世界の中心で叫ばなければいけないことは愛じゃないでしょう
年末年始に図書館から借りこんだ本の一冊に「三島由紀夫全集31巻」があった。ハードカバーで700頁弱、正月休みを三島と心中する覚悟でもなければとても読めたものではなく、主に評論、随筆の類の小品が掲載されているので拾い読みに終始した。その中に「世界の静かな中心であれ」という2頁足らずの文章がある。これはよい。まずタイトルがいい。昭和34年に発表されたこの文章では、終戦後の混乱、貧困からひとまずは脱却した日本がこれからは古代ギリシアのごとくバランスのある思考をもち真の現実主義を我がものにした国家になるように、と説いている。翻って今の日本が真にバランスの取れた国家に成長したかどうか、ということを考えると、45年以上前に発せられたこの言葉はその頃読者が思ったよりもずっと重かったということでしょう。