ちびねこと読書

[あいかわらず読書] カテゴリの記事

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• 活字中毒のままやんかーー

  活字中毒からの脱却！を年始の目標に掲げたものの･･･あぁ、今のところ例年同様、いやむしろ速いペースで本を貪り読んでいる何だか「禁じられたこと(この場合自分で禁じているだけだが)」って意志に反して手を染めてしまうのである･･･と開き直ってるぐらいなら年始の日記を消してしまってなかったことにしようか数週間前「再来年の大河の配役決まる」というニュースを見て(この大河は絶対見ないけど)、ふと借りてしまった「坂の上の雲」(全８巻)。あぁ、司馬遼太郎の作品は麻薬だ････。この間長い長い日露戦争がやっと終わって「完」の字が現れた。今や誰も信じちゃいないけれど、それでも一応「活字中毒からの脱却」は引き続き生活目標にすることとする･･･。この春はルックス＝一見読書なんて縁のなさそうな「きれいなお姉さん」ならぬ「小ぎれいなお姉さん(きれいな、はいくらなんでも余りにおこがましすぎて)」を目指し、水面下でバリバリと動くこと。 

  2007.02.13

• 妊娠にエス○ムに･･･正月早々なにやってんだか

  今年最初の日記･･･といっても結局本のことになってしまう(笑)年末に多量に借りこんだ本の山。おそらく全部は無理だろう･･･と思っていたが今のところ、一冊を残して完読。己の多読振りに少し怖気づいたりもする活字中毒からの脱却･･･心がけねば。その中で印象に残った作品は「妊娠小説」(斎藤美奈子)。「妊娠(ここでは主として婚外妊娠)」を扱った古今の文学作品を取り上げ色々な切り口から論じているが、語り口は軽妙にして内容はなかなかに味わい深い。妊娠とは一見女性が語りの専売特許を持つかと思われるようなテーマなんだけれど、それを扱う作品とて実際は男性本位なものばかり。文学界とて所詮圧倒的に男性支配の世界なのです。もう一冊「谷崎潤一郎集」で「吉野葛」や「春琴抄」を再読。「春琴抄」はこれぞ”Ｓ○”の教科書(うざいトラバを付けられるのが嫌で敢えて一文字伏せてみたけれど･･･)！鞭や蝋燭やピンヒールはなくても本人達には至福のＳ○関係。文章は充分に堪能するも究極の愛のかたちにはやはりドン引きしてしまう私はどうやら全うな嗜好を持つ人間らしい

  2007.01.03

• レディー・ジョーカー･･･ふたたび

  年末年始に読み倒す本を図書館で借りてきて、一番始めに手をつけた本が「レディ・ジョーカー」だったのだが、余りに強烈で読み終わった今ちょっとした虚脱状態(笑)上下巻で１０００頁あろうかという本を勤めの合間も含めて１週間で読みきったのはひとえにこの本がすごいからです。内容、心理描写、その他諸々この小説を構成する全ての要素が読者を圧倒してる。実は７年ほど前に一度この本を手にしているのだけれど、そのときはこれほどの強い気持ちを感じなかった記憶がある。でもあの時から７つ年を重ねて読むと、こんなにも受け止め方が違うものかな、と少し驚き。･･･私も多少は精神的に成熟した、というしるしだろうか(笑)

  2006.12.24

• 年末年始に読むぞ～･･･のラインナップ。

  年末年始用に借りこんでいる本のタイトルだけ羅列しておこう。１．レディー・ジョーカー　読了　２．バスジャック　三崎亜紀 ･･･途中まで読んでいるが、私どうもこの人の作品とは相性が良くない予感(笑)　３．妊娠小説　斎藤美奈子　４．谷崎潤一郎集　５．容疑者Xの献身　東野圭吾･･･実をいうと対して興味のない著者なのですが、直木賞受賞に敬意を表して。　６．死者の奢り・飼育　大江健三郎･･･カミュの作品集(シーシュポスの神話が収録されているので)を借りようかと思ったがさすがに年越しにはちと重い(笑)で、カミュを日本国内にシフトさせたらどの辺りの人になるのだろう･･･と思案してふとこの人が思い浮かんだので。本当に正しくシフトさせた人選なのかどうかは全然わからない(笑)　７．英語屋さんの虎の巻　浦出善文･･･個人的嗜好の一冊。　８．きれいになる「お取り寄せ」　佐伯チズ･･･なんでこれが手元にあるのか今もってわからんが(笑)こんな私でもお礼や何やで人様に物を送る時があるのでそのときの参考にと思いました。でも多分母親に読ませて終わるでしょう。

  2006.12.23

• 家守綺譚から畳奉行(笑)へ

  梨木香歩の「家守綺譚」を読む。この人の作品は初めてなのだが･･･うぅん、私には少し肌合いが違う感覚が残る。何といえばいいのか、ニュアンス小説、とでも言おうか･･･かといって読みにくい、とか途中で投げ出したくなるようなシロモノではないし。そういえば、読みながら作中の少ない登場人物の一人である”となりのおかみさん”は、絶対に異界の存在だろう!…つまり植物か何かの化身なんだろう、と思い込んでいたが、それについては最後まで触れられず･･･(笑)どうも最近の私はこの手のユーモアを段々受け付けなくなっているようである。気を取り直してその次に手にしたのは「元禄畳奉行の日記」(神坂次郎)。これはいかな本好きでもそうは読んでいないだろう･･･昭和５９年に発行された本だもの。半分ほど読んでいるが予想通り、雑学の本としては結構いける

  2006.12.03

• 文壇アイドルからドミノへ

  斎藤美奈子氏の「文壇アイドル論」を読む。米原万里さんの「打ちのめされるようなすごい本」の中で取り上げられていて興味がわいて借りてみた。書評、批評、というジャンルの読者としてズブの素人だからいっぱしの読者面はできないけれど、うん、さすがにここまで名の売れている方だけあって面白い。村上春樹、俵万智、吉本ばなな、林真○子など日ごろ私が存在を否定したいけれどそのための適切な言葉が見つからなくて悶々としている作家陣あるいはその支持層を的確な言葉で斬っていて、単純に胸がすく。(あ、林真○子に関しては罵りながらも時々読んでいますが)ただ最後に取り上げた田中康夫は例外的に斬られておらず、彼の著作を一冊も読んだことがないので是非今度トライしようと思った。その後読んだ本は、恩田陸氏の「ドミノ」だが･･･うぅん、私はどうも旧いﾀｲﾌﾟの頭の固い読者のようでどうもこの人の作品の面白さを堪能できない。これは映像であれば楽しめそうだ、と思うのだが。皮肉なことに私が一番感情移入できなかった人間はOLの田上優子という人物仕事の途中で先輩におつかいに出されて結果数時間も会社に戻らないことになるのだが････こんな行動はありえないでしょう!?しかも会社に戻れない理由がかなり馬鹿らしい･･･おっと、もしかしてこんなところに突っ込みいれてしまう私はかなり想像力が萎えているミイラなのだろうか

  2006.11.30

• 恩田陸、梨木香歩、斎藤美奈子の共通点

  今日図書館で返却を終えた本は「百鬼夜行」(京極ナツヒコ)。別に彼のファンというわけでもなく、例えば”嗤う伊衛門”や”どすこい”の良さは私には理解できないけれど、この人の文章の感じは結構好きである。この短編集も思わせぶりなエンディングが多く、貴方(読者)任せなところは気に食わないけれど、人間の心の闇の底知れない深さを感じて何となしに気味が悪くなる･･･というところでしょうか。入れ違いに借りてきた本は「ドミノ」(恩田陸)、「家守キタン」(梨木香歩)、「文壇アイドル論」(斎藤美奈子)の三冊。どれも「打ちのめされるようなすごい本」で米原女史ご推薦の本。･･･まったく影響受けまくりな私である

  2006.11.26

• あのベストセラーをついに読んじまいました

  最近読んだ本についてさらっと一言。「黒猫・黄金虫」(ポー)･･･蔵書の中から持ち歩き易いものを選んだらこうなった。読むのは通算３度目ぐらいだろうか。一番気味が悪かったのは自分にそっくりな人間(なのか自分の良心の化身なのか)を殺す「ウィリアム・ウィルソン」というｽﾄｰﾘｰ。他のは･･･うーん、やはり古典だということもあるのか、翻訳モノだということもあるのか、言い回しがすっきり頭に入ってこず少し退屈な感じも残る。「国家の品格」･･･言わずと知れたベストセラー。どうやら父が買ったらしく本棚に息を潜めて隠れていたものを発見。感想は････うぅん、言わぬが花、というところか(笑)「人間臨終図鑑」(山田風太郎）･･･奇書の類だなぁ(笑)古今東西の有名人がどこで何歳で死んだか、ということの羅列。ま、人の死を扱っている割には意外な発見もあり後味が悪い本ではない。

  2006.11.19

• 絵本作家として高名(?)な佐野洋子氏のエッセイ

  佐野洋子「覚えていない」を読む。これは母の誕生日のプレゼントに献上したのだが、例によってほとんど進まないので目を盗んで私が先に読み終えてしまった(笑)･･･いやぁ、これはいい。相当いい。これを執筆されたとき佐野さんは50代だったそうだが、いまや彼女も68歳。･･･さてさてこの著作でしばしば自分の将来像について触れているように、小粋でへそ曲がりなお婆になっているか･･･今の彼女を知るわけではないけれど、絶対そうなっていると確信している佐野さん、内田百ケン先生がお好きだそうであり、内田先生を愛する人間としてはここにもクリック今回発見したのだが、佐野さんのエッセイ、どこか西原理恵子の漫画に通じるものがある(笑)おそらくこの二人は内に多くの共通する感情を持っておられるのだろう。･･･まかり間違っても子供の手本になるような品行方正な人間ではないけれど、私にとっては偉人、偉人！

  2006.11.04

• ところで「葉隠」ってどういう意味だっけ^^;

  「葉隠入門」(三島由紀夫)読了。「葉隠こそわたしの文学の母胎である」というくらいだから「葉隠」とは三島にとって相当重い意味を持つ著作だったということだ。滅びの美学を持ち夭折に憧れた天才の感性ならでは･･･という感じもするが、彼の手引きで垣間見る「武士道」の世界は凡人の私にとっても格言となることが少なくないっす。ま、衆道についてまできちんと「道」を説いてある、というのは多少失笑しそうにもなるが･･･

  2006.11.01

• 直木賞作家の伊良部医師シリーズもの

  最近の直木賞作家の作品にはほとんど手を出さないけれど、奥田英朗の受賞作「空中ブランコ」は面白かった記憶がある。それを読んだのは多分１年も前のことだけれど、このたび同じシリーズの「イン・ザ・プール」と「町長選挙」を手にとってみた。詳しく言えば「イン・ザ・プール」は「空中･･」の前作。やはり良い主人公伊良部医師の破天荒ぶりも作者の狙い通りこちらの笑いのツボに効いてくる(笑)彼のもとを訪れる患者はほとんどがサラリーマンなのだが、自分も陥りがちな思考回路と身に覚えのあるネガティブな感覚にドキリとする。･･･何かのきっかけで明日はわが身、ってなもので有る意味身につまされたりもする。それに比べてシリーズ最新作の「町長選挙」は今ひとつ、いやふたつみっつネタ切れなのか誰でも知っている有名人(ナベ○ネ、ホリエ○ン、黒○瞳)をモデルにしているけど不発。その中ではアンチエイジングに血道をあげる白木カオル(黒○がモデルね)の話がまだしもよし。私は黒○の信者でもなんでもないので、TVで彼女を見るたび「いつか思わぬところから化けの皮が剥がれてくれないかなー」とか「この人がこうある為に色んな人が多大な犠牲を払ってるんだろうよ、ケッ」と思うのだが、私のこんな下衆の勘繰り(?)を小説化したようなもんである(苦笑)ま、その割には毒気のないｽﾄｰﾘｰだったけど。

  2006.10.31

• ベランダ園芸自己流派･･･タイトルが覚えられません

  いとうせいこうの「ベランダ園芸自己流派」を購入。１作目の「ボタニカルライフ」に衝撃を受けて以来、軽く（？）いとうせいこう氏に愛を感じている私である。この２作目も期待に違わずかなり面白い。惜しむらくは私が筋金入りの植物オンチでありエッセイで取り上げられている植物の半分は名前は知れど顔知らず、であることいちいちインターネットで検索してみようかとも思ったけど、まぁそれも面倒であるしあっさり断念。世のガーデニングブームには少し空恐ろしいものを感じてしまう。表に綺麗な鉢植えの植物をこれまたスマートに配置した小ざっぱりした一戸建の建ち並ぶ空間に足を踏み入れるときには、自分がこの一画にまかり間違って居を構えることを想像してちょっとした恐怖感を覚えてしまう･･･物質的な殺風景には耐性が強い、というのか早い話が無精もんなのであれをやる自信がないのだそれに対していとう氏がベランダ、という限られた空間で、また限られた予算で自己流の園芸道を追求している姿は何というか傍観者にも心地よい(笑)「植物が枯れること」を恐れていない、という考え方もこれまたよい。今うちは広くも無いが狭くも無い庭を両親が結構手間隙かけて整えているが、親の心子知らず、を地で行く私は何の植物が植わっているかほとんど知らないそして不動産は相続したいが庭を引き継いで植物を世話する自信は全くない甲斐性なし、である。できればベランダぐらいの広さで肩の力を抜いてガーデニングをしてみたい。それが今の心境

  2006.10.22

• 本の名前を羅列しているだけです(苦笑)兵学から美女まで

  さらっと読書録。野口武彦「江戸の兵学思想」読了。同「忠臣蔵」読了。三島由紀夫　「サド侯爵夫人／朱雀家の滅亡」読了。　林真理子　「美女は何でも知っている」読了。　････最後の一冊は近日中にブックオフで叩き売る予定。以上。

  2006.10.01

• 不朽の古典名作「吾輩･･･」ともう一冊

  さっき改めて自分のブログを見て驚いた～「渋江抽斎」からこっち何にも書いてないとはあれから何年ぶりかで「吾輩は猫である」を読了(これで記憶にある限り３回目)。相変わらず強烈に面白い。徹頭徹尾ふざけた会話のオンパレードで笑わせながら、根底には拝金主義、西洋崇拝主義への批判が紛れもなくある。これを近代文学の黎明期にデビュー作としてぶち上げたのだから、漱石先生は文学史上やはり不世出の偉人だそういえば、以前日記に「漱石先生は本当にあんな美男子だったのだろうか」という疑問を呈したことがあるが、この本の裏主人公(?)「苦沙弥先生(勿論漱石自身がモデル)」は「かなりのアバタ面だ」という記述がある･･･やはり今世にある漱石の写真は相当の修整が入っていると見てよいようだ今手にしているのは野口武彦氏の「忠臣蔵　－赤穂事件・史実の肉声」。朝日新聞の文芸欄ｺﾒﾝﾃｰﾀｰ(?)としてよく名前を拝見するので何となく一冊読んでみようかと。実を言うと野口先生、まんざら知らない人でもないので(勿論先方は私のことなんて知らないけどね)。･･･ただし当時はそんなに高名な著述家だとは全然知らなかったで、この本今読んでいる限りはかなり読みやすく興味深い。版数を見ると２ヶ月弱で重版されているから売れ行きもよかったのだろう。･･･と、年中”読書の秋”です、とばかりにお堅い読書家ぶりを披露しているが、一方で土曜夜９時放送の「マイボス・マイヒーロー」から目が離せないアホでもありますあーあ、来週はついに最終回だ････

  2006.09.10

• 読書傾向、決定的に渋すぎます･･･汗

  通勤時、ひょっこり隣り合わせた会社同僚の男性熟年社員から「読み終わったので」と貸してもらった本。森鴎外の「渋江抽斉」。こんな渋すぎるセレクションを２つ返事で「お借りします」と引き受ける女性社員はあまりいまい。しかも３日で読了。･･･時々自分がもう、普通の女性らしい趣味、嗜好を持った女性には戻れないのではないか(というよりそもそもそんな時期があったのか、という疑問も残るが)と不安を感じる今日この頃(半ばマジ)これはなんともコメントしにくい作品である。巻末の解説にも書いてあるが、鴎外自身が枠組みから解き放たれて自由に好きなことを書き綴っている、という印象がある。いや別に突飛だとか放埓だとかいうのではなくて。趣味の本、といえばよいのか。兎に角、江戸時代の医師、渋江抽斉のことを記すにその係累、関わった人々を逐一あげて出自等を書き記していく、というどう考えても自分本位の書きものではあるけれど(笑)、変な話、鴎外の作品だと思えば読めないこともないのである

  2006.08.28

• コーンウェルって昔からこんな作家でした？

  P.コンーウェルの旧新作「痕跡」を借りて読み始めているのだが･･･さっぱり人間関係が把握できない私はよほど頭が弱いのかもしれない･･･(苦笑)というのか、もうそろそろ年１回、上下巻発売という阿漕極まりない商業ペースはやめませんか？潔くシリーズを終わらせたほうがいいのではないかと。有終の美、という言葉もあるし。

  2006.08.16

• パンツ･･･ふんどし･･･面白い！

  うっ･･･、また１０日ばかり間が開いた。１日一回はＰＣの前には座るのだけれど、座るのだけれど、座るのだけれど･･･。何か楽天日記に関しては単なる傍観者になりつつある気を取り直して本来の読書備忘録から。先週頭に読んだ本は、「パンツの面目ふんどしの沽券」(米原万里)「サド侯爵・我が友ヒットラー(戯曲集)」(三島由紀夫)。今は亡き米原さんを偲んで心静かに読もうとするが、これがどうにもこうにも興味深い話題満載でいちいち家族に教えてやらねば気がすまない(笑)米原さんが幼少の頃通ったソビエト学校の家庭科の授業で一番最初に習うのは「パンツの縫い方」だったという事実がまずガツンと会心の一撃、そこからロシア人の(ロシア人に限ったことではなくﾖｰﾛｯﾊﾟの男性は一般的にこうだったのでしょう)隠れた恐るべき習性(パンツを着用せず、シャツの下端を前後から股にあてがう)etcを知り長年秘かに片思いしてきたあの美しい民族の恥部を見た思いでこれまたガツン、その後も取り上げている題目は「パンツ」だの「ふんどし」だの甚だ人目をはばかるものではあるけれど、どれも面白くてしかも人類学的考察にも至る逸品！米原さんの著作の中でも個人的には相当好きな部類に入る一冊である。「サド侯爵夫人・我が友ヒットラー」は言うことなし。天才の書いた戯曲だもん。巻末に初演では「サド侯爵夫人」のうら若きヒロインを丹阿弥谷津子が演じた、と書いてあるのを読み多いに時の流れを感じたもんでした。

  2006.08.14

• ざっと４０年前の大ベストセラー作家？

  山田風太郎「あと千回の晩飯」を昨日図書館で借り、今日読了。いやぁつくづくもっと小出しに長く楽しめばよいものを、外出先でまで持ち歩いてせっかちに読んでしまう自分が恨めしいそれほど面白いエッセイだったのだけれど。山田氏については私が生まれる前の時代の売れっ子作家だったらしく名前を知ったのはつい最近なのだが、敬愛する内田百ケン先生にも通じるキャラクターに乾杯！である。このエッセイは10年ほど前に新聞紙上に発表されたものであるが、この頃すでに大きくかわりはじめた日本の社会に山田先生、決して説教くさくはないのだが苦言を呈しておられる。未だに彼が健在で筆を置いていなければ、この時代をどう斬っておくれただろうか。これを想像するしかないのはかえすがえすも残念である。

  2006.07.09

• 内田樹先生＆今が正に旬のあのスポーツ漫画

  いやぁ、先週末から健康面では非常に綱渡りの生活を送っている(苦笑)思い出したくもないことなのであえて書かないけれど先週末の悲惨な出来事^^;･･･の後遺症なのか昨日の夕方から発熱して今日まで。療養中の気晴らしに読んだのが、内田樹センセイ著「街場の現代思想」。これは情報誌に連載されていたものを単行本化しただけあって専門性は低くかなり読みやすい。そして結構面白い。読後の感想を端的に言えば「日本人はどんどん視野狭窄で謙虚さがなく畏れを失くしていることがわかった」というところかな。賢い人間というのは知識量を誇る人間ではなくて自分が無知であるということに素直になれる人間なのですね。あとは寝ながら「キャプテン翼」を再読(笑)やっぱり今読むマンガはこれでしょう特に私は１巻から５、６巻当たりまでが大好きで翼の「サッカーは俺の夢だ！」という言葉に漏れなく涙してしまうアホであるつくづく漫画(特にスポーツ漫画)の生命線は絵の巧拙ではなく単純で説得力のあるストーリーと輪をかけて単純な人間関係に尽きると思った！

  2006.06.28

• ＫＹＯＮ２が絶対読まないあの本を(笑)

  リリー・フランキー著「マムシのａｎａｎ」。今更ながら先週この本を買ってしまい、人目を避けてコソコソ読んだけれど(笑)、うん、やはりリリー氏のエッセイは出色である(ってそんな小難しい言い方するなって)お得意の下ネ○も「ａｎａｎ」掲載なので一応はソフト路線のよう。おバカ一色かと思えば男と女論は意外に説得力もあり、"オーラ”なんて本当はねぇんだよ！己の劣等感のなせるわざだよ!”という論にはうなずくことしきり。うぅん、今更、恥を忍んで買ってよかったよその後読んでいるのは図書館で借りた本「私の個人主義ほか」夏目漱石。主に講演内容を中心に編集された一冊である。で、表紙裏の漱石氏の写真(お札になったあのアングルですが)を見て突如ふって湧いた疑問は、「この人はほんとにこんなに男前だったのか？」よくよく見ればえらく二重瞼も美しいし･･･。昔の写真って投射技術が低い分相当修正が入ったということだろうなぁ、と今にして気がついた

  2006.06.25

• 今や斉藤由貴にのりうつらざるを得なくなった漱石･･･かなしい

  夏目漱石の”二百十日”と”野分”を読書中(再読)。正確には二百･･･の方は読み終えて野分を読んでいる最中。それにしてもこの辺の作品には厭世観が強く出ている。正しくは拝金主義、権威主義が横行する世の中への嫌悪感というべきかね。百年前でも２００６年でも根本的な世相はそれほど変わらないんだなぁ、とは思うのだが、作品中に漂う漱石の嫌悪感は相当強くて読んでいても少し疲れる。例えば野分に出てくる主人公の細君(って今や死語だなぁ、と実感!ほんと漱石の小説中くらいしかお目にかかれない)は、高潔の士である主人公の心情を理解できずに職を転々とする主人公を詰る愚妻だと描写されているけれど････いやぁ、実際私だってそうなりゃそうする何だか漱石氏の絶望が垣間見えて辛くもなる作品である。そういえば最近噂の昼ドラで漱石は斉藤由貴演じる主婦ミドリ(爆)に乗り移っているわけだが･･･正味なはなしこんな厭世的な人が主婦には憑依しないよぉ主婦に乗り移って結構やっていけそうな人って･･･私の独断と偏見では小林一茶か石川啄木あたり。なぜ?と問われるとこれが全くの独断偏見なので明確な返答はできないのだが

  2006.06.21

• M.M大先生とこちらも人気のA．Ａだと･･･

  週末の読書。懲りずに宮部みゆきの時代モノ、上下巻。(いや正確には”懲りている”のだが行きがかり上借りざるを得なくなったという･･･つくづく私って余計なﾘｯﾌﾟｻｰﾋﾞｽの多い人間である。自戒)。あさのあつことかいう最近の人気作家(そういえば浅野温子を最近見ない･･･)のこれまた時代モノ一冊。こちらも又借り(苦笑)ただこちらは宮部作品に比すればやや高判定。何にせよ自分で本を物色しにいく気力もなかった週末であるから手元に未読の本があるだけで助かった～

  2006.06.19

• お洒落な本屋さんで三島を一冊

  お昼を外食し、その後ブラブラしていた街中で少しお洒落な佇まいの古本屋さんを見かけたので立ち寄ってみた。古本屋、といっても古書、貴書の類は無さそうなお店の雰囲気に合ったオーソドックスでライトな品揃えである感じ。いや品揃え云々というには余りにも規模が小さくて「これなら家の方が本多いんでないの？」と思ったのも事実だが店頭ワゴンに在ったのでこのままたな晒しになるのも忍びなくて思わず買った本は三島由紀夫の小説「盗賊」。新品同然だけど１００円だったし。早速読んでいるが、やはり三島の美しい日本語には酔いしれる。１００円本にこんなに愉しませてもらっては申し訳ないくらい･･･

  2006.06.11

• 人気作家の時代物を手にするも・・・　がっくり

  毎回毎回更新間隔が拡がっていっている･･･(汗)まぁ書きたいことがないことはかかなくていいのさ、と半ば開き直りながら･･･でも開店休業状態だとそのうちわずかな数の"常連”氏達にも愛想つかされそうです最近は図書館になかなか足を運べないので手元に自分の読みたい本がない。これは意外に落ち着かない状態である(苦笑)。で、そんなことをおくびにも出してはいないがどうもタイミングよく会社の某同僚はせっせと自分の読んだ本を私に回してくれる。読書の傾向としてはほとんど趣味があわないのだが、たまには自分では手に取らない本を読んでみるのもよい･･･と思い薦めに応じて借りた本は宮部みゆきの時代モノ。結論。ダメ。暇でよかった。心に余裕のないときに読んでいたら、”坊主憎けりゃ･･･”で宮部みゆきを逆恨みしそうだ(笑)以前は好きだった作家を悪し様にいうのもなんだからやめておこう。いや、宮部氏の力量が落ちたわけでは決して無いのだ。私の嗜好が変わっただけ。あぁあ、今週は何の本を手にしようか。みなさんのブログでも廻って食指の動くような本を物色してみよう。

  2006.06.10

• これは２０世紀最高のマンガかもしれない･･･

  きました、久々のマイブーム(笑)最近目が疲れるといって全くといっていいほど本を手にしなくなった母(もともと本なんて盆暮れぐらいにしか読まない人ではあるが)のため、そしてこちらも新聞と病気の本(最近持病が多いから^^;)しか読まなくなって口にする話題が更に辛気臭くなった父のためも少しあって、買って帰ったのが数冊の「サザエさん愛蔵版」(笑)･･･ついでに自分も読んだら、これがもう止まらない!!!最近は手にしていないと禁断症状が出て三日とあけず買い足しています>▽

  2006.06.01

• 寝ながら学べる構造主義･･･だってさ

  内田樹の「寝ながら学べる構造主義」を読む。「構造主義」なる言葉さえ全く知らぬに等しいアカゴのような状態でこれを読んだが、さすがにわかり易く書いておられると感心。個人的には「ことばはものの名前に非ず」というソシュールの論に目からウロコ。後はフーコーの「身体も一個の社会制度である」「国家は身体を操作する」論も同じく目からウロコ。･･･どういう風に目からウロコだったか、ということをここでクドクド書き連ねることはやめておきます。興味のあるお方は、百聞は一見に如かず、是非この本を読まれればよし。全部読んだからといって構造主義について一端の口をきく資格ができるわけでなく、更に全部読んでも枝葉に捉われていて総括的な理解が出来ていないような気もする私ですが、”自明の事柄だと思われていることを疑ってかからなければ人間は進歩しないなぁ”なんてことをふと思ったわけである。ま、この本についてはこんなところで。追記：他に内田氏の著書「映画の構造分析」を読了。「ためらいの倫理学」読書中。

  2006.05.27

• 清張ウィークの終わり。お腹いっぱい。

  さてさて、連休もはや終わり。連休唯一の悪天候日のよりによって今日、外出しなければならない羽目になったが、まぁ気分転換にそれはそれでよしとする。この連休中、家にいるときには結構な時間松本清張の本を手にしていた。ざっとこの期間中に読んだ作品を挙げると、「ゼロの焦点」「Ｄの複合」「喪失の儀礼」(以上長編)、「菊枕」「火の記憶」「断碑」「腹中の敵」「張り込み」「甲府在番」「一年半まて」(以上短編)。長編は全部再読。短編はおそらく全部初めて。長編３編は再読ながら(記憶がおぼろげだったこともあり)愉しんで読めた。清張氏の作品には旅情がある。「ゼロ･･」では、北陸の重くて暗い冬の描写からそこで突然失踪した新婚の夫を捜す妻の不安な心情をより一層真に迫って感じることが出来た。（あ、これは旅情とは呼べませんか、失礼^^;）また短編も上手い。(当たり前か)後世において認められる業績や作品を遺しながら、生前は周囲に認められず失意のうちに死んでいく人間をよくテーマにするのは彼のこういった人間達に対する情の発露だろうか。兎に角清張作品を十分堪能できた。また１０年ぐらい後にブームがきてこれらの作品を読み返すような予感もするが･･･(笑)

  2006.05.07

• 

  松本清張･･･個人的には絶対お薦めこの一冊！

  お出かけ日和のお天気に誘われて車で二時間弱の小さな海沿いの町へ。瀬戸内海とそこに点在する島々が綺麗だったこと意外は特に出張った甲斐もない場所でしたが^^;、それは想定内のことだったのでよしとする。お昼に入った寿司やで出された寿司はシャリが甘くて悲しくなるような味だったけれど、その後立ち寄ったジェラート屋さんのジェラートはまぁまぁ美味しかった。しかし寿司のシャリが甘いってどうよ!!･･･そういえば店中皆無言で食ってた(苦笑)ここのところ松本清張再読ブームが来ている(私にだけ)。今日読んでしまったのは「Dの複合」。これも１５年以上振り。復讐モノという甚だ曖昧な記憶しかなかったので新鮮な気持ちで読み進む。この作品には「羽衣伝説」「浦島伝説」といった民俗学的要素が色濃く表れている。前半はただそれだけとも言えそうなほど紙幅を割いてあるがその部分も退屈ではなく読み応えがある。勿論こういった各地の伝説、伝奇をベースにしたミステリーを書く作家は他にもいるだろうが、例えばその代表格であろうU田康夫御大の作品などと比較すると、民俗学的記述の点でもミステリーとしてのクオリティーでもこれはもう大人と嬰児の勝負。やはり一時代を築いた作家、清張氏の力量は違うと実感する。･･･個人的に、このDの複合は先生の作品中相当高位置にある。

  2006.05.03

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  松本清張先生は長くても短くても面白いな～

  連休二日目、これ以上はないほど快晴のいいお天気。今日は近隣市へ車でドライブがてら牡丹の花を見に行ってきた。牡丹の花は大輪で一見重たげだけど、花びら一枚一枚はとてつもなく薄くてなよやかで繊細。昔々（具体的に言えばひと昔、ふた昔の更に先、三昔ぐらいです^^;）、ボックスティッシュがまだ世に出ていない頃、家で使っていたちり紙の束の袋には決まって大輪の牡丹の花の絵が印刷されていたけれど、その理由にも今納得。牡丹の花びらほど薄いちり紙ですよ、といいたかったんだろうな。帰宅後家で松本清張集の小品を拾い読み。因みに昨日は「点と線」を再読。やはり面白いが、個人的に彼の長編小説では最初に読んだ「眼の壁」に軍配を挙げたい。今日読んだものは「西郷札」「或る小倉日記伝」と「光悦」。この中でも「光悦」は興味深い。曰く、多才多芸の天才として揺るぎない評価を得ている光悦だが、実際真に天分を発揮したのは書家としてのみであり、他の芸術分野に残した作品は一流とは言い難いものが多い。ただ彼は他の人間を否応なく差配し、彼の想定する構図のもとさまざまな優れた作品を作成させる意匠家としてはこの上ない能力を持つ人間だったらしい。彼の前ではあの俵屋宗達も彼の意のままに動く一本の指同然であったと。つまり光悦が”萬ず秀でた才人”として賛美される影で黒子となって黙々と腕を振るう無名の芸術家達の煩悶が描かれている。そしてまた彼らを圧倒しながらも、彼らの才能に対して光悦もまた敗北感を感じている。正直、ここで散々語られている本阿弥光悦を私は良く知らない^^;だがしかし、この作品は面白い。

  2006.04.30

• 恩田陸　「蒲公英草紙」を読むには読んだ･･

  恩田陸著「蒲公英草紙」を読む。超能力(と言い切ると安っぽいが)を持つ”常野一族”がテーマとなる「光の帝国」の続編。･･･一冊を数時間で読みきったということはそれなりに内容が興味深く面白い証拠なのだろうが･･･うぅん、個人的にはまたしてもツボを外した感じで残念しかし、まぁよく考えれば私は元々ファンタジーものに対する感度が低いのだったかのハリーポッターを一冊も読んだことがないし。映画に至っては途中でフネこいで誘ってくれた友人を大いにがっかりさせたし(笑)古くはＥＴにもﾈﾊﾞｰｴﾝﾃﾞｨﾝｸﾞｽﾄｰﾘｰにも洗礼を受けていないし。(･･･これはおそらく私達の年代においては非常なレアケースではなかろうか、と思われる。みてないんだから当然ETの映画中の象徴的行為である「人差し指の先を合わせる」ことが何を意味しているのかわかならい！そして今更オフラインでこんなこと人に聞けやしない！)･･･何のことはない、小説に問題があるわけではなく受け手の私の感受性に問題があったってわけだ>▽

  2006.04.16

• 松田聖子に脱帽。

  「知に働けば蔵が建つ(内田樹)」を読了。あと手元に手付かずで残っている本が「永井荷風集」と「蒲公英草紙(恩田陸)」。どちらから手をつけようか思案中。帰宅後つけていたテレビで「うたばん」を見る。松田聖子の可愛さに唖然。念のため申し上げれば私は特に聖子のファンでもなんでもない。だがやはり聖子の持ち歌メドレーを聴けば古きよき昭和後期の思い出が怒涛のように溢れてきてひとときモラトリアムに浸ってしまう。良くも悪くも私にとっては昭和の象徴的歌手であるかもしれない。加えてあの若さ。彼女は「松田聖子」であることに微塵も揺るぎない自信を持っている。彼女の成分、原動力はいうなればその自信なんだろう(笑)でもその考え方、生き方は悪くない。人間信念を持ってわが道を歩んでいれば他人は意外に疑うことなく自己申告をすんなりと受け入れてくれるのかもしれない＾＾;そうなればしめたもの。私も周囲が嫌悪感を覚えない程度にもう少し図々しく自己愛的人間になってみよう。

  2006.04.13

• 内田樹センセイの著作はお初

  内田樹氏「知に働けば蔵が建つ」を読みかけている。恥ずかしながら無知にして著者のことはつい最近まで全く知らなかったのだが、(確か)オダギリチガさんのところでお気に入りリンク先としてこの方のお名前を拝見し、その後偶然にも先日図書館で返却直後のこの本が定位置に戻される為の返却用ワゴンに立てられているのを発見、お持ち帰りに至ったわけである。ニーチェなどの私ら門外漢にとっては古色蒼然とした偉大な思想家の名前も一部には出てくるがｱﾌﾟﾛｰﾁは平易なため結構理解しやすい。読めば読むほど加速度がつく。不幸にして自校(学部)には専門教科をわかり易く(ある程度)楽しく(というのはあまりに受動的な学生の自分の怠惰さを棚に上げた不平なのかもしれんが^^;)講義する教授が皆無であったため、ふと講義がこういった風に面白ければ学問を更に掘り下げようという意欲もわくだろうと思ったもんさ。

  2006.04.11

• 懐かしい学園モノを思わず手にとって

  この日記は個人的な読書録としての意味もあるのでここに書くのも躊躇するようなラインナップであっても一応読んだ本は記録しておくことにする。いつも比較的小難しい本を手にしているので箸休めをここ２週間で２刷。「小泉今日子の半径１００ｍ」(わざわざ買ってまで読んだよ･･･^^;)と氷室冴子の「アグネス白書」(これは図書館にあって衝動的に借りた)。アグネス白書なんてその前作のクララ白書とともに初めて読んだのは実に２０年以上前!!勿論今読むと年齢的なズレも伴い多少チンケな感を免れないが、でもこれ女子校学園モノとしては出色の出来ではないだろうか?!勿論文章は上手いしキャラクター設定も秀逸。氷室さんの宮廷もの「何て素敵なジャパネスク」などは過去に映像化されているように記憶しているが、「クララ･･」「アグネス･･」はどうだっけ?少なくとも私は見たことない。そしてこれは安易に映像化してほしくないと切に願う、実は自分にとって貴重な貴重な一作だったりする･･･(照)

  2006.04.09

• 恩田陸VS柳田国男!!

  今読んでいる本は、恩田陸著「光の帝国―常野物語－」。さすがの人気作家の作品だけあって予約待機の末やっと手にした。･･･ただ･･･そこまでして手にした本なのに、惜しむらくはこのタイミングの悪さ(苦笑)。週末柳田国男にどっぷり浸かっていたせいか、どうも心に響いてこない。今まで何冊かの本を並行して読んでいてそれほどの違和感を覚えたことはなかったのだが、さすがに今回は反省(笑)まるでキムチを鬼ほど食した直後にふんわり薄味卵焼きを口にして「卵焼きの味がわからない!?!」と悔しがっているようなもんだ^^;いや、柳田作品をキムチに例えるのもどうかと思うが、今の私にとっては理詰めの柳田論考の方が美味しいのである。

  2006.04.03

• 柳田国男集面白い！「泣く」という行為がはばかられる訳

  引き続き読んでいる柳田国男集が面白い。今度は「泣く」という行為を取り上げた「涕涙史談」。曰く、近世以前(私はおそらく明治時代以前のことだと捉えているのですが･･)には、市井の人々の語彙は非常に乏しく、よって人々は自身の胸のうちに湧き上がる感情を、その貧弱な語彙ではなくて表情や仕草や言葉にならない発声を以って表していた。ところが、教育が行き届き人々の使用する語彙が飛躍的に増えると感情を表すにもその語彙の中から適切だと思われるものをチョイスして口にするという手段が一般的、支配的になり、そこで例えば「涙を流し声をあげて泣く」という行為は非文明的であるかのように見なされることとなったが果たしてこのような風潮はいかがなものか･･･といったようなことを書いておられる。人が泣くに至るにはそこに悲しみの感情があるからというのは一般的な考え方であるが、「カナシイ」という言葉は元来、不幸から来る感情の刺激だけではなく、もっと広義の「切なる感情」という意味を包含していたらしい。時代が進むにつれそのような漠とした概括的な意味しか持たない「カナシイ」という言葉は実生活で機能しないので、地方により「カナシイ」は狭義に使われ意味が分化していった。その中で「不幸によりもたらされる感情」という意味が支配的に残り、「泣く」という行為は「不幸」の存在を暗示しているとして忌み嫌われるようになった。というようなことも書いてある。泣くという一見たわいも無い行為から日本の民俗史における一考察に発展する････うむ、面白い面白い･･･繰り返すが面白い

  2006.04.02

• 民俗学の大家、柳田国男の作品に触れる

  一週間近く日記記入をサボってしまった。ここのところ何だか書く意欲が減退しているので^^;それでも週末家にいると漫然とＰＣに向かってしまうのだから自分でも失笑モノである。今読んでいる本は「柳田国男集」。彼はいわずと知れた民俗学の大御所で同時に国家公務員という要職にも就いていたという、まぁ言ってみれば嫌味な才子である(苦笑)昨年かなり興味深く読んだ、在野の民俗学者宮本常一とそのパトロンで財力と深い理解を以って日本民俗学の発展に大きく寄与した渋澤敬三をテーマに取ったﾉﾝﾌｨｸｼｮﾝ「旅する巨人」では、柳田氏は曰く”高い社会的地位ゆえに大所高所から民俗学にｱﾌﾟﾛｰﾁした人物であり、他の研究者の協力のもと世に出た研究、作品の手柄も独り占めするきらいあり”と散々な言われようであった>▽

  2006.04.01

• 松本清張氏の社会派作品

  今手元にある本は「松本清張集」とこちらは文庫本サイズの「柳田国男集」。松本清張の方には彼の代表作、「点と線」「ゼロの焦点」や数編の短編のほかに、実在の怪事件を題材に扱った作品が数編収められている。その数編の作品とは、戦前体制側の内偵者となりながらも終戦後も共産党内に籍を留めたばかりかその謀略の才を以って党内で隠然たる勢力を誇った人物について書かれた「革命を売る男」，大正時代に起こった「石田検事の怪死」，昭和２０年代の事件である「ある小官僚の抹殺」。「ある小官僚･･･」は「点と線」の習作的作品という印象を受ける。(実際、発表時期は点と線のほうが早いようですが)戦後の成長期に横行した汚職事件で矢面に立たされ時には死を以って職務を全うさせられた、(彼曰く)”小官僚”を評した言葉、「風に吹かれてそよいでいる弱い葦」とは実に言いえて妙であり、”小官僚”に対する一種哀惜の情が感じられる。

  2006.03.26

• 後巷説百物語･･･恨めしや･･･

  　京極氏の巷説百物語シリーズを読了。最初の頃の衝撃は薄れたものの、手を替え品を替え読者を飽きさせない力量にはとにかく脱帽である。人情モノなるジャンルで描かれるステレオタイプな江戸の町、人にはあまり魅力を感じないが、京極氏の筆により命を吹き込まれた登場人物達は、まるで浮世絵や瓦版に生き生きと描かれた人物が二次元から抜け出て動き出したかのように魅力的で時にコワク的でさえある。物語の最終章では、女人殺しの大罪を隠し有徳の高僧としてのうのうと生き延びる男をシリーズの狂言回しである戯作者・百介自身が仕掛を張って断罪する。その翌日高齢の百介も自宅でひっそりと往生を遂げる。このシリーズの幕切れに一番ふさわしい筋立てであろうと思う。百介が逝き、怪談・奇談が人々の生活にある意味根ざしていた時代も終わった。

  2006.03.17

• 京極夏彦の傑作「巷説」シリーズの打ち止め

  ２月、３月の私の読書記録は「京極」の文字で埋め尽くされている感がある(笑)今も手にしているのは「後巷説物語(のちのこうせつものがたり)」。勿論読み始めればついつい途中でやめられなくなる語り上手はシリーズ前２作から変わりはないが、ただやはり３作目となるとマンネリ感が漂うのも否めない(苦笑)この一冊を読み終えたらそろそろ京極浸りの日々に一旦終止符を打ちたいと思っているので、ちょうどよい読み収めになるかもしれない。そういえば、今日駅から家まで自転車で帰宅する途中、突然ペダルを踏めども踏めども自転車が前に走らなくなった。こ、この怪奇現象は古から伝わる「巷説」によれば････なんて事はない、立派に前輪がパンクしておりました(苦笑)

  2006.03.13

• 映画にもなりました！･･･姑獲鳥の夏

  巷説百物語シリーズでハマった京極先生のデビュー作、「姑獲鳥の夏」を読む。これは巷説シリーズとは大分趣きが違う。好みとしては断然「巷説」である^^;夫が失踪した直前から２０ヶ月の間妊娠を続けているという失意の人妻の一族を核に物語は進む。不可思議な雰囲気を纏う古本屋の主人、京極道が延々と繰り広げる脳と意識と心の関係論は正直、字面を追った傍から明確に理解できる類のものではない。寧ろ対象物に接近すればするほど輪郭が曖昧になるような感覚で、読めば読むほど不可解さは増しもどかしさは募る一方である(笑)ただ探偵の榎木津が片目の視力を失った結果、相対する人間の脳中の思考の一部を映像として捕らえることができる特異能力を備えるかと思えば、娘婿が死んだという事実を受け入れられぬあまりに、一族の人間の視覚情報から婿の屍が欠落する・・つまり死体が目の前にあるのに見えないという異常な状況が発生したりすることは、「脳」が果てしなくミステリアスな器官であることを実感させる。私達が五感を通じて知覚しているはずの「現実」も実は脳が織り成す幻想である･･･ということもあり得るかもしれない･･･なんてところまで想像は続くのである(笑)最後に、こんな身も蓋もない言葉で締めくくるのもなんだが、京極作品にはやはり女性ファンは少ないだろうなぁ^^;

  2006.03.09

• 恩田陸さんを見くびっていました･･･反省！

  　恩田陸著「象と耳鳴り」を借りて読む。本当はオダギリさんの日記に触発されて「光の帝国」を探しにいったのだが、さすが人気作家であるからほとんどの作品が貸し出されてない。数冊かろうじて残っていた作品の前でしばらく思案した上でこれを借りてきた(別に悩むほどの冊数が残っていたわけではないので、全部借りてくることも出来たのだが、どうも私はそれが出来ない>▽

  2006.03.04

• あいかわらず京極夏彦･･･感服の一冊

  　　京極夏彦御大の「巷説百物語」を堪能中。さすがの面白さ。あまりによくできているので一気に読んでしまうことが惜しまれる。この本、全て巷説の物の怪の仕業をなぞらえて進行するが、どれも最後には生身の人間の悪行であったことが明らかにされる。しかし手練の闇仕事人(?)達が巧妙な仕掛けを用意するおかげで、悪人達は仕置きに遭い死を遂げるものの彼らの行状は闇に葬られ、世間では物の怪が存在し引き起こした怪事だったという幕引きになるのである。人間はいつの時代にも人間が考えるよりはるかに狡知で残忍で悪辣な存在なのである。近世までは人智の及ばぬ「物の怪」の存在を信じることで、人間が持つ底知れぬ負の面が露になることがなかったのだろう。翻って今は科学技術が目覚しく発展したことで、全ての事象が化学的分析により白日の下に晒されている。それはそれで喜ばしいことではあるけれど、反面かつての「物の怪」のように現実の悲惨さ、陰惨さに紗を掛けてくれる存在はもう無い。どちらがよいのかはここで断じかねるけれど、遠い昔に憧れを感じてしまうのも事実である。　

  2006.02.27

• 京極氏の実力を思い知った「巷説･･･」

  　京極夏彦の「続巷説物語」は非常に面白かった！読み終えてしまうことを惜しみながら日曜日から読み始めた本を今日の昼休みに読み終えてしまったのだが、今更ながら京極氏が人気作家である所以を思い知ったという感じである。今までは恥ずかしながら氏に対して「怪奇モノを好んで書くキワモノ作家」だという偏見を持っていたのだが、ところがどっこい(+＿+)この作品中には悪事に手を染めて堕ちていく人間のどうしようもない性の悲しさが満ち満ちている。2作目を先に読み順序をたがえてしまったが、即シリーズ１作目の「巷説物語」を図書館で予約したことは言うまでもない。

  2006.02.21

• 手練の作家・京極氏の小説に救われる

  精神の不調は身体の不調を引き起こす、ということを今朝方身をもって体験し、いたく反省した私ですが、今日はもう一つの発見。気分が晴れずもやもやしていた先日、借りていた京極夏彦の著作「続・巷説百物語」を読み始めてみるもこれがさっぱり面白くなかった。中篇数編を収録している本なのですが、一作目を読んで正直ほとんど興が乗らなかったものだから、部屋の片隅におっ放り出しておりました。今日、思わぬお腹の不調で、強いて外出するのもよくなかろうと思い暇つぶしに、いつでも投げ出せる態勢(?)でもう一度手に取ったこの本が実に面白い(笑)！どうやら先般来の精神不調時に、私の眼鏡は相当曇ってしまっていたようです。こんな面白い小説を読んでも気分がふさぎこんでいたのだから、そりゃぁ浮上のきっかけも掴めまい^^;つくづく気鬱は百害あって一利なし。そんな気分に陥ったときには早々に気分転換を試みて悪循環を断ち切るべし。鬱に任せて景気の悪い面をさらしていた私は実に大人気なく、未熟であった！とつくづく反省しました。

  2006.02.19

• 南方熊楠･･･ってなんだか植物の名前みたいだよね

  　ここ数日持ち歩いて読んでいる本は「南方熊楠随筆集」です･･･(笑)全く通勤時にちょっと読むならもう少し違ったセレクションもあろうかと自分でも思うのですが、ここのところむしろ意固地になってこういう本を選ぶ傾向があるからこれから私、どうなるんでしょう･･･^^;しかしまぁ口語体でない文章は相当読みづらいけれど、これが意外に興味深いのです。博覧強記でありながら、記録ばかりに頼らず己の目で確かめた事実を重んじる偉大なフィールドワーカー、という人物像は昨年末に読んだ佐野真一氏の著書「旅する巨人」の宮本常一氏にも通じるところがあり。いつにも増して何を言いたいのか(自分でも)さっぱりわからず迷子になったかのような感がありますが^^;、今の時代でも意外にイケてるんじゃないでしょうか、南方先生。

  2006.02.10

• 佐賀のがばいばあちゃん

  　島田洋七の「がばいばあちゃん」シリーズ第二弾(タイトル忘れた)を人から借りて読んだ。通勤電車の３０分足らずで読み終えられるお誂え向きの本。これがなかなか面白い。私は未だにお笑い芸人の中で洋七が一番好きなのだが(笑)、そんな贔屓目をさっぴいてもばあちゃんの言葉はなかなか味わい深い。もう手垢の付いた感のあるタケシや武田鉄矢の母親話に比べれば随分新鮮だし。思うに戦後モノのない時代に、生活は貧しくても親やその親から愛情のこもった厳しさできちんと情操教育されている世代(一般的にはそうだろう)は人間的にも真っ当。･･･雲行きが怪しくなるのは７０年生まれくらいからではなかろうか。

  2006.02.09

• ご馳走帖にご馳走様！

  　ご馳走帖を読了。予想に違わない百ケン先生の世界を堪能。彼のお師匠である文豪漱石の綺羅星のような名作達を読むのも勿論楽しいけれど、一方で昭和初期文学界の仇花(というのも極論であるが、漱石御大などに比べれば仇花でしょうよ^^;)百ケン先生の、教科書には載らぬであろうが軽妙洒脱で一度読むと癖になる文章を読むのも筆舌に尽くし難い楽しみがある(笑)何たって、表紙裏の著者紹介部分に掲載されている写真が人を喰っている(笑)一筋縄ではいかない爺さんであったろう百ケン先生の上半身写真の背景には、ふすまの引き手部分が大写しに･･･何だ、これ自宅で撮った写真じゃないのかい?!>▽

  2006.02.01

• テニプリを手にした旧世代の感想は

  午後の二時間余りを某漫画喫茶で過ごす。最近は漫画の守備範囲がとんと狭くなってきている。１０年くらい前までは、漫画も小説も音楽も極めて雑食(特に悪食だったとは思うけれど>▽

  2006.01.28

• 「ご馳走帖」につまった素敵な変人のエッセンス

  　百ケン先生の「ご馳走帖」という随筆集を読んでいる。やはり面白い。「ご馳走帖」ったって、いわゆるグルメエッセイではなく、徹頭徹尾百ケン節である(笑)百ケン節がご馳走>▽<しかし昨今はこういう頑固で偏屈で洒落の効いたオヤジがいない。さがせばいるかも知れないが大抵は社会不適格の烙印を押されて終わりであろう^^;･･･というわけで、とにかく百ケン先生の遺された作品達をありがたく読むしかない。

  2006.01.25

• 乱歩賞受賞作「天使のナイフ」

  　二週に一度は出かける図書館で昨日借りた本は「天使のナイフ」(薬丸岳)。江戸川乱歩賞受賞作で、どうやら私は１０月に予約を入れてから３ヶ月待たされていたらしい(笑)･･･当の私は３ヶ月前に予約を入れたことさえ記憶になく^^;「本がご用意できました」とのお知らせはちょっとしたサプライズだった(苦笑)感想･･･少年法を取り扱ったこの作品、面白くないわけではない。ストーリーは上手く運んでいると思う。最後に思いがけない伏線もある。その割に読後、満足度が低かったのは巻末に収録されている同賞選考委員の一人、乃南アサ氏の評中言及のあった「日本語表現そのものの未熟さが目立ち」「人物造形が平板である」辺りに原因があると思う。まぁ新人だから致し方なかろうが。ただ「日本語表現が未熟で」「平板な人物造形」とは新世代の書き手に共通する特徴である気もする。そんなことを言い切れるほど本を読んでいるわけではないので何ら説得力はないだろうが^^;特にミステリージャンルの場合、質の高いストーリーを構成する能力と魅力ある文章を書く能力を併せ持つ作家であって初めて傑作を生み出せるのだが、如何せんそういう作家の出現はまれですよね。ミステリーって安直に手に出来るジャンルではあるが、完成度が低いものは意外に読み進まないし暇つぶしと割り切ってさえ手を出す気になれんのである。

  2006.01.22

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