2009/07/03(金)19:31
ブログ物語:前編(再)
今日の日記(「魔女裁判」「メイド刑事」とバタバタな日☆)
「ブログ物語:前編」
ネネは、6歳の息子を持つ主婦だ。
幼稚園に通っているが、その時間を忙しく仕事をしたり、
友人と会ったりして過ごしていた。
が、何か満たされない日々。
それが何なのか、彼女にはわからなかった。
ネネは、映画やドラマを見たり、本を読んだりするのが好きだ。
でも、それは一人っ子だから続けられること。
「昨日のドラマみた~?」
「ううん、下の子がグズるし、寝かしつけてたら寝ちゃった~」
「あの人カッコ良くない~?」
「アレ見てるんだ?若いね~!面白いの?」
「最近、映画観てる~?」
「ううん、忙しくて~。」
あー、何だか淋しいなぁ。
周りは子供の習い事や、仕事に翻弄されているらしい。
ネネも仕事や、ちょっとした手伝いなどで、時間は無いことは無いが、
趣味のための時間を楽しむために、やりくりして時間を作っていた。
が、その趣味をいっしょに楽しむ相手が周りにいないことが、
淋しかったのかもしれない。
夫と過ごせる時間は、会社から帰ってきてからの数時間。
子供がいるとアッという間に過ぎてしまう。
いっしょに趣味の話を楽しめた友人、タカコは、遠くに引越してしまっていた。
メールのやり取りを続けたある日、ブログを始めたとメールが来た。
「良かったら見てみてね!」
ブログ…?
ネネは教えられたアドレスをヤフーに入れてみた。
すると、タカコが作った料理の数々や育児日記が!
「うわ~、すごいじゃん、タカコ!」
これには息子のリンも大喜びだ。
こんなの作れたら、リンも喜ぶんだけどね~。
自分には無理と思ったものの、マネしていろいろと作ってみた。
ネネは、出来たものが嬉しくなって、写真をパチリと撮って見た。
ネネはタカコに教えてもらって、ブログを自分も書いてみることにした。
こうしてネネのブログ生活が始まった。
管理画面を覗いていて、
自分のところを見てくれる人のブログも覗いてみるようになった。
興味のあるもの、面白いと思ったものは、お気に入りに入れてみた。
コメントを書くと訪ねてきてくれる人もいる。
ネネは何だか楽しくなった。
幼稚園のお友達との会話のように、無理やり会話を作らなくて良い世界。
自分に遭った出来事を画面に書いていくことで、ネネの心の空白が埋まっていく気がした。
映画のブログでは、観てみたかった映画を思い出させてもらい、
家を建てるブログでは、
自分もいっしょに建てる人間になったような気がした。
悩んでいる女性のブログでは、
自分に起こった出来事かのように、いっしょに悲しくなり、
子供のことを面白可笑しく書いてあるブログには、
我が子に起こったことかのように笑った。
そんなブログを読む日々が続いたある日、
何かの感想からか、
楽しく恋愛について考える内容を書いている男性のブログをみつけた。
そこには、自己プロフィールのバトンが載っていた。
「あら~、この人、うちのパパと同じ身長なんだ?」
ちょっと親近感が湧いた。
男性のハンドルネームは、ルパン。
ネネの好きなルパン三世を、彼も好きでつけた名前のようだ。
夫と昔、「カリオストロの城」をデートで観た時のことを思い出すネネ。
観た後は、子供の頃を思い出したかのように、二人とも素直になれたっけ。
ネネは早速、ルパンを「お気に入り」に登録した。
ルパンの歳はネネの4つ下だった。
ふぅ~ん、若いわね!
ネネは自分が4年前はどうしていたか思い出す。
リンが2歳になり、一番大変な時期だった。
今まではママと一所にどこでも行っていたが、友達を欲しがるようになり、
欲しい物ができて、何でも興味を持ち、
やめるように言っても言うことを聞かない。
家の中では少しずつ話すようになったが、
外では全くしゃべろうとしなかった。
ママ友と呼ばれる人たちと知り合い始め、
育児に迷い、翻弄された日々…。
ルパンのブログの中でバトンに、ルパンの彼女のことが書いてあった。
気が強いんだか弱いんだか、わからない子。
でも、側にいて守っていてあげたい感じ。
クラリス…。
どうやら、ルパンの恋人はフジコではなく、
「カリオストロの城」のクラリス姫らしい。
ふ~ん、私は守ってあげたいってタイプじゃないから、
この人のタイプではなさそうね。
そんなことを考えた。
コメントを書く。
何だかラブラブですね~!昔を思い出しましたよ。ふふふ!
翌日、ルパンのブログを訪ねてみた。
コメントに返事が書いてある。
久々に真面目にノロけてしまったようです。
でも、遠距離なんですよ~。
なかなか会えないんで、守りたくても守れないんですけどね…。
そうなんだ~。
昔、パパとは遠距離恋愛をしていた。
会うといつも楽しくて、別れの時間が来なければいいのに…
そう思っていた。
昔の自分たちのようだ。ますますルパンに親近感を覚えるネネ。
が、ルパンのブログは私生活が全く書かれていない。
あるのは映画の紹介や、気に入った曲の紹介、或いは何かの感想ばかり。
でも、その内容はネネが知ってるものが多かった。
なのでコメントも書きやすかった。
これ面白いですよね~!
でも、男性って、あまり恋愛にハマらないみたいですね。
いつも仕事や他の事に夢中になってて。
書いているうちに夫のことを思う。
付き合っている時は、あまり話さない人だった。
時々ポツリと話す映画の感想が面白くて、あちこち見に行った。
結婚してから、こんなにいろいろ考えていたのか、
と思う位話すようになった。
いや、もともとそういう人なのかもしれない。
テレビを見ては思ったことをコメントしている。
時にはテレビに話しかけてるんじゃないかと思う位だ。
ネネは逆だった。
ネネは家では静かだった。
ボ~っと、何かが流れていくのを見るのが好きだ。
なので、流れていく夫の話も楽しい。
パパは、仕事ばかりじゃなかったな。
そんなことをネネは思う。
真面目に働くけど、仕事は金を稼ぐ手段であって、
趣味はあくまでも別と思っている感じがする。
稼いだお金を趣味や楽しみに使うタイプなのだ。
そう考えると、自分のこのコメントは、
夫タイプの男性に当てはまらないかもしれない。
でも…
まあ、いいか。
ネネはそのままコメントを送った。
ルパンのブログは、ルパンが多忙なために返事がなかなか書かれない。
もうネネもそのコメントのことは忘れかけていたある日、
コメントの返事が書かれているのを発見した。
僕は、そうでもないです。
好きな人と会った時はその人との時間を楽しんで、
ハマっているような気がするし、
会ってない時は目の前のことに取り組みます。
この話のように、自分に才能がないから、
そこまで打ち込まないってことかも しれません。
あはは。パパのようだな~。
そう思うと、昔の夫と話しているような錯覚をネネは覚えた。
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