塔から出てきたお姫様
本屋で『ときめかない日記』というマンガが最初のほう少しだけ立ち読みできるようにしてあってありがたく読ませてもらったのだが、それがとても面白かったのです。その作者である能町みね子さんの自叙伝『オカマだけどOLやってます。完全版』(文春文庫)を読みました。ご自身の中学生~20代なかばまでをふりかえったものです。題名がちょっとあからさまでドギツイけれど(本屋さんのレジで、目にも留まらぬ早業でカバーを掛けてくれちゃったのは偶然か)、内容は自制がきいていて上品ですOL生活の場面には塔に幽閉されていたお姫様がひょんなことから開放されて一般社会で暮らしているようないじらしさがあります他方、半生記の部分は疾風怒濤でした。表現は淡々としているのだがはらはらしたのが、高校時代の友人と再会するところ。京都に住む友人にそのときはなんとなくメールで質問しただけで、別に会う気はなかったのだ。高校のときはけっこう男らしくしてたから、今この状態で女として会ったらかなりドン引きされそうだなーと思って。でも、彼はいきなり乗り気。「え、京都来てんの?じゃあどこかで会おうよ。俺んち泊まってけば?」というメールが返ってきた。能町さんは迷ったあげくに、思い切ってばらしちゃえ!と一か八かのメールを送信します。「じゃあ、どこかで会おうか?いちおー言っとくけど、オカマになっちゃったからよろしくね」そして帰ってきた友からのことば。「言うなよ! びびりたかったよ。晩飯何食うの?」おおお!ふ…ふつうだ!!! ふつうすぎる!よかった!友よ、ありがとう! 能町さんが文章家になってくれてうれしいなあ。マンガも読みたい。もっともっと楽しみをわたしたちに分けて欲しいと思います。