カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記(新ドラマ「東京DOGS」小栗くんサイコー♪)
「ある女の話:アヤカ63」 「え~っとね、珊瑚礁のキレイな海。 そこでスキューバーダイビングしてるの。 魚とかといっしょに泳いで、キレイな感じ。」 スキューバーじゃないかな。 シュノーケルのがいいか。 またやりたいな~。 でも多分早々行けないよね。 ローンもあるし。 現実の自分の生活が浮かんで無理やり消す。 「へぇ~。波は?天気とか、時間とか。」 「波はね、あまり無いかな。 天気はすっごい良い天気。真っ青で昼間。」 「誰か人とかいる?」 「そうね、…好きな人と二人きり。」 正直、思い浮かんだのは、 新婚旅行で行ったオーストラリアの海だった。 だけど、私は海の想像に夢中で、 周りに誰かがいっしょってことは考えてなかった。 でも、誰かいるかと聞かれれば、 絶対一人で海にいないと思った。 じゃあ誰か?と聞かれると、 本来ヒロトが浮かばなければいけないのに、 今の私には”誰か好きな人”っていう、 漠然とした誰かがいるような気がしただけだった。 そんな自分の心にちょっとヒヤリとする。 誰かって、誰なんだろう… 今の私はそんな簡単なことも答えられない、 宙ぶらりんな気持ちなんだ。 ははっと赤木くんが笑った。 「何何~?早く結果教えて!答えは?」 「そこって、実際に行った場所でしょ?」 言われたことにドキリとする。 赤木くんは勘が鋭そうな気がして。 「うん、そうよ。オーストラリア。 すっごいキレイだったの。」 コレで一体何がわかるんだろう? 私の答えに赤木くんはどう思っただろう? 「答えはね、コレはその人の心の海。 波は人生の荒波。 だから、タカダさんは、平穏無事に生きていきたい…ってことかな。 天気が良かったり、海水がキレイなのは、 その人の心の状態が幸せってこと。 朝とか午前中なら尚イイって聞いたかな。 夕暮れや珊瑚礁とかで海に色があるのはロマンチスト。 海との距離は社交性。 中にいる程社交的。」 イイことばかり言ってもらえたのでホッとした。 「へぇ~!そうなんだ? いいじゃーん、私!人は?」 「周りにあるのは、その人の人生で必要と思ってるもの。 タカダさんは、愛する人ってことかな? 魚は小道具とか? 雰囲気を盛り立てるものとか? コレがペットとかだと、自分と対等じゃない、従順なものが好きってことだって、 先生が言ってた。」 ああなるほどね。 結構当たっていた。 私はムードに弱いのかもしれないし、 誰か愛する人がいないとダメかもしれない。 私はあまりにも上手い心理テストの結果につい笑ってしまう。 「先生?何?そういう学校でも言ってたの?」 「心理テスト教えてくれる学校?あったら面白いけどね~。 学校の授業でもう卒業って時に先生が教えてくれたんだよ。 当たってる?」 「結構、当たってる。 でも、社交性はどうかな? 自分からあまり行かないと思うんだけど。」 「そうだね。 でも、飲みに行こうとか言ってくれたじゃん。」 「ああ…そっか。 ねえ、赤木くんは?どんな海?」 飲みに誘ったのは、結構勇気がいったんだけどね。 海に入るほどの社交性が私にはあったんだ? と、意外な自分の潜在意識が気になる。 赤木くんも私の知らない部分を沢山持ってるんじゃない? 彼女といっしょに行った海だったりとか? 「オレ?オレはね、 ここが真夏になった時みたいな、人混みの海。 オレは家族といっしょでその海を眺めてる。 泳ごうかな~って。」 あらら? 思ってたのと違った。 ずいぶん現実的な人なんだ? 「それって、どういう分析されたの?」 「ああ…。 淋しがり屋なんだね!って真っ先に言われたよ。 しょうがないじゃんかなぁ? そういう海しか知らない頃の質問なんだから。 子供の頃、家族旅行した時の海なんだよ。 うちは、夏は必ず家族で近場の海に行くんだ。 オレだって、今とか、海外や沖縄とかのキレイな海を見てからだったら、 タカダさんみたいなこと答えたよ。」 私はつい笑ってしまった。 私の子供の頃と同じだな~って思って。 「波はあるの?」 「あるある。遊べる波がドブンドブン来るんだ。 波に乗れちゃうような。 オレ浮き輪に浮かんで、波に乗るの好きだったから。 でもさ、友達とかは海外やキレイな海見てなくても、そういうこと言うヤツいたよ。 思い出の海じゃないんだよな。 空想の海だから~とか何とか。 恋人といっしょに夕日を眺めている、秋の海とか、 犬と散歩してるとか、絶壁にフンドシで立ってるとか…ね。 オレは想像力が無いんだな、きっと。」 いろんな人がいるんだな~と思って笑った。 状況によって、きっと心の海って変わるんだろうな。 「そんなこと言ったら、私もじゃない? いろんな人がいるんだね~。面白いね! でも、私の子供の頃の思い出の海だったら、赤木くんと同じだよ。 沢山人がいる、夏の海。 ふふ…、でも赤木くん淋しがり屋か。 もしかして当たってるの?」 「かもね~。一番仲イイ奴に、それでからかわれた。 授業で隣にいたんだ。 いまだに、ボクが結婚したら、赤木くん一人で大丈夫? とか言われるよ。」 赤木くんは淋しがり… 私と同じように赤木くんのことを思う友達がいるらしい。 いつも出てくる仲がいい子だ。 ホント親友なのね。 私がいなくても、 赤木くんにはそんな人がいてくれる。 「友達思いな子だね。 で、大丈夫なの?」 「嫌なこと言うね~。 淋しくても生きていけるよ。 二度と会えないワケじゃあるまいし。」 「周りに人がたくさんいるのが、赤木くんには普通ってことかもしれないね。 でも、家族は必要ってことなのかもね。 で、人生遊びたくてウズウズしている…と。」 「何か浮気者みたいじゃん。 心理学者になれるよ。あ、心理テスト学者か。」 二人で笑った。 だってホントに周りに女の子沢山いそうなんだもの。 私がいなくても、 きっと彼は大丈夫。 いろんな人の支えで生きて行ける。 誰にも頼らないのに、 誰かにいて欲しい、 淋しがり屋の赤木くん… 私じゃない誰かがきっと、 赤木くんのこと支えてくれるよね。 波がザンザン打ち寄せて来ると、 すごく淋しい気持ちになった。 空の色が、もう青だけじゃない。 金色になった太陽の周りに、 オレンジになった空を海が映し出している。 もうすぐお別れだよ… って言ってるみたいだ。 やだな… 淋しい。 そんなこと思っていたら、 砂に置いてあった私の手の上に赤木くんの手が触れて、 握られた。 いきなりなことに胸がまたキュンと鳴って、 心臓がドキドキ言い始めた。 胸が詰まって、 何も言葉にできない。 心臓の音と波だけが聴こえる。 オレンジ色の太陽が海に沈んで行くのを、 二人でジッと見ていた。 沈んでしまうと、 赤木くんが私の肩を抱き寄せた。 冷たい風が吹いてきているのに、 赤木くんの腕のぬくもりのせいで、 体が温かい。 感覚が麻痺してる気がした。 いつまでもこうしていられたらいいのに… 「あったかいね、赤木くん。」 「タカダさんは冷たいよ。車に戻ろうか?」 「そうだね、顔が見えなくなりそうだね。」 見上げた赤木くんの顔は、 表情がもう見えなくなりそうだった。 「顔、見せてよ。もっと…」 赤木くんの顔が近づいてきて、 唇が触れた。 気が遠くなる。 温かい赤木くんの体が、 冷たくなった私の体を、 強く抱き締めてくれる。 暗闇は、 私たちのことを隠してくれる? なのに、 抱き締めた彼の肩ごしに、 白い月が見えた。 私達を見ている。 私のしていることを見ている。 お願いだから見逃して。 今だけ。 今だけだから… もっと彼に触れていたい。 もっと。 ずっと…。 自分の気持ちが怖くなる。 月の明かりが届かないように、 赤木くんの腕の中に隠れた。 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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