なにが、いったいなにが起きたの?
 クラスのみんなが立ち上がり、席をどかして白衣の男性の回りを囲む。
 席についてるのは、わたしと…寝ている無法くんだけ。
「これはこれは。ずいぶんクラスメイト思いな事でー」
「うるせー人さらいめ!」
「そーよそーよ!」
「新田さんを渡しはしないわ!」
「あの…みんな、どうしたの?」
 わたしは状況を把握できず、思わず口にしてしまった。

 みんながわたしを見た。
「新田さん、あなた理科室に目をつけられたのよ?」
 そう、理科室に目をつけられた。それで、わたしはみんなに村八分にされた。
 ちがうの?
「あー、お前たち。生徒にまかせるわけにはいかん。席にもどりなさい」
 ペヤング先生がみんなに言った。
「そんな、僕たちは仲間を守りたい」
「まずは教師の仕事、という事だ。今は無法がダウンしてるしな」
 みんなの視線が、眠る無法くんへ。
「そう、生徒諸君には危害は加えられぬよ。理科室の名にかけて。さがりたまえ」
 白衣の男性が言う。理科室の名にかけて?
 みんながしぶしぶとクラス後方へ、わたしの方へ下がった。
 黒板の前で再び、ペヤング先生と白衣の…理科室…? が対持した。

「どうしても邪魔をされるか?」
「新田には問題を解いてもらわねばならない」
 教室が緊張した空気に満ちた。でも、わたしはどうしたらいいの?
 なにがなんだか、ほんとにわけわからないよ!
 わたしの席をかこむクラスメイト、みんなに聞いてみよう。
「あの…いったい、どうしたの? わたし、理科室に目をつけられて、みんなに
 きらわれたんじゃないの?」
 セミロングの黒髪がかわいい女子生徒が振り向いた。
「…ごめんね、さっきは理科室って聞いたから…ちょっと気負っちゃったのよ」
「僕も。ごめん。でも、君はもうこのクラスの一員なんだから」
「そうそう、俺たちが守るのは当然さ」
 まだ、名前も知らないみんな。わたしを守ってくれる?
「あ…ありがとう…でも、理科室って、あの人? なんなの?」

「もらったぞ、理科室!」
 その時、声が。ペヤング先生のだ。みんなも黒板の方を向いた。
 ぎょ。ペヤング先生の髪の毛…いえ、服の間からも毛が伸びて理科室に走った。
 毛が理科室の白衣を取り巻いてゆく。

「おお、角田先生のイカスミ・スパゲッティ!」
 おお、イカスミ…麺攻撃?
 わかめラーメン攻撃ねって…なんなのあれ?
「私の毛はNASAの糸より丈夫なのは知ってるだろう、理科室」
「…この世界の…ですがね」

 ビィィンと音。なに?
「なっ?」
 理科室の体に巻き付いていた髪がハラハラと落ちている。
「別の世界のNASAが開発したはさみ。よく切れます」
 理科室の両手に…ギラリと長めの刃のついた…そう、通信販売でよく
見るような高枝ばさみが。
「お前、いつのまにっ」
「わが、”さまよえる理科室”をなめないでいただきたいですな。さらに」
 理科室の白衣の裾からなにかが。

 瞬間、はげしい光といっしょに教壇が爆発。強い風。すごい音。
 なに? なにが起きたの? 煙でよく見えない。耳がよく聞こえない。
 教室が煙でいっぱいになった。
「角田せんせいっ! せんせい! 角せんっ!」
 みんなが叫んでる。いったいどうなったっていうの?
 ん、耳が治った。

 煙も晴れていく…の中に人影が。
 白い、白い影。長い黒髪にも顔にもなにもなってない。黒斑眼鏡の奥から
切れ長の目がわたしを見ている。
「角田先生は滅びた」
 ほ、滅びた? し、死んだって…事? ペヤング先生が?
「り、理科室、角せんに、なにしやがったんだ!」
 みんながわたしの前に立つ。理科室に立ち向かっている。
「個人用小型誘導ミサイル。局所的にだが1000度の熱を放射する」
 ミ、ミサイル?
「このような物が、コンビニで105円で売っている世界もあってね」
 なに? なに言ってるの?
「さあ、生徒諸君。彼女を渡してもらえるかな?」
 白衣が近づいてくる。みんながかまえる。
 角田先生から毛がでて、爆発して、理科室がミサイルで、いま近づいてくる。
「~いいかげんにしてよっ!!」
 みんながわたしを見た。理科室も。もうやだよ!
「もう、やめてよ! こんなの冗談なんでしょ? それとも夢? 悪夢?」
 もうやだ! こんなのありえないし、普通じゃないよ! 夢だよ!

「…現実だ」
 横から声。ねぼけたような、でも、不思議とはっきり聞こえる声。
「夢でもねえし、冗談でもねえ」
 さっきまで寝ていた…無法…くん。
「今まで、どんな世界で生きてきたか知らねえが…目の前をみてみな」
 理科室がゆっくりと近づいてくる。
「おお、無法! 復活したか?」
「新田さん、だいじょぶ! あたしが守るから!」
「理科室、俺の技、うけてみるかあ!」
 でも、その前に立ちふさがるみんな。クラスメイト達。
 どうして?
「みなさん、邪魔はしないでもらいたいのですがね」
「うるせ! くらえ!」
 男子生徒が走った。飛び蹴り…でも、理科室の前で跳ね返った。
「ていっ!」
 女子生徒が投げた。シャーペン? でも、理科室の前で曲がり、それて床へ。
 みんなが理科室に向かっていく。
 どうして? どうして、転校初日のわたしを…わたしのために?
「わ、わたしのために? みんなっ、なんで?」
「理由…? 簡単じゃねえか」
 無法くん…いつのまにか、わたしのそばに立っている。
「お前がクラスメイトだからだよ」
 あ…
「…それだけ?」
「ああ、みんなはな。俺は頼まれたんだけどよ」
 頼まれた?

「最後は…無法くん、あなたですか?」
 みんなが…みんなが床に倒れてる!
「ああ、邪魔させてもらうよ」
 無法くんが…今度は無法くんが、理科室の前に…ん? すこし、ふらつい
ているような?

「君ですね? 今朝、彼女をさらっていったのは」
「ああ、やぼ用でね」
 長身の理科室の前に立つと、やっぱり小さく見える。
「…でも、今の君は万全ではない…ですね?」
「ああ、ちょっと”力”を使っちまってね」
 力…使った?
「ミスですね。無法文太ともあろう者が」
 裾が光った? ミサイル!?
「しまった!」
 また爆発! 無法くんっ!?
 あ…


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