エレファントピア

2009/08/26(水)16:11

「ゴモラーGOMORRAH」を観た。

映画(75)

ゴモラ(2008年) 監督:マッテオ・ガローネ 原作:ロベルト・サヴィアーノ「死都ゴモラ」 第60回カンヌ映画祭 審査員特別クランプリ受賞作品 Wiki→ ☆  イタリア ナポリの犯罪組織カモッラを題材に描いた原作の映画化。 私はこれまでマフィアというと、アメリカ映画に観るようなスタイルとしてのイメージしかもっていなかったのですが、この映画を観て初めてマフィアという組織が実態を持って迫ってきたように思います。遠いヨーロッパの一国の一地域の物語…ではありません。巨大な組織であり、実は世界中の投資にも関わってもいます。 そして地域にしっかりと根付いている。人々はそこで生まれ、そこで死ぬ。抜け出すことは困難であり、しかもイタリアという国自体がこういった組織に蝕まれると同時に利用していて、共存関係にあります。 是非いろいろな人たちに観てもらいたい、と思った映画です。 ただ「観やすい」映画ではありません。日本人にとってはなじみの薄い俳優さんばかりだし、素人が演じている役もあるので。 5つの物語が描かれています。 1.カモッラが根城とする団地(!)に暮らす男。カモッラと対抗組織の抗争で死んだメンバーの家族に、カモッラからの(!)生活保護のお金を渡す役割。メンバーも家族も皆団地に住んでいる。。 2.同じく団地に暮らす少年。12-13歳くらい。ある事件をきっかけにカモッラメンバーとなる。本人もずっとメンバーになる機会をうかがっていた。 3.カモッラとは一線を画す、映画好きの2人の若者。あえてマフィアメンバーにはならず、マフィアから武器を盗んだり、麻薬を盗んだり、「独立して」悪さをしている。 4.イタリア高級ブランドの衣服を製作する衣料工場のパターンナーの男。のちに高額で中国人衣料工場オーナーに雇われ、秘密で中国人の工場のトレーナーとなる。 5.廃棄物を扱うビジネスマンと彼の助手。 ーーーー 以下、ネタバレです。念のため。。 私は、↑の4と5の物語が好きでした。 4の物語では、高級ブランドの質を確保してきた能力あるイタリア人パターンナーが、不当に搾取され、低額の給与しか与えられていない様。その隙をついて、中国人がこのビジネスに参入し、その技術をイタリアから奪っていくのか。。が、興味深かったです。パターンナーは秘密で表ざたにはできないとは知りながらも、高額の謝礼をもらい、中国人たちからは「マエストロ」と呼ばれて、とても幸せそうでした。彼自身、それまで自分の技術にいかに価値があるのかを知らなかった。 映画の中では彼らは攻撃され、この企ては失敗に終わりますが、実際には今でもこうして技術流出は日々起こっているのではないかと感じました。 5の物語は、豊かな北イタリアの工場から出た産業廃棄物を、貧しい南イタリアの鉱山跡地や団地建設予定地などに放棄していく様。さらにその違法性を隠すために、廃棄物は「堆肥」として政府機関に報告されており、その「堆肥」を貧しい南の農家に売りさばく…というビジネスが描かれています。 これは5つの物語の中でも、最も興味深く、しかも直近に恐ろしい内容です。 スカンピアと呼ばれるこの地域の発ガン率は、イタリア他地域と比較すると20%も高いとか。また奇形児の誕生も8%高いとのこと。(DVDのインタビューを見ただけなので、多分…詳しくは原作にあると思います。) 南イタリアは穀倉地帯。小麦を作っています。その小麦は何になるのか?どこで消費され、誰の口に入るのか… そう考えると全くもって、人ごとではありません。 パスタやオリーブオイル、トマト缶、オレンジ…今や世界の食は繋がっています。 私も昨日買って来たパスタは「イタリア産」とは書いてありますが、イタリアで作っていても、どこの小麦を使っているのかなど、分かりません。北イタリアかもしれないし、南かもしれないし、はたまたロシアかもしれない…。でもパスタのゆで方の説明は15ヶ国語で書いてありました。しかも買ったのはカンボジアで…。そう考えるとひとたび食品が汚染されると、被害者はまさに世界、ということになります。それを避けるためには、土地と水を汚染しないしかないのだと思います。 話が逸れましたが…。 原作者のロベルト・サヴィアーノはナポリ出身で、幼い頃からカモッラのあり方を観察してきた人。この本を書いたばかりに、カモッラから殺人予告を出されており、国外退去を余儀なくされました。現在はインターポールの保護を受けながら、今だホテルを転々とする毎日だと聞きます。本は世界中でベストセラーになりましたが、本人は周囲に「出版するのではなかった。。後悔している。」ともらしているそうです。 マフィアがこの世界を席巻している限り、彼の後悔は続くでしょう。でも私は、この本が書かれ、この映画が作られ、ほんとうによかったと思います。 多くの人に見てもらいたい作品です。 本→ 映画→

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