カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記(スペシャルドラマ「働くゴン!」感想と昨日のお出かけ☆)
「ある女の話:アヤカ37」 会社生活はちょっと変化。 新入社員の赤木さんのせいだ。 ホントはまだ赤木くん…って感じなのだけど、 以前働いていた会社で、パートの女性が正社員を「くん」付けで呼んでいた。 それが何だか偉そうに見えて、 私はイヤだったので「さん」付けで呼ぶ。 みんなが「くん」で呼んでる中、変かもしれないけど。 この赤木さんが、 私と電話を取るのを競っているみたいなのだ。 会社の電話は鳴る直前に赤いランプが点滅する。 その時すぐに取るようにしているのだけど、 赤木さんは仕事が覚えることだけだからなのか、 点滅した途端に取ったりする。 取ると、私より先に取った!って感じで、 何だか嬉しそうだ。 最初は習慣で、忙しいのに取ろうとしたら、 先に取られているから、 なんだよー! って思ってたけど、 慣れるとこれが結構楽しい。 周りも気付いたらしくて、 何競ってんの? テレクラの練習かよ? って、笑ってた。 そのせいか、部署の空気は何だか和やかだ。 最初は生意気だって言われていた赤木さんも、 伝言を人の机に置くことで、 誰がどこの机で、どの人なのかわかっていったらしくて、 だんだん馴染んでいった。 「タカダさんの部署の赤木くんってさ、 結構、即戦力になりそうじゃない?」 隣の部署で社員のカンダさんが言う。 彼女は私と同じ歳で、 サバサバしていて、話が合う。 「うん。生意気なヤツって言われてたけど、 言うこと的を得てるから、いーんじゃないかな? って言うか、腰巾着な人よりいいよ。 何考えてるかわからない、 意見言わないで上手い事ヘラヘラしてる人よりね。」 私が言うと、 言えてる~ってカンダさんが笑った。 それに結構カッコいいよね。 まあ、そんな感じで、 私たちが言ってることが、だんだん部署に浸透したって言うのもあったみたいで、 彼はすっかり頼れる新人になっていった。 人見知りが強かったのかもしれない。 最近よく笑うようになった。 多分、偉そうだったり、生意気そうに見えるのは、 思ったことをハッキリ言うからで、 それを曲げない。 強い意志みたいなものを持ってる気がした。 なのに、ちゃんと、謝る時は謝るし、 自分の非も認める。 素直だったりする。 なんだろう? 自然と目立つ? ハキハキとした大きな声がよく通る。 赤木さんはそんな人だった。 部署でまた飲み会があって、 私はカンダさんに付き合って行くことにした。 少ない女子はバラバラに散って、 男性社員にお酌してまわることが多い。 今日、私が捕まったのは、 注いだら、飲めよ!って言う人で、 仕方なくカンパイしてから空きっ腹にビールを飲んだら一気にまわった。 うわぁ~。 今日はヤバいかもしれない。 タカダさん!こっちおいでよ! って誰かに言われて、他のテーブルに移る。 そこには赤木さんがいた。 「赤木さん、これ、注いでもらってもいいですか?」 私は空いたビールをもらって、 新しいビールを注いで回る。 酔ってきちゃったので、つい赤木さんを頼りにさせてもらう。 まあいいよね、電話番仲間だし。 「タカダさんのところは、子供まだ作らないの~?」 社員さんが聞いてくる。 「ええ、まだいいですよ。」 「週に何回くらいHしてるの?」 始まった! 何て返事すればいいんだよ~! 「先輩のとこは何回してるんですか? まさか、結婚してるから毎日とか?」 返事を何て言うべきか迷ってると、 赤木さんが何気なく聞いた。 助かった気がした。 「何だよ赤木?俺にふるかぁ~? タカダさんのことかばって~ カッコつけて~。」 「いや、俺ホントに先輩の性生活に興味アリ!」 真剣に赤木さんが言うので、 その先輩がビールを噴出し、 みんながゲラゲラ笑う。 「俺?俺は女房がするの好きじゃなくてさぁ~! マジで困ってるんだよ! 結婚してるのに一人でって空しいぜぇ~!」 みんながまた笑う。 「で、タカダさんは~? 他の家がどうなのか気になる~。」 ああ、もう何でまた私~! 「ご想像にお任せしますよ~!」 「やべー!すげー想像しちゃうぞ!」 みんながドッと笑う。 もうどうでもいっか~!って私も笑う。 「結婚するとそんなもんなんですか?」 大真面目に赤木さんが話をふった先輩に言う。 「う~ん、そだなあ。 少なくとも俺のとこはそうだよ。 子作りマシーンだな。種馬ってやつだぁ。 排卵日しかやりたくないらしいぞ! 拒まれる!」 これまたみんなが爆笑する。 酔ってるせいか笑い過ぎてオナカが痛い。 「でも、俺は何だかカミさんは女って感じが薄れたなぁ~。」 他の人が言い出す。 「それって冷めちゃうってことですか?」 赤木くんが更に訪ねる。 「いや、愛はあるんだよ。愛はさ~。 何だろう? 家族とするって感じ? あんま性欲沸かないんだよなぁ~。」 「あはは!わかるわかる。」 「俺は、わからねぇ!」 男が本音を次々と暴露していく。 はいはい。 結婚した女は女じゃないんですね。 でも可笑しい。 そのテーブルの独身男性社員は興味津々で聞き入っていた。 私もそんな本音が聞けると思ってなかったので、 つい飲みながら聞いてしまう。 コレは赤木さんが会話を引き出すのが上手いからなような気がした。 う~、今日はかなり酔った。 久しぶりに楽しい気分になっていた。 自分も男の仲間入りみたいだ。 お陰で今日は飲み過ぎで気持ち悪い。 トイレから戻るとみんな二次会に移動しようとしていて、 私はそれにくっついて行く。 でも、何か今日はもうダメだ~。 赤木さんがこっちを振り返った。 「赤木さん、私、ちょっとココで休んでから帰ります…。」 私がファミレスを指さして言う。 「え?大丈夫ですか~? じゃあ、俺、付き合いますよ!」 「いや、そんなの悪いんで、 どうぞ皆さんと行って下さい!」 「いや、この先暗いし、 一人だと帰り危ないですよ。 大丈夫ですよ。俺、襲いませんから。 彼女いるし。」 ホント、はっきりした人だなあ。 そんなことぼんやり思いながら、ファミレスでお茶を頼んだ。 「タカダさんは結婚してるんですね?」 「そうですよ。 赤木さんより、4つも上です。」 「え?!4歳上?! そうなんですか?!」 「なぜそんなに驚くんですか?」 「いや、見えなかったから。 そっかー。」 「喜んでいいんだか、ちょっと複雑ですね。」 「すみません。若く見えました。 同じ歳くらいかと…。 タカダさんて、年上なのに、 年下の俺にもキチンとした言葉使ってるんですよね? ずっとそうなんですか?」 「派遣ですから。 会社ってそんなもんじゃないですかね?」 「何だか変ですよ~。俺新人だし、タメ語でいいッスよ~!」 赤木さんがくだけた感じで言う。 「そんなのダメですよ。赤木さんは、社員さんなんですから。」 「そうですか?どうもスミマセン。」 赤木さんがペコリとお辞儀したので、私もその調子に習う。 「あ、こちらこそゴメンなさい。」 目を合わせて笑った。 面白い人だなぁ~。 ホント、同級生みたい。 小学校の時の、男女の差がなかった頃を思い出した。 異性を異性として意識してないって言うか、 あの楽しかった頃。 エリや、ヨッちゃん、ヒロトと遊んでた、 昔の懐かしい故郷の空気を思い出させてくれた。 何だろう?この馴染みの早さ。 それがとても不思議に思えた。 ホームで電車を待つ。 「タカダさんて、いつも本読んでますよね? 何読んでるんですか?」 ああ、って私は今読んでる本を答える。 へぇ~、俺、その人の小説だけは読むんですよ。 赤木さんは嬉しそうに言った。 私も何だか嬉しくなった。 「読み終わったら貸しましょうか?」 「いいんですか? 買おうかと思ってたんですよ~!」 ホントに嬉しそうだった。 私も周りで本を読むような人がいなかったから、 ちょっと嬉しかった。 なので、翌日メールを何となく出した。 昨日はどうもありがとうございました。助かりました。 赤木さんはジェントルマンですね。 私のせいで、二次会行けなくなってしまって、すみませんでした。 無難かな? 昼休みに席に戻ると赤木さんから返事が来ていた。 いえいえ。大丈夫です。気にしないで下さい。 あっさりした短い文だった。 嬉しかったのはこっちだけだったかもしれない。 そうよね、 私は年上の既婚。 あっちは彼女もいるんだし。 …って、何考えてるの、私? まあ、いっかーって思った。 同じ本読んだ感想を話せる人ができたし、 ちょっと会社で楽しみできたかも。 私は読んだ本を袋に入れて、 伝言票といっしょに赤木さんの机の上に置いた。 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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