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りらっくママの日々

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2009年10月28日
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今日の日記(「リアル・クローズ」感想と数年後の私☆ )




「ある女の話:アヤカ71」


「ただいま。」

帰ってきた赤木くんに私は抱きつく。

「お帰りなさい!」

「あー、やっぱり家はいいよな。
早く帰りたかったよ。
ねえ、ギター弾いてもいい?」

「うん、いいよ。
沢山弾いて。沢山聴かせて。」

二人だけの部屋で、
思い切り歌う赤木くんの声が聴こえる。

満足そうに歌い終わると赤木くんは嬉しそうに私の肩を抱く。

「あ~、俺、ようやく自由になれたな…。
もうすっげー満足。」

「うん。これからはずっと自由だよ。
沢山歌ってくれる?」

赤木くんが笑って私にキスをする。

「ねえ、貴女は幸せ?」

ヤダなあ、そんな恥ずかしくなるようなこと真剣に聞いてくるんだから。

「うん。幸せよ。
赤木くんは?」

私は照れちゃうけど、嬉しくて聞き返す。

「俺も幸せだよ。
大丈夫。
俺、幸せになるよ。
貴女が幸せだと俺も嬉しいから。」

そう言って、赤木くんが笑顔を見せた。

ギターの音
赤木くんの声
伸びて伸びて広がっていく。

窓から桜の花が見えた。
花びらが美しく散っていった。

あれ?もう春だっけ?

私は心地良さに目を閉じる。

このままずっとこんな時間が続けばいいのに…


目を開けると真っ暗で、
ヒロトの寝息が聞こえた。

泣いてたらしい。
涙で顔が濡れていた。

私はソロリとベッドから抜け出した。
台所で水を飲みながら、
充電している携帯電話をチラリと見る。


  オレは大丈夫です。
  貴女が幸せだと嬉しい。


そんなメールがこの前来たからかな…。
あんな夢を見て泣くなんて。

ため息をついた。

赤木くんからメールが、時々来る。
忘れた頃にポツンって。


  元気ですか?
  オレは元気です。


年賀状と同じ文面。
私も同じ返事を毎回出す。


  ありがとう。
  私も元気です。


なのに、今回は違った。
どうしたのかな?って思った。

誰か好きな人ができたのかもしれない。
だから、もし赤木くんが幸せになれるなら、
良かったと思った。


  私も貴方が幸せだと嬉しいです。


そう書いて送った。
それ以降またメールは無くなった。
不定期なメールなので、
たいして心配はしていなかった。

年賀状に結婚しましたって、いずれ来るかもしれない。
私はそれを見て、
胸を痛めると同時に嬉しく思うかもしれない。
それとも嬉しいなんて思えないか…。

そんなことを思っていた。

私の手では幸せにしてあげられない人。

きっと赤木くんなら誰かが彼を待ってると思っている。

でも…

あの夢は私の願望なんだろうか?

変に胸の音が苦しく鳴っている。
息がうまくできなかった。

ヒロトと穏やかで平穏な毎日を過ごしている。
それがとても幸せなことだと感じる。

でも心のどこかでフッと思い出して、
そのことがとても後ろめたい。

そう思った途端に赤木くんからメールが来る。
大丈夫だって言ってるみたいに。

彼は私の住所を知っていても、
私が行かなければ絶対に来ない。

最後に渡した本の最後に、
私の新しい住所を書いた。
年賀状にはメアドを書いた。

どうしたかったワケじゃなくて、
ただ、繋がりを持っていたかったのかもしれない。
私も彼の電話番号を知ってるのにかけない。

年賀状が来た時には、
ついホッとした。

元気にしているんだ。

新しい所に引越したんだ。

ごめんね…

やっぱりあの時間は、
あの時だけの別世界だったような気がする…。

なのに、
時々心にぽっかりと、説明ができないような、
大きな穴があいてるような気がする。
あいてたのに気付かなかっただけな気がする。

コレは一体何だろう?

わかってるけど、目をつぶる。

もう埋める気は無い。


昨日また、いきなり違う文が来た。


  貴女はそこで幸せでいて
  オレの分まで幸せになっていて欲しい


何だろう?
どういう意味?


  貴方は幸せじゃないの?
  本当に大丈夫なの?


そう書いて送ろうと思った。
でも、そんなこと聞けるんだろうか?
私は…


  私以上に幸せになって下さい。
  それが私の幸せです。


そう書いて送った。
すごく陳腐だけど本心。
キレイゴト?
でも、こんなクサイことしか書けない。

私もそんなメールもらうと嬉しいから。
私も本心を書くの。
カッコつけでも何でもいい。

返事はいつもと同じで来なかった。

でも、
日が経つごとに何だか嫌な予感がした。
どうしてだかわからないけど…。

ヒロトが出かけてから、思いついて
カンちゃんにメールをした。


  元気?
  チビちゃんはどう?
  育児大変かな?


返事はすぐに来なかった。
子供ができない私に気を使ったりしてるかもしれない。
そんなこと思わなくていいのに。

忘れた頃にメールが来た。


  元気よ~。
  育児大変…。
  パワーがいります…。
  でもカワイイわよ!見せたい!


ああ良かった。
カンちゃんはそんな遠慮して気を使ったりしないでいてくれる。
そのことにホッとする。
メールは続いていた。


  実は…
  私もタカちゃんにメールしようか迷っていたことがあります。
  でも、こうしてタカちゃんがメールくれたってことは、
  きっと知らせた方がいいってことだよね。

  赤木くんが入院してます。
  悪性腫瘍ってやつだそうです。
  癌と同じものらしいけど、癌って呼ばないんだって。

  それで、今そのことがわかって、
  会社では少しずつ人がお見舞いに行ってます。
  いつ彼が亡くなってもおかしくない状態みたいです。
  私も知らされて、みんなと会ってきました。
  チューブに繋がれてて、痛々しかったです。

  ごめんね、こんなメールで。
  でも何だかタカちゃんに知らせるべきなのかな…って、
  こんな時にいきなりメールが来るなんて、
  きっと虫の知らせってやつだと思いました。


しばらく画面をじっと眺めた。

コレは何?
頭に入ってこなくて、何度もメールを読み返した。

いや、入ってきてる。
入ってきてるんだけど、
それが現実のことなんだって、
どうしても納得できない。

ううん、納得してるから、
信じたく無いのかもしれない。

カンちゃんのメールには、
赤木くんが入院してる病院のことが書かれていた。
もしも近いうちに来ることがあったら行ってね…と。
また連絡する…と。

コレはきっと現実だ。

それだけはわかる。

でも受け入れたくない。

私の頭の中に、
赤木くんといっしょにいた夢が浮かんだ。


  ねえ、貴女は幸せ?








続きはまた明日

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最終更新日  2009年10月28日 21時12分01秒
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