[月曜日の嘆き]
跳び箱って、あるよね？
何段飛べる？
え、50段？ 君、今すぐ一緒にTV局へ行こう！ 悪い思いはさせないよ！
うへへへへへ、筋肉番付やらの番組に出ればスーパースターさ！
一緒に金儲けしようぜ！
えっ、僕は何段飛べるかだって？
ふふふ、驚くなよ？ 4段だ。
おい、ずっこけないでくれ。
これには深い事情があるんだ。
実は、僕は跳び箱には苦い思い出があってね。トラウマになってるんだ。
たぶん、今でも3段以上は飛べないね。
よし、話そうか。その苦い思い出を。
それは小学校の話さ...。
それは小学校の体育の時間であった。
たしか、3年生か4年生の時だったと思う。
学校の校庭で跳び箱を飛ぶのだ。
クラスで列を作り、順番にとんでいく。
1段、2段、3段...
小学生だと、そろそろ手をつかなければ飛べない高さか。
僕は体育が苦手だった。
当時の僕の入場テーマは「ホネホネロック」を歌われるほど、骨と皮の少年だった。
今の肥えに肥えた体からは想像できないようなガリガリ君だったのだ。
100m走もいつもビリだった。
そんなわけで、体育の時間はいつも憂鬱だったのだ。
おお、憂鬱という感じを簡単に表記できるとは感動だ。
...話を戻すと、その日の体育の時間も、僕の心は真っ暗だったのだ。
そんなわけで、跳び箱をとぶにも覇気が無くダラダラグズグズやっていたのだろう。
そんな僕に天罰が下るのだ。
跳び箱は4段になった。
僕に順番が回ってきた。
いつもは飛べる高さのはずだった。
そんなわけで、惰性のまま、ボ～～っとしつつ、跳び箱に走った。
踏み切り台を踏み込み、縦に置いてあった跳び箱の一番奥あたりに両手を置く。
ボキリ
激痛が右手に走った。
僕は右腕をつかんで苦鳴を上げた。
両目からは涙が溢れた。
そう、右手の手首から少ししたあたりから、へんな曲がり方をしていたのだ。
同じクラスのヤツラは異変に気がつき、こんな事をいった。
「そのくらいで泣くなよ～」
今も耳から離れないあざけるような言葉。
先生の車か家族の車で行ったのか忘れたが、接骨院に急ぎ連れて行かれ、
レントゲンをとったところ、右腕の二本ある骨が両方とも、ポッキリ折れていた。
僕は骨折をはじめて体験したので、ショックを受けたのを覚えている。
よくわからないお湯に腕をしずめ、冷たい灰色の粘土のような物を腕に塗り、
ギプスで固定され、右手は包帯グルグル巻き状態になったのだ。
それからが大変だった。
首からかけた包帯で右腕をつるした状態で学校に通い、午後からは接骨院に通う
毎日がはじまったのである。
腕の骨がくっつくのに...だいぶかかった記憶がある。
完治しても、雨が降る日などに、よく右腕の折った場所が痛むのだ。
そんなわけで、今日も右腕がちょっと痛いんだ。
それからというもの、跳び箱を飛ぶのが怖くなってね。
跳び箱前までダッシュできても、両手をつくところで止まっちゃうのさ。
はは、なさけないだろ？
そんなわけで50段飛べるというアンタがうらやましいんだ。
って、あれ？
いない...。
ああっ、あんな高いところに跳んで逃げてる！
