カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記(「再生の町(最終回)」感想と仕事無事終わりました☆)
「ある女の話:アヤカ42」 会社の帰り、ホームで本を読んでいた。 本屋さんに寄って、新刊をみつけて嬉しくて買った。 結構店にいたせいか、 ラッシュをちょっと避けられたらしい。 いっそいつもこの電車にしちゃおうかな。 ワクワクしながら読んでると、 「今、何読んでるんですか?」 って後ろから声がかかった。 「あ、何だ~、赤木さんか。ビックリしちゃった。」 コレは羨ましがるかも? って思って本を見せる。 「おおっ!流石ですね~!」 彼の反応が思った通りだったので嬉しい。 「でしょ?」 声かけられたのが赤木さんで良かった。 他の人だったら、ちょっと煩わしかったかもしれない。 電車に乗ると、何だか緊張する。 距離が近いからかな…。 「タカダさん、今日の夕食のメニューは何ですか?」 赤木さんから話題をふってきてくれたので、ホッとする。 「今日~? 夫が飲み会なの。 だから、適当でいいんだ~!楽チン!」 「じゃあ、オレと飯食べませんか?」 「え?」 「彼女が出張なんですよ。 帰るの遅いらしいし、 何か一人で食べんのもつまんないし…。」 「そっかぁ~。」 ああ、週末だから彼女のとこ泊まりに行くのね? 赤木さんて、もしかして淋しがり屋? でも、こんなことがあるとは思ってもみなかった。 この前の飲み会後のお茶の続きがいきなり来た気分だ。 私も一人で食べなくていいのは、ありがたい。 変に男だからって、意識しないでいいよね? 私は年上だし、結婚もしてるし、 彼だって彼女がいて、そんな感じじゃないし。 ホント友達感覚、って声のかけ方が嬉しかった。 私が独身じゃないから気負わなくていいのかもしれない。 いいよね、こういうのって。 「じゃあ、いいですよ。どこ行きますか?」 赤木さんの顔がパッと明るくなって、 ちょっと先の駅に飲み屋があるんですよ、って言い出した。 昔はよく行ったんだけど、 まだやってるかな…って。 居酒屋さんかと思ったら、 ちょっと洒落た小さなバーレストランだった。 カウンターの中にいた男性が赤木さんを覚えてるようで、 水を持ってきながら、 久しぶりだね!スーツなんて、落ち着いたんじゃないか? って、ニコヤカに声をかけてきた。 少年みたいな感じを残した、大人な男性だった。 年齢を感じさせないような。 赤木さんが目指してるのは、この感じかな? なんて思った。 赤木さんが、 あの人もバンドやってて、 いっしょにライブしたりするんですよ。 って教えてくれた。 ああ、なるほどね~って納得した。 薄暗い店内には、 人がいっぱいいた。 誰も隣を気にしないで、くつろいでしゃべっていた。 「うふふ。こんなステキなとこで飲めるなんて、今日はラッキー。」 メニューを見ながら喜んでしまう。 ヒロトともあちこち行くけど、 行く場所が決まってしまった。 こういうとこは、教えてもらわないと知らないよな~。 「どれが美味しいかな?私あまり飲めないの。」 「飲めないのは知ってますよ。 じゃあディタグレープフルーツは?飲みやすいですよ。」 「詳しいの?」 「学生の時に飲んでばっかいました! バーテンダーのバイト、友達の代わりにちょっとだけして、 教えてもらったことあるんですよ。」 ふーん、 赤木さんって、バンドもやってたし、 こんなとこに来てたのもしっくりくる感じ。 何だか遊び慣れてそう。 「遊び人だったんだ?」 私は思ったことを素直に聞いてみる。 「そんなことないですよ~。 高校の時遊んでたのが、そんなヤツばっかだったんで。 大学生は真面目してました。 普通逆ですよね。」 「そうかもね。 付き合う友達によって変わるかも…。」 自分が短大の時にツカちゃんと別れてからのことを思い出した。 一時期とは言え、結構派手に遊んでたかも。 あの頃の友達は遊び人ばかりだったけど、 さっぱりして気のいい子ばかりだったっけ。 今はどうしてるかな…。 何となく昔をスルリと思い出した。 赤木さんといるとそういうことが多い。 飲物が運ばれてきて、お疲れ様~!と、乾杯をした。 赤木さんが勧めてくれたカクテルが美味しい。 グレープフルーツジュースみたいなのでついゴクゴク飲んだら、 後から体がポカポカとあったまってきた。 あらら、ホントにこれお酒なんだ? 赤くなってきた私を見て、 ホントに弱いんですね。って赤木さんが笑う。 水を注文してくれた。 でも飲むと楽しいし、美味しいんだけどね~。 「タカダさんは、いつからこっちに住んでるんですか?」 赤木さんが、ビールを飲みながら言う。 「私はね~、実は遠距離恋愛だったの。 夫が、会社の都合でこっちで働くことになっちゃって、 一年付き合ってから、結婚と同時にこっちに来たんだ。 だから…そうねぇ…4年、になるかなぁ?」 以前とは違って、ちゃんと自分のことを話した。 自分を開ける相手がいるって、 何だか嬉しい。 「そうなんですか? じゃあ、こっちに友達とかは?」 「いないの。だからこうして働いてるんだ。 時々、職場でできるけど、親しくならないね~。 でも、一人で昼間家にいてもしょうがないし。 働けるうちは、働かないとね~。」 「淋しくなったりとか、しないですか?」 「う~ん、適当に過ごしてるから。 私ね、待ってる時間は、勝手に過ごしてるの。 オナカがすいたら食べるし、 眠くなったら寝ちゃうし、 夜のショッピングに勝手に行っちゃうし。」 赤木さんが、ちょっと意外そうな顔をして言った。 「ダンナさん怒らないんですか?」 ふうん、赤木さんなら怒るのかな? もしかして束縛くん? 「うん。 怒るなら怒るでもいいんだけどね~。 怒らないよ。 待たれるのって、お互いに疲れない? 私だったら、相手が好きなことしててくれる方が、 自分の気持ちが楽なのよね。 だから、私からそうしてるの。 そうじゃないと、 夫も気を使っちゃうでしょ? お互いに、相手の機嫌とって縛るよりいいと思って。 夫も、気楽でいいって言ってるよ。 赤木さんも、待たせる立場だったら、そう思わない?」 あ、何だか酔っ払いオヤジの説教みたいだな。 言い訳っぽい? でもね、うちはこうなの。 呆れちゃったかな? 「相手のこと考えてるんですね…。」 赤木さんがしみじみと言った。 あらら、コレは意外。 若者は、男尊女卑じゃないらしい。 素直だな。 年下っぽい。 カワイイ。 相手を考えてるって言うか、 お互いに楽に過ごしてるってだけなんだけどね。 でも、ま、いっかー。 「ダテに歳は取ってないでしょ?」 ちょっと年上気分で笑う。 「でもさ、時々やっぱり淋しくなることあるよ。 けど、赤木さんがメールで仲間になってくれてるじゃない? 待たされ仲間!」 「あんま楽しくない仲間ですね~。」 赤木さんはグイッと杯を空けた。 ジンバック下さい、ってお代わりを頼む。 あらら、悪酔いさせちゃうかも? 大丈夫かな? って、私も酔ってるのに思う。 つい本音が出ちゃう。 赤木さんも? 「でも、いいな~って思いましたよ。 できれば、そんな夫婦になりたい…。 オレ、ちょっと束縛ばっかしてたかも。 まだまだ修行が足りないッスね!」 「大丈夫だよ~。 それに私もまだまだ修行中って感じ。 それに、束縛するのも、好きだからでしょ? そういう情熱がなくなっちゃったんだよね。 お互い、穏やかな気持ちになってっちゃうの。 あ~、若さが減ってく感じ。」 「それは若さなんですか~?」 赤木さんが笑った。 私はうふふって笑って、 その笑顔を見ながらぼんやり思った。 うん。若さかも~。 もっと私を見て~とかって、 最近あんまり思わない~。 外に出ると、雨が降っていた。 「私、折りたたみ持ってるよ。」 私はバッグから傘を出した。 「オレが持ちますよ。」 赤木さんが傘を持ってくれる。 「そう?ありがとう!」 しばらく歩くと、赤木さんがいきなり私の肩を抱いた。 「濡れますよ。」 コラコラ、酔ってるな? いや、慣れているのか? 私は意識しないように笑う。 「彼女にみつかったら大変!言いつけちゃうよ!」 「誰がオレの彼女かわかるんですか?」 赤木さんが笑って言った。 「うん!後ろに張り紙つけとくよ!」 「その貼紙、自分についてないか見た方がいいですよ!」 お互いに酔ってるのか、楽しくてゲラゲラ笑った。 駅に着いたので、赤木さんが肩にまわした手を離して、 傘を渡してくれた。 「傘、ありがとうございます。 俺、これから彼女のとこ行くんで。」 沿線が違うってことらしい。 行く方向を指差した。 「傘は?大丈夫?」 「俺に渡したら、タカダさんが濡れちゃうじゃないですか。 大丈夫ですよ。コンビニで買いますから。 ダンナさんにヨロシク!」 「うん。彼女さんにヨロシクね~!」 私は電車に乗った。 ヒロト意外の男に肩を抱かれるなんて、 何年ぶりだろう? 彼の腕や手のぬくもりが、 肩に残っていてドキドキしてしまう。 う~ん、でもちょっとイイ気分。 私は浮気者なのかもしれない。 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[ある女の話:アヤカ] カテゴリの最新記事
|
|