カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記(「ナイチンゲールの沈黙」と新ドラマ「マイガール」感想☆)
「ある女の話:アヤカ53」 カンダさんから帰りにお茶をしていかないかとメールが来たので、 私とカンダさんは駅前の喫茶店でお茶だけ飲んで帰ることにした。 私も時間を潰したかったのでありがたい。 私が地元で家を建てる話をしていたので、 カンダさんは自分の知識をいろいろアドバイスしてくれた。 そして、アドレスの交換をした。 「もしまたこっちに来ることがあったら言ってね。 遊ぼうよ。 タカちゃんが来るの口実に飲みに出ちゃうから!」 「うん!遊びたいよね! その頃にはお互い子供できてるかな~? カンちゃん、そろそろ考えてるんでしょ?」 「まあ、その時はその時で、 いっしょに連れてきても楽しいじゃない? あ~、それにしてもタカちゃんと、 もうブラジルやレッドのこと話せないかと思うと淋しいよ。」 私は笑ってコーヒーを吹きそうになる。 私たちはかなり仲が良い友達になっていたので、 本当に名残り惜しかった。 実はカンちゃんは赤木くんと同期の色黒のヨシダくんのファンで、 私達の間ではブラジルとあだ名を勝手につけていた。 赤木くんのことは、 いつも赤い缶コーヒーを飲んでるのと名前から、 レッドってあだ名をつけていて、 今日のブラジルのチェックのネクタイはイイ感じ。 レッドはウィンドーペーンのスーツを新調したらしい。と、 二人で若い男は目の保養だよね~って言っていた。 私達はきっとオヤジ化してるよね?って爆笑して、 彼女のお陰で本当に会社生活は楽しかった。 カンちゃんと二人でカラオケに行ってたら、 私をみつけた赤木くんが、 ヨシダくんや他の同期の子といっしょに合流してきたこともある。 あの時は本当に楽しかったね~! って、二人で思い出を語って笑う。 「レッドのことは私が会社にいる限りは、 連絡してあげるからね!」 「あはは~、ありがとうね! じゃあブラジルのことも時々聞かせてね!」 「時々どころか必ず書くから!」 結局その喫茶店で名残り惜しくて夕食も食べた。 彼女も主婦なので、早々のんびりしていられない。 反対方面の彼女と駅で別れて、 来週お昼のメンバーで送別会をする約束をした。 流石にこれからレッドと飲みに行くの、 なんてことは言えない。 でも、バーサンになって、 当時がいい思い出になったらカミングアウトしようかな~なんて思った。 まだまだ先の話? でもきっと同窓会をしようね! 赤木くんと待ち合わせをした店に一人で行くのはドキドキした。 ちょっと場違いだったりしないだろうか? でも、意外とすんなりカウンターに座れて、 カクテルも、この前と同じ物をオーダーできた。 時間は9時。 まだ来そうもないので、本を読む。 サスペンスもので良かったと思った。 結構集中できる。 そうじゃないと余計なことを考えちゃいそうだった。 いつもと同じように、 平常心。 平常心。 でもちょっとウキウキしていた。 私って、ホント赤木ファンなのね。 でも、ダメダメ。 これ以上好きになっちゃいけないよ! 今回は自然なノリで二人になるワケじゃないから、 ちょっと罪悪感がある。 あるけど…でも、 ほんと、ただ飲んで、お別れして、 自分にケジメつけたいだけだから。 私は自分に言い訳をする。 でも、もしかしたら来ないかもしれない…。 あ、でもそしたら電話すればいいのかな。 そこまでして呼び出していいのか? 緊張するな…。 本に目を落としながらぼんやり考えてると、 店のドアが開いた。 「すみません、遅くなっちゃって。」 後ろで息を切らせて赤木くんが声をかけてきて、 俺ジントニック下さい、って、 隣のスツールに座った。 走ってきてくれたのかな? 嬉しいような、申し訳ないような気持ちになった。 「ううん、大丈夫よ。 こっちが呼び出したんだから。 でも、もう来れないかと思っちゃった。」 私が笑って言う。 「すみません。 もう明日から取引先が休みになっちゃうんで。 時間大丈夫ですか?」 「うん、大丈夫よ。 今日は何時でも大丈夫。 夫は今週は泊まりで地元に行ったから。」 私は正直に話した。 でも、何かそれって変な意味で誘ってるみたい? 落ち着くために、カクテルを一口飲んだ。 ちゃんと話さなくちゃ。 「話はそのことなの。 夫が地元の会社に戻れることになったの。 それで、 地元に帰ることになったの。」 「え…?」 赤木くんは驚いた顔をして、 運ばれてきたジン・トニックをゴクリと飲んだ。 そして、驚いた顔のまま私の顔をジッと見た。 いつもの冗談だと疑ってるんだろうか? 「今月いっぱいで会社をやめることになったから、 赤木くんに挨拶したくて。 あ、送別会は、最後の日に開いてくれるって、 今日、報告した時に言われたんだけど、 一応赤木くんだけは、 みんなより前に直接お別れがしたかったの。 だから、今日は奢っちゃうよ!」 私は陽気に言ってみる。 だってもうコレがお礼できる最後。 貴方がいてくれて、 本当に会社が楽しかったよ。 どうもありがとう。 「あ…、いや!いいですよ! オレが奢ります!待たせちゃったし、ぜひ奢らせて下さい!」 赤木くんが我に返った感じで慌てて言う。 「え~、こっちが呼び出したのに~。それで奢らせるのも悪いよ。」 「いや、こっちがお礼したいんで。 でも、この店でいいんですか? こんな時間だし、もう食べたいもの無いですか?」 お礼? 何だろう?仕事手伝ったりしてたから? 赤木くんは慌ててメニューを開いた。 「良かったら、日を改めて今度どこか連れて行きますよ。」 メニューを眺めながら、サラリと言う。 え? 今度? 連れて行く? 本気で言ってるの? またまた、喜ばせるようなこと言って~! 「じゃあ、フレンチのフルコースをお願いね!」 私も適当に返してみた。 最後の社交辞令だとしても、喜ばせ過ぎだよ、赤木くん。 こっちは本気にしちゃうんだから。 「わかりました。ホントにいいですよ。御馳走しますよ。」 「え…」 本気…? 「じゃあね~、高級ホテルのお願いしちゃおうかな。」 「いいですよ。」 「高いよ~。すっごい! ビュッフェじゃなくて、コースがいいな。運んでくるやつ。」 「いいですよ。」 「最上階で、ラウンジでカクテル付きで…」 「いいよ。」 赤木くんが顔を上げて、私の目をジッと見た。 胸がキューンと鳴った。 彼の顔が揺れて見えた。 カクテルのせいだけじゃなくて。 心臓が音を立て始めて、 顔が熱くなったのがわかった。 本気で言ってる。 社交辞令じゃない。 どうする? どうする私? 「ううん、ホントにそんなつもりで言ったんじゃないのよ。 じゃあ、ここのお店のね~、 カクテル飲みたいな~。どれが美味しいの?」 「タカダさんさえ大丈夫なら、 ホントにそういう店に連れて行きますよ。 調べておきますから。 最後なんだし、それくらいさせて下さい。」 いけない、いけない。 厚意を好意と勘違いしそうだ。 人妻を口説いてる? まさかね。 私の都合のいい勘違い。 落ち着きたくてカクテルを飲む。 でもグッと飲んだら悪酔いしそうだ。 「タカダさん、うちの会社には何年いたんですか?」 「え~っと、赤木くんが来る半年くらい前からだから、 …3年?4年になるかな? ずいぶん更新してもらえたよね。 すごくありがたかったな~。」 赤木くんと出会った時の電話の仕事を思い出す。 お互い、その時の話をして笑う。 ああ良かった。 赤木くんが話を逸らしてくれた。 帰り際、席を立って洗面所の鏡を見ると、 酔ってるせいか顔が真っ赤だった。 化粧もハゲてる。 30になるんだもん。 4つ下の彼から見たら、もうすっかりオバサンよね。 変なこと思うのは、やめよう。 戻ると赤木くんが会計を済ませてしまっていた。 こっちから誘ったのに、申し訳ない気持ちになる。 店を出てから、お金を払おうと財布を出した。 「ここで、このお金もらったら、 高級フレンチに行ってもらえなかった時にお礼できないから。」 赤木くんが笑ってそう言うので、 お金を出すのをやめた。 そうよね。 ホントに行くことなんて無いんだろうし、 ここはせっかく送別してくれるって言ってるんだから、 ありがたく奢られてしまおう。 私の心を見透かしたように赤木くんが言った。 「さっきの話、冗談じゃなくて、考えておいて下さい。 最後じゃなきゃ、こんなこと言わないです。 嫌なら、断ってもいいです。 とりあえず、連絡待ってますから。」 赤木くんが、私の目をジッと見て言った。 私も顔を上げて赤木くんの目を見る。 本気? 本気なんだ? だんだん恥ずかしくなってきた。 これ以上見られたら、 私は絶対勘違いをしてしまう。 目を逸らして言った。 「うん…」 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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