カテゴリ:短編小説
今日の日記( 新ドラマどれ観る?2009夏新ドラマチェック!)
「ブログ物語:後編A」 ルパンのブログもそうだが、自分が見るブログは、 どこかしら、自分が興味を持っている内容が書かれているものが多い。 コメントも、どこかしら優しい。 ブログを書いている人はたくさんいるが、 やはり、類は友を呼ぶではないけれど、 自分の周りにも、自分と気が合う人が集まっているということなのだろうか? ネネがそんなことをフッと考えた時、ブログの画面が揺れた気がした。 何? ネネが更新のボタンを押すと、そこは自分の管理画面ではなかった。 良く見るとそれは、いつも行く、 家を建てていることを書いている男性のハンドルネームが書かれた、 ブログの管理画面だった。 「ママ、オナカすいた~。」 リンが服をひっぱっている。 「はーい、今作るからねぇ」 もう一度画面を見ると自分の管理画面だった。 何だろう、さっきの? 管理会社の不具合とか? ネネは気になりつつも画面を切った。 昨日のアレは何だったのだろう? そう思ったものの、自分のブログを書いているうちに忘れた。 最近ずっと眠い。 そして時々眠ってしまっていたのか記憶がどうも曖昧だ。 今日のブログを書き込み、楽しみにしている他のブログへ行こうとしたその時、 いつもと違う、自分のものではない管理画面が現れた。 そこは、ネネに優しいコメントをくれる、女性の管理画面だった。 ネネが更新を押すと、 次に表れたのは映画の紹介をしてくれる男性の管理画面、 次は子供とのことを書いているお父さんの管理画面。 次は育児にたいへんなお母さん、 ゲームが好きな男の子、 音楽を紹介してくれる高校生、 写真が好きな男性、 小説が好きな女性、 面白い画像を紹介してくれる男性…。 様々なブログ管理画面が表れ、最後にルパンの管理画面が表れた。 今日の日付の日記が書かれている。 ”neneさん、もう大丈夫でしょう?” 「ああ、そうだったっけ…」 ネネが呆然として振り返る。 後ろには、リンをダッコした夫が。 「どうした?ネネ? …それとも今はルパンなのかな?それとも違う誰か?」 「ううん、今はネネよ。 もうきっと、誰にもならないわ。」 夫はうつむいていた。 「ごめんな。オレがあの時あんなに仕事が忙しくなければ… 4年前のオマエが一番大変な時期に…。」 「大丈夫だから。ルパンもそう言ってるわ。 今日、お別れの管理画面が出たの。」 ネネは夫と息子にそっと抱き寄った。 夫が涙を流していた。 ネネも涙がこぼれた。 でも、もう大丈夫。 みんなが大丈夫だって言っている。 外には桜のつぼみが開き始めていた。 <終わり> 「ブログ物語:後編B」 ネネは、ルパンにメッセージを送った。 「ルパンさんは、私の夫の若い頃と似ています。 うまく説明できないんですけど、感想とか、考え方が。」 ルパンから返事が来た。 「そうなんですか?じゃあきっと面白い人なんでしょうね!(笑)」 ますます昔の夫のようだ。 ネネは、あの頃のドキドキした気持ちを思い出していた。 夫から誘いの連絡が来ると、仕事が終わるのが待ち遠しかった。 携帯のショートメールでは、冗談が絶えなかった。 「実は私も遠距離恋愛してたんです。今の夫と。 7年前に、夫と結婚することになり、今に至っています。 ルパンさんの恋愛が成就するといいですね!」 ネネはルパンとのやり取りを楽しみにするようになった。 夫には悪いが、ドキドキした気持ちが昔に返ったようで嬉しかった。 ネネはどうやら恋をしてしまったらしい。 でも誰に? 会ったことのないルパンが、若い頃の夫とダブる。 最近、夫は息子に夢中だ。 ルパンはそのうち彼女、クラリスとのことを書かなくなった。 でも、最初のうちは、こんなことが書いてあった。 「neneさんと話していると、彼女といるみたいです。」 その夜、ルパンからメッセージが来た。 「neneさん、どうやって旦那さんは、neneさんのハートをゲットしたんですか? 実は、先程、彼女と久しぶりに会って、帰り際、彼女が泣き出してしまったんです。 でも、電車のドアが閉まってしまったので、どうにもできなくて…。 ショートメールをすぐに出したんですが、返事が来なかったんです。 以前もこんなことがあって、その時は返事が来たのに。 このままでいいのか迷っています。」 ネネは、自分と夫とのことを思い出していた。 あれは、結婚を決めた日だった。 ホームにいた。 自分は帰りの電車に乗りこんだ。 また離れるのがつらかった。 思わず涙がこぼれてしまったけど、心配をかけるのが嫌で無理に笑顔を作った。 「どうして泣きながら笑うの?」 と、心配そうに夫が言った。 「ううん。何でもないの。」 その瞬間にドアが閉まった。 電車が駅から離れていくと、携帯が鳴った。 夫からのメッセージだった。 ”ダイジョウブ?” ”ダイジョウブダヨ” そう書いて送った。 ”モウ、ハナレテルノガツライ” 次に、そう入力したものの、送るのを迷った。 消そうとした時に、乗客がネネにぶつかった。 「あっ。」 その拍子に送信ボタンが押された。 自分の駅に帰った時、ネネは電話をしてみた。 「…ごめんね。」 「何で謝るの?」 「何となく…」 「…」 「どうしたの?」 「オレさ…、電話じゃ嫌だったんだけど。…結婚しよう。」 これがきっかけだった。 あの時に乗客がぶつかっていなかったら、ネネは間違いなく電話をしなかった。 ルパンの彼女が自分のように思えた。 「私も、同じようなことがあったんです。 あの時、返事を出したので、夫から電話が来て結婚することになりました。」 うまく書けたかわからなかったが、ネネは返事をすぐに書いた。 数日後、ルパンからメッセージが来ていた。 「結婚することにしました! neneさんのメッセージが来なかったら、今頃すれ違ってしまっていたと思います!」 ネネは自分のことのように喜んだ。 が、続く文を読んで驚いた。 「実は彼女の名前はネネっていいます。 なので、neneさんとメールをやり取りすると、 彼女の気もちを教えてもらっているような感じがしてました。 30歳になる前に結婚を迷っていた時期があって、 それが、neneさんの結婚を決めた時期と同じです。 neneさんは今、旦那さんと幸せそうな感じですよね。 僕もあの時に結婚をしていれば、そんな家庭が持てたのではないかと思いました。 今、決めてみて本当に良かったです。ありがとうございます。」 ネネは、不思議に思った。 あの時、ぶつかっていなかったら、私も結婚していなかったかもしれない。 でも、結局は遠距離恋愛を続けて、夫と結婚することになったのかもしれない。 しばらくして、ルパンからメッセージが来た。 結婚したらしい。 「5月25日に結婚しました。」 ネネは驚いた。 それはネネが結婚したのと同じ日付だった。 偶然って、あるものなんだ~。 ルパンのブログは相変わらず、感想や面白かったことの紹介、 仕事で思ったことが綴られていた。 しばらくしてまた来たメッセージに驚愕した。 「息子が生まれました。リンって名前です。4月15日生まれです。 あの時のメッセージのやり取りがなかったら、授かってなかった命です!」 ネネはリンと言う本名をブログに載せていなかった。誕生日も。 恐る恐るメッセージに返事を書く。 「おめでとうございます。私の息子もリンって言うのが本名なんですよ。 誕生日もいっしょです。 まさかと思いますが、ルパンさんの本名は、ユウヤって名前じゃないですよね?」 返事はすぐに来た。 「そうです…。」 ネネは数日迷って、メッセージを書いた。 「では、お願いがあります。どうか、息子さんを大事にするのと同じように、 奥様のことを大事にしてあげて下さい。 そうじゃないと…」 ここでネネは書いて良いのか、また迷った。 「奥様の気持ちは貴方から離れます。」 リターンボタンを押そうか迷っていた時に、リンの蹴ったビーチボールが手にぶつかった。 「あっ。」 送信されてしまった。 いつもそうだな、私。 ネネはため息をついた。 その夜、夫が花とケーキを買って帰ってきた。 「何で?今日って何の日だっけ?」 「結婚を決めた日」 日付はネネ自身も忘れていた。 ルパンには、その時の出来事を送ったくせに。 ちょっと涙が出た。 ネネはその晩珍しく、夫と映画を観た。 付き合っていた時のように、手を握りあった。 以来、ネネは夫と映画を観るようになった。 心の空虚感は、いつの間にか無くなっていた。 ネネはルパンのブログを覗く。 今日は珍しくルパンの家族のことが書いてあった。 向こうの世界でも夫は幸せらしい。 そして私も。 ネネは微笑んで、今日も自分のブログを書いた。 <終わり> 「ブログ物語:後編C」 ネネはルパンと会うことになった。 ルパンは福山雅治と真田広之とブラッドピットとキアヌリーブスと TOKIOの長瀬とV6の岡田と水嶋ヒロと佐藤健を 足して3で割ったような顔立ちをしていた。 「どうしよう。好みのタイプかも!?」 ネネは心の中で思った。 ルパンはハリソンフォードのような強引さを持った話し方をし、 雰囲気はオダギリジョーのようにクールだった。 笑うとヨン様のように優しい顔になる。 「まずい~、胸キュンかも~」 ネネは心の中では夫に詫びつつも、目の前のルパンに夢中になった。 ルパンとネネは喫茶店から出ると、ネズミーランドに行くことにした。 「忙しくて、お金を使う暇がないんです。 だから、今日は使わせて下さい。」 「いいんですか~?」 ネネは絶叫系が好きなので、ガンガン乗らせてもらった。 でも、歳なのか気持ち悪くなった。 ルパンもそうらしい。 「若いくせに~!」 「歳は関係ないですよ!」 笑った顔がまたカワイかった。 きゃあ~!助けて~! 夜が来た。 「夕食はパレードを見てから外に食べに行きませんか?」 ルパンとネネは高級リゾートホテルで食事をすることになった。 夜景が美しかった。 「こんな高級なもの、良いんですか?」 「さっきも言ったじゃないですか。お金を使わせて下さい。」 そして、食べ終わった頃に店がいきなり暗くなり、 ハッピーバースデーの歌と共に、ワゴンにケーキを載せた店員が。 「ネネさんチョコレート系のケーキ好きって言ってましたよね? お誕生日おめでとうございます。」 「わぁ~!好き好き、大好きです!すっごい嬉しいです!」 食事が終わると、ルパンは車で送ってくれた。 「ネネさん、今日はありがとうございました。」 「いいえ、こちらこそ、とっても嬉しかったです。」 「そうだ、コレ…。」 ルパンは赤いリボンのついたプレゼントをネネに渡した。 開けてみると、まるで、どこかから盗んだような高級アクセサリーが入っていた。 「こんなスゴイもの受け取れないですよ!」 ルパンはネネをみつめる。 「いえ、あなたが身に着けてくれると嬉しいんですよ。では。」 ルパンはそう言って、ネネの心を盗んで去って行った。 「誰か、彼を逮捕して…」 ネネはステキな誕生日を迎えることができた。 あれ?子供と夫はどこに行ったのだろう? <おわり> 前の話を読む お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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