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りらっくママの日々

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2009年10月24日
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今日の日記(遠出)




「ある女の話:アヤカ67」


「あれ?どしたの?」

赤木くんが何事も無いように、
いつもの笑顔で私に近寄ってくる。

私は慌てていつものように振舞わないと…と、笑顔を作った。
心の中で、やっぱり喜んでいる自分がいた。
だから笑ってもいいのかちょっと複雑だった。

「まさか来ると思ってなかったよ。
今日も夕飯作らなくていいの。
そしたら、足が自然にココに向いちゃったのよね。」

「俺もそうだよ…。
なんだ。じゃあ、誘えば良かったな。
どうしようか迷ってた。」

「ホントに?」

「うん。」

赤木くんはマスターに向かって、
「ヨシカワさん、俺ジントニ下さい。
あと同じピラフも。焼肉って付けられますか?」
ってオーダーした。

はいよーって、
マスターが返事をして、赤木くんがカウンターの隣に座る。
裏メニューなんだ、って赤木くんが嬉しそうに言う。
私は慌てて会話を探す。

「あ、そうだ!」

私はバッグからテープと本を取り出した。

「はい、これテープ。どうもありがとう!」

「ああ、サンキュ。あれ?コレ何だ?」

「まだ読んでないって言ってたから、本。」

「ああ~、アレかぁ!ありがとう!」

嬉しそうな顔をする。
参ったな。
やっぱり好きなんだと思う。

「でね、もし良かったら、このテープ、ダビングさせてもらっちゃダメ?」

あれだけ恥ずかしがってたから、嫌がるかもしれない。
赤木くんはテープを見て、
思い立ったように、私の方に差し出した。

「あげるよ。」

「え?いいの?大事なものでしょ?」

思いがけないことだったので、驚いた。

「だいじょぶ。コレのマスターをバンドの友達が多分持ってるから。」

大切な物だと思うのに、
すごく嬉しかった。
もっと沢山聴きたいと思ってたから。
劣化しないうちにMDにおとしちゃおう。

赤木くんの気が変わらないうちにサッサとバッグにしまった。

「ありがとう。すっごい嬉しいな~。
有名になってね!大事にしておくから!レアテープになりますよ~に!」

赤木くんは嬉しそうに笑った。

「はは!そうなるといいな~!」

「がんばってね!楽しみにしてるから。」

ホントに楽しみにしてる。
あなたの成功と幸せだけが、
今の私の楽しみなの。

なんて言うと、孫の成長を喜ぶおばあちゃんみたいね。
でも、
もうあなたはそれくらい私にとって遠いのよ。

昨日触れた体は、
今日はもう夢の中の出来事みたいだ。

今まで通りに振舞おうとしてくれる彼の姿に、
涙が出そうになった。

食べ終わると、いっしょの電車に乗って帰る。
店ではお互い饒舌だったのに、
電車の中では言葉に詰まった。

口を開いたら、
このまま帰りたくなくなりそうで怖かった。

私の駅で、今日は赤木くんは降りなかった。

電車のドアの中から手を振る。

「さよなら。また明日。」

「うん。またね。」

赤木くんが優しい笑顔を向けてくれる。
私も笑顔を作る。

帰りの暗い道が、一層暗く感じる。
ここを赤木くんと笑いながら帰った。

足を速める。

鍵を開けて、
暗い部屋の中に入ると、
涙が出てきた。

赤木くん
赤木くん

でも、泣いてちゃいけない。
自分で選んだんだもの。
ちゃんと帰るって。

お湯をためてお風呂に入ってたら、
ヒロトが帰ってきた。

「ごめんね、遅くなった~。」

ヒロトの笑顔を見たら、
胸がチクリと痛くなった。

「ヒロト、ご飯どうした?」

「うん、飲んできたよ。
もう食えないね。」

「洗い物、洗濯機の脇に置いておいてね。
洗っておくから。」

「はいはい。
ありがとね。」

体を拭いて、バスタオルを巻いてお風呂から出ると、
ヒロトに抱きついた。

「なに?どしたの?
そんなに淋しかった?」

「ううん。…うん。」

「どっち?」

ヒロトが抱きしめ返す。

怖いの。
離れてると、
もう帰ってこれないような気がする。

ヒロトは、
私がしたことを知ったら、
きっといなくなってしまう。

どうしたらいいのかわからない。
目の前にヒロトがいれば、
ヒロトを無くしたくないのに、
赤木くんがいれば、赤木くんに吸い寄せられる。

助けて。
助けて。

こんなことが起こるなんて、
思ってもみなかった。

ヒロトは私にキスをしてきた。
帰ってきた挨拶みたいに。

そのうち酔いも手伝ってきたのか、
舌がからんできた。

手を洗った時に磨いたのか、
歯磨きの匂いがする。

赤木くんのキスとは違う、
いつもの慣れたキス。

バスタオルが剥がされると、
何だか恥ずかしくなった。
明かりの中で裸にされると、
体が敏感になっているのがわかる。

私の気持ちに気付いたのか、
ヒロトは私の体をゆっくりじっくり眺めると、
人差し指で私の体をなぞるので、
体がビクリと反応した。
ヒロトは私の様子を満足そうに眺めて、体中にキスしていった。

そんなことをヒロトがしたのは初めてだったので、
会ったことの無い男のように見えた。

怖い。

体がいつもより火照っている気がする。
でも、これでいいんだと思った。

そうじゃないと、心が支配されてしまう。
赤木くんのことばかり考えるようになるのが怖い。

ヒロトを失うのが怖い。

夢で見た、悲しそうな目で去っていく後ろ姿。

現実になったら…?

こんなこと平気でできるなんて、
私はひどい人間だ。

ヒロトに抱かれた後の体が熱い。
どうしよう…
体がおかしい。
気が狂いそうだ…。


なのに、私は会社の帰りに、
吸い寄せられるようにあの店に行ってしまう。

赤木くんが来ても来なくても、
もうずっとあの店に行くつもりでいた。

約束はしてなかったけど、
赤木くんは今日も来た。

昨日と同じで私が頼んでいるものと同じ物を頼んで、
今日はビールを頼んだ。

食べてると、赤木くんの肘に私の肘が当たった。
椅子が今日は近いのか膝も触れていた。

気付いてしまうと、体が熱くなるのがわかった。
私ってこんなイヤらしい人間だった?
赤木くんに抱かれたことが蘇る。

マズイ…。

食べ終わったら昨日と同じように帰った。
抱きつきたくなって、
電車から赤木くんを降ろしたくなって、
それを理性が何とか止める。

こんなの拷問みたいじゃない?

家に帰るとヒロトもすぐに帰ってきた。
今日はお茶漬けが食べたいって言うから、
お冷ごはんを温めた。

帰る日が近づくことにホッとする。

その次の日は、
店に行くのを迷った。
本屋でちょっと本を見て、
それから電車に乗ると、
やっぱり店に寄ってから帰ろうと思った。

店に行くと赤木くんが来ていた。
待ち合わせたみたいに、
よう、って感じで手を上げる。

私は自分の気持ちに呆れてしまって、
つい笑ってしまう。
結局二人で会えると嬉しいんだ。

今日も膝が何となく触れていた。
赤木くんがテーブルにあった私の手を握った。
そのまま下に下ろす。

お互い逆の手でカクテルを無言で飲んでいた。
心臓が飛び跳ねるように鳴っていて、苦しい。

「どっか、行きたい…。
二人になれるとこ。」

耳元で小声で言われると、
いけないって思ってるのに、
うん…って頷いていた。

あれが最後のはずだったのに、
私は…
どうしてこんなことに…。

二人きりになると、
抱きしめられた体が痺れる。

もうダメだ。
何も考えられない。

助けて。
助けて。


そうして、
会社を辞める日まで、そんなことを毎日続けた。
約束なんてしなかった。

まるで魔法にかかったみたいに、
あの店に足が向かってしまう。

あの店に行けば、赤木くんが来るから。

早く、
帰らないと、

帰れなくなる。

私は、

戻れなくなる。

わかっていて止められなかった。

ダンボールが家の中に積み上げられていく。
必要最低限のものを残して。

ヒロトは先に故郷に行くことになった。
こっちの荷物が届くまで、適当にやってるって言ってた。

私はこっちの掃除や、
不動産会社との後処理をしてから行くことにした。
実質、何日かお互い一人暮らし。

それが妙に不安になる。

私は戻れるんだろうか…。





続きはまた明日

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最終更新日  2009年10月25日 12時11分50秒
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