中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

2017/12/31(日)22:20

最後の夜に…③

追悼(53)

「最後の夜に…①」はこちら 「最後の夜に…②」はこちら 「猫は自分の逝く時を選ぶ…」 以前にも書いたのですが 過去に看取った子たちのことを考えると 私は、そう思えてなりません だからこそ、もし彼らが 待っているのなら… いちばん安心できる場所に戻すこと そして、普段と同じように 過ごさせること ただ、それだけを考えます 大切な子の最期だから…と 人はいろいろ考えてしまいがちです けれど… きっと、彼らは 特別なことは何も望まないでしょう 最期を迎える彼らに 私ができることは 彼らがどう選択するのかを 静かに見守るだけ それしかないと思うのです 「猫の部屋」に帰ってきたももは 確かに考えていたより 力がありました ふらつきながらも歩いて 棚の下で横になって 力強い目をこちらに向ける彼女 近寄ってきた猫たちには 「ただいま」の挨拶をするように 上体を起こして声をかけていました ただ、しばらくすると 少し疲れの表情も見えはじめて… 時々、彼女は か細い声で鳴きました 警戒でも、威嚇でもない 少し悲しげな鳴き声 初めて聞いた、その声は 胸が苦しくなるようなものでした 「もも、大丈夫だよ…」 いつも病院の診察台の上で 彼女を撫でながら言っていたように 繰り返すしかなくて… いったい何が大丈夫なんだ… どうして、いつも自分には こんなことしかできないのか… 見守るしかないとわかっていても 悔しくて、悲しくて どうしようもなくて… けれど、ももは 私が声をかけるたびに 鳴くのを止めました あの時、彼女が どういう気持ちだったのかは わからないけれど… しばらくしてウトウトし出したももの 少し浅いけれど落ち着いた呼吸 眠そうに目を細める表情 もし、ほんの少しでも 安心できたのなら良かった... そう思いました 翌日、朝早く 「猫の部屋」に行った私を ももは、昨夜とは違う場所で 迎えてくれました 夜中に移動したのでしょう 作業場から真正面に見える棚の下 毛布のいちばん端っこで 彼女は横たわっていました そっと身体に触れると ぴくりと反応して目をあけたもも そして、また あの悲しげな声で鳴きました 名前を呼びながら あまり体温の感じられない身体を 氷のように冷たくなった手足を 何度も撫でました 昨日よりも弱くなった呼吸 焦点が合わなくなる視線 目に見える皮膚はどこも真っ白でした きっと、もう彼女は この場所から移動することはない… そう思いました 不安そうに鳴くのは たぶん、目が見えなくなってきているから まだ、時々はしっかり目をあけて 見ようとするけれど 明らかに昨日よりも衰えていたでしょう ただ、何度か試してみて やはり声をかけながら撫でると ももは安心したように 鳴きやみました いつも一緒だった猫たちの声や そばにいる私たちの声 「猫の部屋」に暮らして 毎日、聞きなれていた数々の音は ももを安心させられたでしょうか 自分に触れてくる たくさんの手のぬくもりは 彼女には初めてだったけれど… どれだけの思いが込められているか ももは感じていたでしょうか 夜になって ひとり、またひとりと お当番さんたちが帰っていって… 最後は、私だけになりました その少し前には 横たわった姿勢から うつぶせになったもも 弱い呼吸を繰り返す彼女の身体は 時々、ぴくりと動くようになっていました ああ、きっともうすぐ ももがいなくなってしまう… ずっと泣けなかったのに ひとりになって 彼女の小さな痙攣を見た瞬間 涙が溢れてきました 不思議なことに それまでずっと棚の上にいた ももと仲良しだった猫たちが降りてきました ゲンさんは、私の前に来て 大きな声で鳴きました まるで遠吠えするかのように 何度も何度も鳴いて… 一生懸命、何かを訴えているかのようでした そんなゲンさんを 私の前に座ったくーちゃんは 静かに見つめていました そして、リリーは 少し離れたケージの陰から 私の顔をじっと見ていました 「もも、まだ頑張ってるよ…」 「もう動けないし、身体ぴくぴくするのが増えてきた…」 司令塔Aさんに 写真とメッセージを送りながら ももを撫でていた時 彼女が少しずつ、少しずつ 棚の下から前に出てきていることに 気付きました もう手足には力がなく 身体を支えることもできないのに… 顔が見えないほどうつむいたまま ほんの少しずつ、身体を引きずるように 棚の下から出ようとしていて… そして、かなりの時間をかけて 棚の下に重ねて敷いた毛布の上から フリース一枚だけの床の上に 出てきたのです 「少しずつ前に出て来たから疲れたのかな…」 「手と足、空で動かしてる…」 横たわってしまった彼女は もう、うつぶせになることはなく 目もほとんど閉じた状態でした ただ、ゆっくり… ゆっくり手足を動かしていました まるで歩くように、前へ前へ… 「それは…虹の橋を渡るために歩いてるんやで」 Aさんから届いたメッセージには そう書かれていました それが京都方面への 最終電車30分前のこと 硬い床が痛くないように ももの身体の下に毛布を差し込んで 上にフリースをかけました もう横たわったままで 手足を動かすこともなく 弱い呼吸を繰り返すだけだったけれど… まだ、ももは ちゃんと私のそばにいました 「もも、ごめん…ごめんね…」 彼女の痩せてしまった背中を撫でながら 私は、そう言っていたと思います 部屋を出る直前まで 何度も何度も… その時、動かなかったももが ゆっくりと腕を伸ばして 頭を撫でていた私の指に 自分の手をかけてくれたのです うっすら目をひらいて ほんの少しだけ 力が込められた肉球 『もう大丈夫…』 いつも私が言っていたのに… あの時、彼女から そう言われた気がしました それがももと過ごした最後の夜でした 「中之島公園猫対策協議会HP」 web@nakanoshima-cats.com 「中之島公園の猫たち」 nakanoshima_cats@yahoo.co.jp   何とかギリギリで 書き上げることができました もも、ありがとう… 大好きだよ…   猫 ボランティア・保護活動ランキングへ 人気ブログランキングへ

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