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りらっくママの日々

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2009年10月11日
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今日の日記(映画「ハンサム☆スーツ」と新ドラマ「チャレンジド」感想☆)




「ある女の話:アヤカ54」


帰りは赤木くんが送ってくれた。
一人で帰るのが当然だと思ってたから、
何だか学生の頃みたいだ。

家までの道は暗くて静かだから、
遅くなった時は、何となく怖くて足早に歩くけど、
今日は赤木くんがいっしょにいてくれるし、
コレが最初で最後かと思うと、
何となくまだいっしょに話してたくて、
足がのんびりしてしまう。

隣に赤木くんがいてくれることが、
何だか凄く不思議。

店の前で言われたことを、
ずっと考えていた。
何だか緊張していて、
まだ少しドキドキしてる。

本気なのかな?
どこかに食事に連れてってくれるって。

赤木くんが急にクスクス笑い出した。

「どうしたの?」

「いや、こんなの初めてだな~と思って。
タカダさんとは、ずいぶん話した気がしたのに、
家も知らなかったんだな…って。」

赤木くんの頭はもう違うことを考えてるようだった。
やっぱり社交辞令なんだろうな。
ふ~ん。

「知ってたら怖いよね?ストーカー?」

赤木くんが笑うので、つられて笑う。

言われてみれば、ホントだ。
ほぼ毎日顔合わせてメールしてるのに、
住んでるとこさえ知らないんだ。

心の中とか、結構話してるつもりでいたのに。
こんな実質的なことは、何も知らない。

「あ、ここだから。」

ゆっくり歩いていたつもりだったのに、
もう家に着いてしまった。
私は電気の着いてない家の窓を指差した。

ああ、やっぱりヒロトは帰ってないんだな。
淋しいような、
ホッとしたような、
何とも言えない気持ちになった。

「気をつけて過ごして下さいね。
ちゃんと戸締りしなきゃダメですよ。」

赤木くんが保護者みたいなことを言うので、
可笑しくなって笑ってしまった。

あ~、ホントに最後なんだな。
赤木くんは、寮に帰っちゃうんだ。
当たり前のことなんだけど。

まだ別れたくない。
もうこんなこと無いんだろうな。

私は何だか淋しくなって、
手を差し出した。

お別れの握手。

「今までどうもありがとう。」

赤木くんは、ちょっとためらってるみたいだったけど、
同じように手を出してくれて、
私の手を握った。

私より大きくて、温かい手が、
私の手を包んだ。

胸がまたキュンと鳴って、
心臓がドキドキしてる。

こんなこと自分からするなんて。
私としては、かなり大胆かも。
でも、手を出してみて良かった。

「ありがとうございました…。」

赤木くんが、ボソリと呟いた。

ギュッと力を入れられたような気がして、
心臓がはねた。
しばらく手を握っていて、
赤木くんが力を弱めて、ゆっくり離した。

何だか赤木くんの顔を見ると、
自分がとんでもないことを言いそうな気がして、
彼の足元をジッと見る。

  赤木くん、
  あなたのこと、
  ホントはずっと好きでした。

  今日はすごくいい思い出になりました。
  私ずっと忘れないです。

  あなたのこと見てると、
  幸せな気持ちになりました。

言ってみようか、
言わない方がいいのか。

ああ、でも、あと一ヶ月ある。
そんなこと言ったりしたら、
今度会社できっと顔を合わせられない。
恥ずかしくてどう接したらいいか、わからないだろう。

「じゃあ…。
もう遅いし、危ないから、中に入って下さい。」

赤木くんの言葉で我に返る。

「うん。」

あ~、マズイな。
まだ少し酔ってるよ、絶対。
うん、言わなくて正解だよね。

私は階段を少しずつ登って、
赤木くんの方を振り返ると、
赤木くんがこっちを見ていてくれるので、
何となく嬉しくて手を振る。

赤木くんも手を振り返してくれる。
見えなくなるまで、そんなことをした。

部屋に入ってから、慌てて窓から道を見ると、
帰ってく赤木くんの後ろ姿が遠くに見えた。

心臓がまだ少しドキドキしてる。
赤木くんの手のぬくもりが手に残ってる。
その右手を左の手で包んでみた。

どうしよう…。

こんな気持ちになっちゃうなんて思わなかった。
自分から手を差し出したくせに。

彼の胸の中に飛び込みたくなった。
傘を差してくれた時みたいに、
あの腕の中にくるまれたら、
どんな感じなんだろう。

あ、バカだな私。
何考えてるんだろう。

早くヒロト帰ってきて。
そうじゃないと、
私の心がどんどん赤木くんの方に行っちゃいそうで怖い。

赤木くんの携帯番号が、
頭の中に浮かぶ。

だけど、そんなことしちゃいけないって、
かけたりしちゃいけないって、
私は目をつぶって無理やり眠ることにした。

翌日、ヒロトは帰って来れなくて、
私は家の中を一人で片付けてみた。
捨てる物もちょっとずつ分けておく。

ようやく波に乗ってきて、
あと少しってところで電話が鳴った。
私はビクッとした。
ヒロトだった。

「アヤカ?
どう?一人暮らしは?
今何してるの?」

「部屋の中片付けてるよ~。
ヒロトの大事な物でも捨てておいたらビックリするかと思って。」

「嘘!?
あー!そういう冗談やめようよ~。」

「ふふ。
捨てられたくなかったら、早く帰ってきてよ~。
何だか一人だと怖くて。」

ヒロトが軽く笑った声が聞こえた。

「怖いなんて、アヤカがそんなこと言うの珍しいね。
いつもは一人の時間をノビノビ楽しんでるみたいなのに。」

私はちょっとドキリとする。

「だって、夜一人きりなんだよ?
私だって怖いと思うこと位あるよ~。」

ホントに昨日一人は何だか怖かった。
こんなんじゃ、私一人暮らしとかってできないんじゃない?

「うん、じゃあ早く戻るよ。
楽しそうにしてるならギリギリまでこっちにいようかと思ってたけど。」

「うん。
待ってるから…。」

「何心細い声出してるんだよ~。
心配になるでしょ?
わかったよ。
すぐ帰るって。」

電話を切るとホッとした。
ああ良かった。
早く帰ってきて。

そうじゃないと、ダメなの。
赤木くんとのことばかり思い出しちゃって。
私ってダメなヤツなの。

右手を眺める。
まだ手のぬくもりを思い出せる。
心臓がキュンとする。

でも、結局ヒロトが帰ってきたのは、
日曜の夜だった。

あまりにも一人でいた時間が長く感じてしまって参った。
一瞬、
赤木くんに電話をかけそうになって。

でも、ヒロトの顔を見るとホッとした。

「すぐ帰るって言った~。」

「ごめんごめん。
みんなで打ち合わせ後に飲んじゃったらなかなか…。」

はい、これお土産。
ごめんね…
って、私の好きな向こうでしか売ってないチョコ菓子を渡してくれる。
胸がチクリと痛んだ。

ヒロトは夕食を食べながら、
もう今月はずっと仕事の引継ぎと送別会ばっか、
って言い出だした。
今月はご飯作らなくていいよ~って。
あっちとの行き来も多くなるし。

「いつ片付けするの?」

「アヤちゃんに任せていい~?」

「え~。しょうが無いなぁ~。」

「向こうで埋め合わせするから、ね?
何だか最後だと思うとしんみりしちゃってさ。
どの人とも思い出が多いよ。
いろんなこと、いっしょにやってきたから。
こんなに名残り惜しくなるなんて、思わなかった。」

「うん…。
そうだよね。私も同じ。
帰りたいんだけど、
何だか…」

「結構長くいたからね…。」

「うん…。」

私はヒロトがお風呂に入ってる間、
食器を洗いながら思った。

私にも会社での思い出がたくさんあるように、
ヒロトにもたくさん、こっちでの思い出ができたんだ。

私達が存在していないところに来たのに、
最初は自分の場所なんてなかったのに、

お互い知らない世界で、
お互い知らない人たちと、
きっと何かを作ってきた。

私も、ヒロトも、
そして周りの人たちも。

一度離れたら、同じ場所に戻れることなんて、
きっと無い。
私達の実家のように。
日々少しずつ変わっていくんだ。
それはその場にいる人たちには、わからない。
それが時間ってものなのだろう。

そう思うと、
あれで最後のつもりでいたのに、
やっぱり欲が出てしまう。

赤木くんの社交辞令かもしれない言葉を、
現実にしたくなる。

本気にしていい?
今度こそ、それが最後。

少し早く会社に着いたので、
朝一で赤木くんにメールを書いた。


  おはようございます!
  先週はありがとうございました。
  御提案の件なのですが、
  ありがたく、お受けしようかと思います。

  でも、高級じゃなくて大丈夫です。
  オススメがあったらヨロシクお願いします。
  ではでは。


送信。
あ~、送っちゃった。
ホントにあの場のノリの社交辞令だったらどうしよう?
飲んでたんだし…。

まあ、いいか。
その時はその時で。
どうせ最後の日には送別会もあるんだし。

赤木くんとは、この前の飲みだけでも充分。
このまま赤木くんのことは、
心の底に沈めておこう。

いい思い出にきっと、なっていくはずだから。

向こうの方で赤木くんがパソコンを見てるのが見えた。
目がどうも赤木くんを追ってしまうので、困った。












続きはまた明日

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最終更新日  2009年10月11日 18時07分27秒
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