ヒトラー~最期の12日間監督:オリヴァー・ヒルシュビーゲル (ドイツ) トーク付き(映画評論家石子順さん)上映会で観ました。 すごい力作です。 ヒトラー最後の個人秘書であるトラウドゥル・ユンゲの視点から描く、ヒトラーやその側近たちの最後の12日間。 地下要塞でのヒトラーや側近が、あきらめや退廃、絶望におののく一方で、ソ連軍の激しい砲撃にさらされるベルリン市街では、子どもを含めた市民の命がどんどん失われていきます。 自分亡き後にドイツはない、と市民や兵士を省みないヒトラー。 ナチズムの失われた世界では子どもを育てられないと、わが子たちを自分の手にかける高官夫人… ドイツ人が初めて撮るヒトラーという、映画の歴史的問題作だそうです。 優しい人間的な顔と総統としての非情性。人間ヒトラーを浮き彫りにしています。 ヒトラーを演じきるのは、「ベルリン・天使の詩」のブルーノ・ガンツ。見事な演技ですが、そうとう精神的にきつかったようです。 ベルリン市は砲撃で破壊されていますので、実際の撮影はペテルスブルグで行なわれ、ドイツ兵のエキストラも、ペテルスブルグ市民が大勢参加したそうです。 第2次世界大戦の犠牲はソ連が1番多く、2600万人ともいわれ、ヒトラーによるペテルスブルグ(当時レニングラード)包囲戦での餓死者100万人といいますので、今回の撮影は、いろいろ感慨深いですね。 観ていて1番感じたのは、一人の誇大妄想に国中が乗っかった狂気ですが、そのツケは選んだ国民が払わなければならない、ということです。 映画の最後に、秘書ユンゲ本人が 「ニュルンベルグ裁判で、ナチの犯した恐ろしい事実を知った。でも自分には関係ないと思っていた。 けれど、私が秘書に採用された同じ年に、私と同じ歳の女性ゾフィー・ショルが反ナチで処刑されたと知り、間違いを悟った。 若かったことは理由になりません。きちんと目を開いていればわかったはずです」 と語るのがたいへん印象的です。最晩年の姿だそうです。 (ゾフィーとは映画『白バラの祈り』のモデルの女性です) 映画は彼女の手記と歴史家ヨアヒム・ヒストの『ダウンフォール』を元にしています。 ぜひ観る事をお勧めしますが、ドキュメンタリータッチで、長いので、ホームシアターではきついかも。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|