カテゴリ:ある女の話:アヤカ
今日の日記( 「リアル・クローズ」で仕事について考える☆ )
「ある女の話:アヤカ64」 抱き締められた体を強く抱き締め返す。 お互い抱き締めていた体を離すと、 赤木くんは無言で私の肩を抱いて、 車に連れて行った。 彼の鼓動が伝わってきて、 私の鼓動の音と重なって聴こえる。 車の中に入ると、 赤木くんが私の手を強く握ってきた。 体が自分のものじゃないかのように、 浮き上がってる気がした。 月の明かりでうっすらと赤木くんの表情が見えた。 私をジッと見る目から目が逸らせない。 どうしたらいい? 何か言いたそうにしてるのがわかった。 私も赤木くんの顔を見る。 言葉が… 言葉が出て来ないんだよ。 何を言っても陳腐になっちゃいそうで。 体が、外より温かいはずなのに小刻みに震えた。 「寒いの?」 「ううん…」 「だって…震えてる…」 怖いからだよ…多分。 そう言えなかった。 自分がしてることが怖い。 赤木くんが私を抱き締めて、 優しくキスをした。 触れ合った唇から赤木くんの舌の温かさを感じる。 昨日の夜、 現実なのか夢なのかわからなかった赤木くんとのキス。 やっぱり現実だったんだ…。 赤木くんの体のぬくもりで、 震えが止まる。 体が舌の動きに反応してビクリと揺れた。 「ダメだ。俺、止まんなくなりそう…」 「うん…」 赤木くんが私を強く抱き締めて深くため息をついた。 頭の後ろにまわされた手が髪を撫でる。 「どっか連れて行っていい?」 拒んで無いんだから、 聞かなくてもいいのに… 強引なことして欲しいって思う、 私ってズルいのかな。 「ダメって言ったらやめるの?」 赤木くんはちょっと考えて、 前を向いて言った。 「やめない。」 ギアを入れて、駐車場から車を出すと、 そのまま無言で道路を走らせて、 目についたホテルの駐車場にスイと車を止めた。 赤木くんは車の外に出て、 私が出てくるのを待っていた。 私が出てくると、 ホントにいいのか?って表情が語っていた。 いいのよ。 だってもう、私だって止められないもの。 立ち止まったままの赤木くんの肩にもたれかかると、 ホッとしたように息を吐いて、 赤木くんは私を建物の中に連れて行った。 部屋に入ると、 お互いがお互いを待てないようにキスをした。 赤木くんが私の上着を脱がせる。 私が赤木くんの上着を脱がせる。 首筋に赤木くんの唇が這う。 手が腰をなぞる。 その手が服を脱がせる。 私も彼の服を脱がせる。 胸にキスをする。 目をつぶる彼の顔。 温かい彼の体。 好きよ。 大好き。 赤木くんが私の体を確認するかのように、 体中にキスして行く。 溜息が漏れる。 溶ける。 心臓の音がうるさい。 彼の体が熱い。 女の体とは違う、 筋肉で硬い腕や胸板が、熱があるみたいに熱い。 強く抱き締める。 何度も 何度も… 好きだったの。ずっと… こんなふうに あなたに抱かれることがあるなんて、 思ってもみなかった。 今だけでいいから、 私のこと好きって言って。 もっと、 もっと… 強く抱いて。 あなたが好き。 あなたが好き。 ぼんやりと、赤木くんの腕の中にいた。 体に腕をからませた。 彼の心臓の音が聞こえる。 トクン トクン 波みたいに、規則的に鳴ってる。 このままずっとこうしてたい。 「何してるの?」 「ん…赤木くんの心臓の音が聞こえる…。 赤木くんは何考えてるの?」 「このままオレのとこにタカダさんが来ないかな~って、 思ってた…」 心臓の音に紛れて聞こえた赤木くんの声は、 私の中に届くのに時間がかかった。 本気でそんなこと言ってるの? 今だけの気分じゃなくて? 飲み会で男達が笑いながら言っていた言葉が蘇る。 熱い時はつい甘い言葉を言うんだよね… 本気にするなんて、大人の女だと思ってたのにさ… 今こうして彼の胸の中にいることさえ、 何だか現実感が無い。 コレは私の都合のいい夢なんじゃないだろうか? 女が勘違いしたって仕方無い気がする。 「本気か遊びか見極めたかったら、本気になるといいんだって。」 私の心を見透かしたのか、 赤木くんがそんなことを言う。 「何…それ?」 「遊びの人は、相手が本気になると怖くなって逃げるから、 自分に本気になった人しか残らないんだってさ。」 「誰が言ったの?」 「ねーちゃんの友達。 初めて付き合った相手とうまくいかなくてさ、 たまたま、ねーちゃんが帰るの待ってる時に、 恋愛相談みたいな話の流れになっちゃって。 そしたら、そんなこと教えてくれた。」 私は可笑しくなってつい笑ってしまった。 彼のお姉さんの友達でさえ、 彼を放っておかなかったんだ? 私と同じじゃない? 「何歳の時? その人、赤木くんの初めての人だったりして。」 「いや…、二人目。 初めての女は高校の時で中学の同級生。 お互い初めてだった。 ”痛い!何すんの!ヘタっ!”って、蹴られた。 ショックだったな~。 で、それを慰めてくれたのがその人。 でも、浮かれてたら、ねーちゃんが彼氏いるよって。 家に来ても、避けてたな。」 へぇ~。 この赤木くんでも最初は蹴られちゃうんだ? 女抱くなんて慣れてるって感じなのに。 男も大変ね。 でも、蹴りたくなる女の子の気持ちもわかる。 慰めた年上の女。 私も避けられるのかな…。 そんなことを思った。 「その人、彼氏と別れたかもしれないのに?」 「あの頃はそんなこと考えもしなかったよ。 年下だったしね。 遊びだったんだろうと思った。 オレが落ち込んでるから、同情したんだろうな~ってね。 思い込みで生きてたから、 相手の気持ちを確かめる余裕もなかったよ。」 「苦いね~。」 「うん、苦い。も~、トラウマ。」 赤木くんは笑いながら言う。 今となってはいい思い出ってやつなのかな。 そうね。 私もそう。 「下手…か。すごいこと言うね、その女の子。」 「上手い人は痛くないって友達が言ってた!って、すごい怒ってたよ。 それ位、痛かったのかもしれないけどね。」 「初めてで、しょうがないじゃないねぇ? それとも経験豊富に見えたのかな? その歳で、今くらい上手だったら怖いよね?」 「今、上手いの?ホント?」 赤木くんが、やった! って感じで嬉しそうに私を見るのでギョッとした。 ヤダ~、やめてよ! 私だってそんなの自分の感覚でしかわからないよ。 あんな溶けちゃうくらい気持ち良ければ上手なんじゃない? でも女に慣れてることは確かだと思った。 うん。 「わからないけど、私はすごく良かったです…。 私だって、百戦錬磨って訳じゃないんだから、判別つかないよ。」 って、何真面目に答えてるの、私~。 「ふーん、そうなんだ?」 赤木くんはイジワルそうにニヤリとした。 もしかして、変な誤解してない? 年上だからって、そんなに経験値すごく無いよ。 「何?その言い方?イジワルだね! 赤木くんの方が経験豊富でしょ?」 「そんなことないよ~。」 「ウソだね。 私だって、会社で女の子たちから話聞くことあるんだよ。」 「どうせ、遊んでるとかだろ? 知ってるよ、その位。 しょうがないじゃん、本気になれなかったんだから。」 赤木くんの顔から笑いが消えた。 私はその女の子たちの中の一人になってしまったような気がして、 何だか淋しくなった。 「ひどい言い方。 女は寝ると情が出ちゃうんだよ。 好きになっちゃうの。 泣いてた子だっていたの知ってるんだよ。」 赤木くんは私から目を逸らして、 天井を眺めながら言った。 「じゃあ、貴女はどうなの…?」 結婚してるくせにこんなことをして? 私は泣きたくなった。 私を軽蔑してるような気がして。 夫以外の男を好きになったバカ女。 呆れる。 一番私を呆れてるのは私なんだ。 本気で好きだって言ったら困るくせに。 何でそんな質問をするの…。 「だって、一日だけのつもりなんでしょ?」 続きはまた明日 前の話を読む 目次 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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