霊夢は鈴仙の妹

霊夢「もう、いやっ！」
霊夢「妖怪退治なんてもういや！　毎日弾幕弾幕、弾幕！　休む間もなく巫女の仕事！」
霊夢「それなのに誰も私を慰めてくれない……」
霊夢「紫なんてそれが博麗の役目だからとか云々かんぬん。皆私が苦しもうが感謝さえしてくれない！」
霊夢「いままで何も思わなかったけど、もうウンザリだわ！」
霊夢「どこにでも行ってやるんだから！」

霊夢「ここは、竹林？　いいわ、ここなら兎しかいない。誰の目からも逃れてのんびりしていられる」
霊夢「……眠い。最近きちんと寝ていないせいね」
霊夢「ちょっとおやすみ……」

鈴仙「今日もよく薬が売れたわ。これで善行を積めたことになればいいんだけど……」
鈴仙「ん？」
鈴仙「ちょっと」
霊夢「Zzz……」
鈴仙「ねえってば」
霊夢「……ん。うわっ、目赤い兎」
鈴仙「そんな所で寝ていたら獣に食われるわよ」
霊夢「いいわよ！　放っておいて！」
鈴仙「……そう」
霊夢「私が死んだって……どう誰も悲しまないわよ！」
鈴仙「……」
霊夢「さっさと行っててば！」
鈴仙「え、ええ……」

鈴仙「……」
鈴仙「やっぱり放っておけないわ。きっと何か悩み事でもあるのよ」
鈴仙「……」
鈴仙「引き返そう」

霊夢「ひっく……うぅ……」
鈴仙「……泣いてるの？」
霊夢「何よ！　何で戻ってきたのよ！」
鈴仙「気になって仕方がないわ。よくわからないけど、うちに来て」
霊夢「優しくしないでよ！　どうせ私なんて妖怪退治の道具にしか思われてないんだからっ！」
鈴仙「悪いけど、無理にでも連れて行かせてもらうわ」
霊夢「放して、放してよ！　なんで私に構うのよ……」

鈴仙「師匠、今晩泊めたい者がいるんですが」
永琳「へえ、ウドンゲが泊めたい人？」
鈴仙「竹林で拾った霊夢です。事情はわかりませんが、酷く落ち込んでいるみたいで放っておけなくて……」
永琳「いいわよ。姫には私から言っておくから、勝手にして」
鈴仙「ありがとうございます」

霊夢「ひっく……うぐっ」
鈴仙「霊夢、お茶淹れたんだけど……いる？」
霊夢「……飲む」

鈴仙「ねえ」
霊夢「何」
鈴仙「何があったの。聞かせてよ」
霊夢「何でもない！」
鈴仙「何でもない人が、自殺願望なんて抱くわけがない。何に苦しんでいるの？」
霊夢「どうしてつっかかるのよ！　気にしないでって言ってるのに！」
鈴仙「そんなの、苦しんでいるあなたを放っておけないからとしか言えないわ」
霊夢「私を？　私は何も苦しんでいないわ！」
鈴仙「霊夢、落ち着いて。会話が噛みあってない」
霊夢「私があなたに助けてもらう義務なんてないじゃない！　放っておいてって言ってるのに！」
鈴仙「権利はあるでしょう？　だから私はあなたを救ってあげたい。お願い、聞かせて。言えばスッキリするわ」
霊夢「……私なんて、誰からも気にかけてもらってないのよ」
鈴仙「？」
霊夢「私が異変を止めても皆知らん顔。いままでそんなこと気にしなかった。
　　　でもね、もうこんなの嫌。巫女の仕事背負って生きているのに、報われたことなんて殆どない。
　　　誰も私と仕事を終えた喜びを分かち合おうなんてしない！　誰も私を労してくれない！
　　　誰も『よくがんばったね霊夢。いい子だわ、お疲れ様』だなんて言葉かけてくれない！　もうウンザリなの！」
鈴仙「……」
霊夢「これでわかった？　満足した？　お茶ご馳走様、もう行くわ。もう二度と私に構わないで」
鈴仙「よくがんばってるわね、霊夢」
霊夢「え……」
鈴仙「お疲れ様、毎晩休まず妖怪退治して里を守っているなんて偉いわ。誰にも真似できないわ、そんな凄いこと」
霊夢「や、やめてよ……」
鈴仙「本当によくやっているわね、霊夢。本当に、お疲れ様霊夢……」
霊夢「優しくしないでって、言ってるのに！」
鈴仙「れ、霊夢！　そんなにきつく抱きしめたら苦しい……」
霊夢「どうしてあなたはそんなこと言うのよ！　そんなこと言われたら……言われたら、無性に涙が出てくるじゃない……」
鈴仙「霊夢、頭撫でてもいい？」
霊夢「……お願い」
鈴仙「可愛い可愛い霊夢。妖怪兎の私より脆いはずなのに、何倍も責任のある仕事をこなして。偉業だわ」
霊夢「そ、そんなこと……」
鈴仙「謙遜することないわ。いつもみたいに酒を呑んで、悪い奴らを倒したって胸張ればいいじゃない！」
霊夢「鈴仙……もっと強く抱きしめて。私今凄く寂しい」
鈴仙「いいわよ、今夜は傍にいてあげる。だから、もう自棄になったりしないで。辛くなったら、私に甘えてくれればいいから」
霊夢「鈴仙、ありがとう……」
鈴仙「霊夢……」

鈴仙「薬ー、八意印の薬はいかがー」
鈴仙「ん？」
霊夢「鈴仙！　鈴仙、鈴仙！」
鈴仙「わわ、そんな勢いよく飛び込んでこないの。受け止めるのも大変なんだから」
霊夢「えへへ、私また妖怪倒してきた！　褒めて、褒めて！」
鈴仙「あら、どんな妖怪なのかしら」
霊夢「えっとね、えっとね、とにかく悪い奴！」
鈴仙「じゃあお茶ついでに永遠亭に戻りましょう。それから話の続き、聞かせて」
霊夢「うん！　ねえ……」
鈴仙「わかってる。抱きしめて欲しいんでしょう？」
霊夢「あ、うん……」
鈴仙「お疲れ様、霊夢。いい子ね」
霊夢「……鈴仙！」

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